『ブルー・オーシャン戦略実践入門』(安部徹也)
ブルー・オーシャン戦略のフレームワーク本です。フレンチレストランを題材にしたストーリー仕立てで、ブルー・オーシャン戦略の検討のステップに沿って、フレームワークを提示しながら、戦略の着眼点が解説されています。ブルー・オーシャン戦略のイメージは分かっても、実際どうやるの?という疑問が湧いていたので、かみ砕いて具体的に何を検討するのかを例示してもらえることで、ブルー・オーシャン戦略に少し手触り感が出てきました。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇レッド・オーシャンの落とし穴
①直接のライバルばかりを見てビジネスを展開していないか?
⇒同業他社ばかりを意識して、狭い視野でビジネスを展開している。
②業界の小さな戦略グループの中のみで戦っていないか?
⇒業界内で自社のポジションにとらわれ過ぎている。
③ライバル企業と同じ買い手グループにフォーカスしていないか?
⇒ライバル企業と同じ買い手グループをターゲットにして事業展開している。
④製品単体で勝負しようとしていないか?
⇒製品単体でライバル企業との競争を追求していく。
⑤同業他社と同じ製品特性で勝負しようとしていないか?
⇒従来から業界で提供してきた製品の特性と異なる製品を開発することがなかなかできない。
⑥目先の利益にとらわれた短期的なビジネスを展開していないか?
⇒非常に短期的な視点でビジネスを捉え、目先の競争に終始している。
〇ブルー・オーシャン戦略の実行プロセス
①業界の競争構造の分析
戦略キャンバスを活用して、業界の競争構造を分析していく
・戦略キャンバス
横軸:業界の競争要因(品揃え・価格・ブランド・・・)
縦軸:競争要因の重要度(高~低)
⇒自社と他社を折れ線グラフで見える化
②ターゲット顧客の設定とニーズの明確化
ターゲットとして非顧客を3つのグループに分類し、共通するニーズを探していく
・ブルー・オーシャン:脱セグメンテーションでターゲットを絞り込まず、規模のリスクを回避する。
1)現在は顧客だが、機会があれば他業界の製品を利用したいと思っているグループ
2)かつては顧客だったが、今は他業界の製品を利用しているグループ
3)業界からまったく顧客とみなされていないグループ
⇒1)~3)の特徴と非顧客の理由を洗い出す
・レッドオーシャン:セグメンテーションを行って、同じような属性にターゲットを絞り込む。
③プロダクトコンセプトの具体化
”8つのパス”を活用して、これまでに業界では考えられなかったプロダクトコンセプトを考えていく。
1)代替産業に目を向ける
2)業界内の他の戦略グループから学ぶ
3)違う買い手グループにフォーカスする
4)補完材や補完サービスを検討する
5)機能志向と感性志向を切り替える
6)他業界の成功事例と組み合わせる
7)将来を見通す
8)海外の成功事例を日本に持ち込む
⇒8つのパスから見たプロダクトコンセプトを書き出す
④ビジネスモデルの再構築
効用マップを活用して、顧客の購買体験の障害を発見し、スムーズに消費に繋がるビジネスモデルを検討する。
・横軸:顧客経験ステージ(購入⇒納品⇒使用⇒併用⇒保守管理⇒廃棄・・・など)
・縦軸:売上促進の6要素(シンプル、利便性、生産性、リスク、楽しさ、環境)
⇒消費活動の障害を洗い出す⇒顧客経験ステージの障害を取り除く新たなビジネスモデル案をひねり出す。
⑤戦略的な価格設定とコスト戦略
プライス・コリドー・オブ・ザ・マスを活用して、戦略的に価格を決定し、十分に利益の出るコスト戦略を活用する。
・横軸:1)形態も機能も同じ、2)形態は異なるが機能が同じ、3)形態や機能は異なるが目的は同じ
・縦軸:金額
⇒具体的な製品や製品群をマッピングしていく⇒他社が真似できるか否かで価格設定を変えていく。
・コスト面は、1)業務オペレーションの合理化、2)業務提携やアウトソースを検討
⇒そのうえで、価格イノベーションを検討
1)タイムシェアリング(時間に切り分け)
2)スライスシェア(小口化)
3)フリー戦略
⑥ブルー・オーシャン戦略の最終チェック
4つのアクションを活用して、これまでのアイデアをまとめ、戦略キャンバスを描き直す。優れた戦略の条件やBOIインデックスを通してブルー・オーシャン戦略の有効性を最終チェックする。
1)取り除く
これまで業界の中で当たり前のように製品やサービスに対して付加される要素のうち、取り除いても顧客に対する価値に影響のないものはないか?
2)減らす
同様に、思い切って減らしても顧客に対する価値に影響のないものはないか?
3)増やす
業界標準とされている水準から大幅に増やすべき要素は何か?
4)付け加える
業界でこれまで提供されておらず、付け加えることによって飛躍的に顧客にとっての価値が増す要素は何か?
・BOI(ブルー・オーシャン・アイデア・インデックス)
1)効用、2)価格、3)コスト、4)導入の側面からチェック
⑦アクションプランの作成と実行
ブルー・オーシャン戦略をアクションプランに落とし込み、実行する。組織内での抵抗が激しい場合は、フェア・プロセスとティッピング・ポイント・リーダーシップを活用して変革を推進する。
どこに誰も手を付けていない領域を気づいていくのか、その着眼点を発見すること。そして、すぐに真似されて結局、レッドオーシャン化しないための要素が含まれているか。「それが分かれば苦労しませんよ~」と言いたくなるところをぐっとこらえて、考え抜いた人がたどり着ける世界かもしれません。大抵のことは、誰かが考えているはずで、そんなに簡単でないと思いますが、やがてレッドオーシャン化に向かうとしても先行者利益もありますし、考えていてワクワクする世界ですし、そもそも、こういうことを考えることができる時間を確保できるような環境を築いておきたいなと思いました。