『マンガでやさしくわかるU理論』(中土井僚)
一向に進まない『U理論』。第1版で挫折し、第2版でも100ページあたりで止まったまま。「このままではいかん!」と思って、買ったのが、このマンガ版。率直の印象は、「わかりやすくていい!」。ビジネス本をマンガ本で読むなんて・・・とマイナスイメージがありましたが、なんの事はない。自分の勝手な思い込みであり、実際は、よくまとまったイメージ付き要約版という感じです(マンガ部分だけでなく、解説部分も文量があります)。エッセンスを得た上で、本編の『U理論』を読むとかなり効率的かもと好感触でした。『学習する組織』もこの感じで乗り切れそうな予感です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯U理論とは
・オットー・シャーマー博士によって生み出された、「過去の延長線上ではない変容やイノベーションを個人、ペア、チーム、組織、コミュニティ、社会のレベルで起こすための原理と実践の手法を明示した理論」。
・卓越した力の源泉は、ノウハウ・やり方ではなく「内面のあり方」にあるという考え方。
・PDCAが過去からの学習であるのに対し、内側から何かがにじみ出たり、溢れ出たりしようとしていることを「未来が出現しようとしている」瞬間と捉え、出現する未来からの学習。
◯U理論の3つのプロセス
①Uカーブを降りるパート(センシング)
ただひたすら観察する。内面の状態の質(ソーシャル・フィールド)の転換を促す。
②Uの字の底にあたるパート(プレゼンシング)
一歩下がって内省する内なる”知”(ノウイング)が現れるに任せる。
③Uカーブを昇っていくパート(クリエイティング)
素早く即興的に行動する。出現する未来として迎え入れた感覚を頼りにしながら試行錯誤を繰り返し、実戦に繋げる。
◯ソーシャルフィールドの4つのレベル(センシング〜プレゼンシング)
■レベル1:ダウンローディング
・経験によって構築された過去の枠組みを再生する形で、既存の思考・行動のパターンが反応的に繰り返される状態。
・ある人がダウンローディング状態になると、不思議なくらい他の人もダウンローディングになりやすい。
・脱出のカギは「保留」。何も結論(決めつけ)や判断を下さず、思考を吊るして眺める。
■レベル2:シーイング(観る)
・過去の枠組みを覆す目の前の事象、情報、状況に注意が向けられている状態。
・シーイングへの移行は自分の意志によって生じるものではなく、あくまで外部刺激によって起きる。
・目の目の状況にくぎ付けになっていますが、過去の枠組みそのものが変わったわけではない。
■レベル3:センシング(感じ取る)
・相手の意見の背後にある想いにも耳を傾けつつ、自分の内側で起きている心の動きを察知し、さらけ出す姿勢が生まれる。
・実感したい対象を疑似体験すること。「自分の靴を脱いで、相手の靴を履いている状態」。
・「自分に向けられた3本の指の意味を実感する」。あれが問題だ、これが原因だとまるで人差し指で示すかのようにそれらを指摘するとき、中指・薬指・小指は自分の側に向けられている。その意味が実感できないと本当に必要な変化を起こすことはできない。
・「対立ループダイアグラム・ワークシート」
①改善を図りたい問題を抱えている相手を一人選ぶ
②相手の迷惑行為・マイナス行為を記入する
③自分の側の反応的な思考や負の感情を記入する
④反応的な思考や負の感情を抱いてしまうことへの言い訳、自己正当化の声を記入する。
⑤相手の迷惑行為・マイナス行動に対して自分が行なっている是正措置行動・回避・改善行為を記入する。
⑥似たような関係性を想像し、相手と同じ立ち位置に自分を置き換える。
⑦置き換えた立場から反応的な思考や負の感情を記入する。
⑧置き換えた立場から言い訳、自己正当化の声を記入する。
⑨置き換えた立場から是正措置行動、回避、改善行為を記入する。
⑩②と⑨を見比べる
⑪ワークシートを元に相手と対話を行う。
■レベル4プレゼンシング
・過去のパターンへの執着や変化への恐れを手放し、場から出現る「何か」を迎え入れ、身を委ねる。
・自己同一視(何かを自分と同じものとして扱う)から生まれる何かしらに対する執着を手放す。
・「新しいことはまず感情として現れ、次に、どこかに引き寄せられる漠然とした感覚として現れる。それは、なぜというよりは、何という感覚。何かをすることに惹かれる感じがするが、なぜかははっきりとわからない。そのあと、実際に手と心の知性を働かせて、やっと頭はなぜかを理解し始める」(U理論より)
◯ジグソーパズル型問題とルービックキューブ型問題
①ジグソーパズル型問題
あるべき理想の姿を描き、そこに向かって手順を明確にすれば解決できる問題。
②ルービックキューブ型問題
何かの解決策をとればとるほど状況が複雑化していく類の問題。要素が複雑に絡み合っているため、原因を一つに特定できないばかりか、何らの対策を打つと様々な方向に影響をもたらす。
◯認知と行動のループ(ウィリアム・R・ノーナン)
・①自分の認知→②自分の行動(自分の表情は見えていない)→③相手の認知(相手が本当はどう思っているのかはわからない)→④相手の行動→①自分の認知
・自分から見て「相手の認知」と「自分の行動」のすべてを把握することができるないという人間が持つ認知の限界がコミュニケーション上の問題をもたらし、人間関係を悪化させてしまう。
◯U理論とリーダーシップの統合
・U理論では、変革の成否は、何をどうやるのではなく、何者としてそれに立ち向かうのかにかかっているという考えに基づき、その変革者の内面の変容を重視する。
・突き詰めていくと、その人自身がひとりの人間として、自分自身の人生とどう向き合うのか、という本質的な問いへと昇華していく。
過去の枠組みから脱して、そこから自然と湧き出てくる感覚を拾い上げるという感覚は、最近コーチングの中で触れた「パラレルシフト」「ひも理論」との相性がぴったり。イノベーションを起こす人たちの発想もそう。PDCAのサイクルからは生まれない異次元へジャンプするための考え方なのかなと思いました。瞑想やフローともどう繋がっていくのか、興味が湧いてきました。