Match makers(デヴィッド・S ・エヴァンス、リチャード・シュマレンジー)
『Match makers』(デヴィッド・S ・エヴァンス、リチャード・シュマレンジー)(◯)
マッチメイカーとは、プラットフォームを構築する事業者のこと。プラットフォームを構築する際のポイントのほか、プラットフォーム自体がこれまでの経済学者の常識を覆すビジネスであることを紐解いていく一冊です。マッチメイカーが扱う「原材料」とは相互に結びつくのを助ける様々な顧客グループ。それぞれの顧客グループに売る「製品」に該当するのは、他の顧客グループへのアクセス経路。そこに生じる様々なフリクションを解決していく役割を担うマッチメイカー。興味深い一冊でした。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯マッチメイカー企業
・アリババ、Apple、Facebook、Google、Microsoft、ニューズコープ、楽天、テンセント、VISA、AirBnB、BlaBlaCar、Didi Kuaidi、Flipkart、Lending Club、Pinterest、Spotify、Uberなど
・あるビジネスがマッチメイカーであるか否かを読み解く最善のヒントは、ある重要な顧客群(モールにおける買い物客)に対して課金していないとか、あるいは過度に上等なサービスや製品(安価で厚くピカピカの雑誌)を提供しているか、にある。
◯2サイドプラットフォーム
・異なる種類の顧客群がプラットフォームに参加し、2つのサイドを形成する。プラットフォーム参加者は互いにパートナーを探してもいいが、常にそうしなくても良い。一部の顧客は、マッチングを求めて交流を検討する。そのうちさらに一部がパートナーと出会い、相互に利益が得られる交換を行う。
◯マルチサイドプラットフォーム
・ネットワーク参加者は、いくつかのプラットフォームを同時に併用する。これが古いネットワーク理論が見逃してきた人々の行動。多くのマッチメイカー型ビジネスにおいては、参加者はプラットフォームを容易に変更できる。
・マルチサイドプラットフォームは、それぞれのサイドに、別のサイドの参加者とマッチすることで利益を得る、十分な数の参加者を確保しなければならない。その市場は「分厚く」なければならない。しかし、参加者の数を増やすだけではうまくいかない。別の側の参加者からみて交流したいと思わせる上質な参加者を獲得する必要がある。
・あるサイドの参加者に課す金額がプラットフォーム維持のコストを下回るか、まったく課金しないか、製品を利用することに報酬を与えさえしている(助成サイド)。一方、別のサイドの参加者に対してコストを上回る課金をして、助成サイドの損失を補填する(マネーサイド)。この事実が、伝統的ビジネスとまったく異なる点である。
・どのようなビジネスにデザインするかは複数のグループ間の興味関心のトレードオフを考慮する必要があり、意思決定においては、マッチメイカーとして生き残るために必須な参加者間のバランスを調整する視点が必要。
・フリクションこそが、起業家たちのマルチサイドプラットフォーム起業の狙いを理解する鍵となる。フリクションの大幅な低減は、成功するマルチサイドプラットフォームの必要条件だが、十分条件ではない。
・基本的に、マルチサイドプラットフォームはフリクションを低減することで価値を創造する。取り組む対象とするフリクションが重要であればあるほど、それを低減した時の成功も大きくなり、関係するすべてのグループにとって総合的な価値もまた大きくなる。
◯クリティカルマス到達のための3つの主な戦略
①ジグザグ戦略
クリティカルマスに向かって、両サイドの参加者を同時に増加させる戦略。ある時期は、一方の顧客群に、他の顧客群よりもフォーカスする。
②ツーステップ戦略
最初にあるサイドの顧客群を獲得し、十分な参加者が得られた後に、もう片サイドの参加者を集める。
③コミットメント戦略
プラットフォーム参加のために顧客グループが投資を行う必要があるモデルにとっては必須。あるサイドの参加者は、彼らが求める顧客型のサイドにしっかり確保されていることが明らかにされない限り、投資を行わない。
◯価格設定
・プラットフォームが熟考しなければならないのは、ある顧客グループのメンバーが減ると、もう片方の顧客グループへのアクセスが減り、プラットフォーム起業は縮小することで利益を失う。ある顧客グループからの需要が減れば、もう片方の顧客グループの需要も減り、と連鎖していく。
・2サイドプラットフォームとシングルサイド企業の最も大きな違いは、双方の顧客グループに対する相対的価格の重要性。
・しばしばプラットフォームは、より価格に鈍感な顧客グループに対して多く課金する。他の顧客グループにとって価値がある顧客グループを減少させるリスクが少ないから。
①フリクションとは何か、どのくらい大きいか、解決することで誰が得をするか?
②プラットフォームのデザインはフリクションを減らすか、全サイドの参加者の関心のバランスは良いか?他の新規加入者よりも良いか?
③起爆問題はどのくらい難しいか?起業家はクリティカルマスを達成する手堅い計画を持っているか?
④プラットフォームが起爆点にたどり着き、成長してお金を生み出すような価格か?
⑤マッチメイカーはより広いエコシステムの他の人とどのように協調するか?関連するリスクに直面するか?リスクがあればうまく対処できるか?
⑥起業家はマーケットの反応に応じて素早くデザインや起爆戦略を修正する準備ができているか?
◯プラットフォーム起業家が犯す最大の間違い
・「作れば人が来る 」という間違った考え方を持つこと。
・プラットフォームが、参加者が抱える大きな問題を解決しない限り、そして、起業家が鶏と卵問題を解決しない限り、人はやって来ない。重要なフリクションがなければ、どんなにプラットフォームが技術的に優れていようとも投資する価値はない。プラットフォームのデザインはこういったフリクションを減らし、両サイドの参加者の関心のバランスを取り、他の新規参入者より上手くやれるのだろうか?
事例をベースに内容説明されているので、とてもイメージしやすいと思います。プラットフォームビジネスについて、理解を深めるのにはいい内容だと思いました。
- 作者: デヴィッド・S・エヴァンス,リチャード・シュマレンジー,平野敦士カール
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2018/05/07
- メディア: 単行本
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