『イチロー会見全文』(国際情勢研究会・編)
ストイックにあくなき成長を求めていく姿が好きなイチロー選手の記者会見の全文。報道ではカットされている部分にも響く言葉があるかもしれない。報道されている部分もどんな文脈の中で発言されているのだろうと、興味がそそられたので、読んでみました。本書では、①メジャー通算3000本安打達成会見、②世界最多4257安打達成後の会見、③日米通算4000本安打記者会見、④マリナーズ退団/ヤンキース入団会見、⑤マイアミ・マーリンズ入団会見が収録されています。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇メジャー通算3000本安打達成会見より
Q)一般の人間には達成感が、今後の目標に向けての邪魔になることもあります。3000本安打の達成感をどうやって消化して、次の目標に進んでいくつもりですか?
A)えっ!達成感って感じてしまうと前に進めないんですか?そこが僕にはそもそも疑問ですけど。達成感とか満足感っていうのは、僕は味わえば味わうほど前に進めると思っているので・・・。小さなことでも満足感、満足することっていうのはすごく大事なことだと思うんですよね。だから、僕は今日のこの瞬間とても満足ですし、それは味わうとまた次へのやる気、モチベーションが生まれてくると僕はこれまでの経験上信じているので。これからもそうでありたいと思っています。
Q)16年間、これだけの変化があった中で、その中でこれだけは変えなかったという軸となるものは何だったのか?
A)あるときから、先ほども言いましたけど、感情を殺すことですね。このことはずっと続けてきたつもりです。今日、達成の瞬間もすごくうれしかったですけど、途中ヒットをがむしゃらに打とうとすることがいけないことなんじゃないかって僕は混乱した時期があったんですよね。そのことを思うと、今日この瞬間、当たり前のことなんですけど、いい結果を出そうとすることが、みんなも当たり前のように受け入れてくれていることが、こんなことが特別に感じることはおかしいと思うんですけど、僕はそう思いました。
〇世界最多4257安打達成後の会見より
Q)常々、50歳まで現役したいということもおっしゃっていますが、あと1000いくつという安打をアメリカで打つというのは難しくないのですか?
A)僕は子供の頃から人に笑われてきたことを常に達成してきているという自負があります。例えば小学生の頃に毎日野球を練習して、近所の人から「あいつプロ野球選手にでもなるのか」っていつも笑われていました。だけれども、悔しい思いもしましたけれども、でもプロ野球選手になった。何年かやって、日本で首位打者も獲って、アメリカに行く時も「(メジャーデ)首位打者になってみたい」と。その時も笑われました。でもそれも2回達成したりしました。常に人に笑われてきた悔しい歴史が僕の中にはあるので、、これからもそれをクリアしていきたいという思いはもちろんあります。
〇日米通算4000本安打記者会見より
Q)自分にとっての4000本安打はどういうものですか?
A)こういう特別な、区切りのいい瞬間は1000回に1回しかないわけでして、それを4回繰り返せたことはとても満足しています。ただ、4000本目のヒットが重要というわけではなくて、それ以外のヒットがとても重要なのです。1回で2本も3本もヒットを打てないわけです。1+1でずっとやっていかなければならないのです。だから僕にとっては4000本目以外のヒットもとても大切と言えます。
Q)フィールドに立つ前の準備を積み重ねてきた。そいうじぶんをどう思うか?
A)当たり前のこと。そこにフォーカスがいくこと自体、それ(準備をしている人)があまりにもいないということではないですか?
Q)まだ通過点ですよね?
A)これからもいっぱい失敗を重ねて、たまにうまくいっていの繰り返しと思います。打撃とは、野球とは何か、ということを少しでも知る瞬間というのは、うまくいかなかった時間とどう対峙するかだと思う。うまくいかないことと対峙するのはしんどいですけど、それを続けていくということです。
Q)自分に満足しないから、長い間プレーできるのですか?
A)いえいえ。僕はいっぱい満足します。今日も満足。それを重ねないとダメだと思うんです。「満足したら終わり」って、とても弱い人の発想。僕は満足を重ねないと次は生まれないと思います。小さなことでも満足するし、達成感を感じることで次がうまれるんです。意図的に「こんなことで満足しちゃいけない。まだまだだ」なんて言い聞かせている人はしんどいですよ。何を目標にしたらいいか、分からないじゃないですか。うれしかったら喜べばいいんですよ。
~(略)~
〇マイアミ・マーリンズ入団会見より
Q)日本及び世界中のファンへのメッセージを!
A)これは質問ではなく、お願いですね、一番、僕が苦手とすることのひとつです。少し考えます。新しい場所に行って新しいユニフォームを着てプレーすることに決まりましたが、これからも応援よろしくお願いします。とは、僕は絶対に言いません。応援していただけるような選手であるため、自分がやらなければならないことを続けること、ということを約束させていただき、それをメッセージとしてよろしいでしょうか。
自分を律すること、自分をモチベートすること、本質を突き詰めること、感覚を磨き続けること・・。などなど、たくさん学べる要素があり、その含蓄がたまらないって感じです。昔、グリーンスタジアム神戸などでたくさんプレーを見たころがとても懐かしいですが、あれからかなり時間が経って、数々の偉大な記録が残り、今も一線で活躍する姿に尊敬する気持ちは高まるばかりです。