『キャズムVer.2』(ジェフリー・ムーア)(〇)
名作『キャズム』の初版から20年。事例をすべて刷新し2つの補論を加え、増補改訂されたものです。
キャズムって何?、なぜキャズムが生じるの?、どうすればいいの?という観点から一貫して解説されている、マーケティングの勉強には欠かせない1冊だと思います。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇製品の普及過程における5つの顧客分類
①「イノベーター」(2.5%、別名:テクノロジーマニア)
最大の関心事は、新しいテクノロジー
②「アーリーアドプター」(13.5%、別名:ビジョナリー)
技術志向ではない点でイノベーターとは一線を画する
③「アーリーマジョリティ」(34%、別名:実利主義者)
実用性を重んじる点でアーリーアドブターと一線を画する
④「レイトマジョリティ」(34%、別名:保守派)
製品の購入が決まった後でも自分で使うことに多少の抵抗を感じる
⑤「ラガード」(16%、別名:懐疑派)
新しいハイテク製品に見向きもしない人たち
→①~⑤の段階を進む中で、②→③の間にすんなり移れない「大きな溝」がある。これをキャズムという(BtoBが念頭に置かれています)。
〇なぜキャズムが生じるのか
③アーリーマジョリティは、現行オペレーションの生産性改善の手段として購入しようとする。この際、先行事例が意志決定と手厚いサポートが決め手となるが、変革のための手段として購入する②アーリーアドプターとは共通点が少なく、先行事例にならない。
このため、先行事例がなく、いつまでたっても③アーリーマジョリティは意思決定ができない状況に陥ってしまう。
〇キャズムを乗り越える行動
1.攻略地点
(1)特定のニッチ市場(ターゲット・カスタマー)を攻撃拠点として設定し、持てる勢力を総動員する(一点突破して成功事例を作ってしまう)
(2)ターゲット・カスタマー:販売チャネルとの接点、資金力は?
(3)購入の必然性:現行システムの問題点は?改革を決断するほど甚大か?
(4)ホールプロダクト:3カ月以内にホールプロダクトを提示できるか?
※ホールプロダクト:製品のコア部分だけでなく、顧客の最低限揃っていなければらない期待機能、顧客の期待を最大限満たす拡張機能、機能の理論的上限である理想という機能(追加ハードやソフト・講習サポート・変更管理など)を提携先と組んでパッケージとして製品化すること
(5)競争相手:強固な要塞なら攻め入らないこと。
・【チェック項目】結論として、次の①~⑥が言えるか?
「①」で問題を抱えている
「②」向けの
「③」製品であり、
「④」することができる
そして、「⑤」とは違って、
この製品には、「⑥」が備わっている
(①~⑥に次の点を当てはめる)
①‥現在市場に流通している「代替手段」
②‥橋頭堡となるターゲット・カスタマー
③‥この製品カテゴリー
④‥この製品が解決できること
⑤‥「対抗製品」
⑥‥ホールプロダクトの主だった機能
2.部隊の集結
ホールプロダクトを制するものが戦いを制する。
③アーリーアドプター(実利主義者)は、強力なリーダー候補が出現するまでは、どのベンダーにも支援の手は差し伸べないが、ひとたびそのようなリーダー候補が現れれば積極的な支援を惜しまない。そうすれば、製品の標準化が促進され、現実にホールプロダクトが形成される。
3.戦線の見定め
③アーリーマジョリティは、複数の商品と比較検討する実利主義。競争相手の存在は必須条件。競争相手のテクノロジーを認めながら、ターゲット・セグメントに的を絞って差別化を図る。主は市場重視のマーケティング、従は製品重視のマーケティング
4.作戦実行
・販売チャネル:③アーリーアドプターが安心して付き合える販売チャネルの確保
・価格設定:満足させるべき相手は、顧客ではなく、販売チャネル。
著名なキャズム理論。これまでガッツリ読んだことがなかったのですが、今回読んでみて、事例を追いながらおよその概要をイメージできるようになりました。
顧客が何をベースに意思決定するのかという、顧客視点で考えた際に、矛盾が生じやすいのが、実利主義者であるアーリーアドプター。ここの意思決定を促すために、何ができるかを考えるというのが本書の主張でした。
やはり、良書でした。
キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論
- 作者: ジェフリー・ムーア,川又政治
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2014/10/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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