『人事部は見ている』(楠木新)
今月は人事シリーズということで、第2弾。
大手企業で人事を担当した著者が、人事部の仕事の実態を、一般の社員のイメージとのズレを意識して書いた内容です。
私は人事の仕事が4年目になりますが、本書で書かれている内容は、「まさに、そうそう!」と共感でき、人事の仕事の実情を表していると思います。
「人事って閉ざされていて何をやっているのかよくわからない。けれど、自分の処遇や異動に関係あるので興味ある」という方には、リアル感が伝わると思います。逆に人事部で長く仕事をしている方は、知った内容が多いと思います。
(同じ人事の仕事をする者として、印象に残ったところ‥本書より)
〇人事のように人の気持ちとか、人間全体が丸ごとかかわることは、なかなか理屈や論理だけではとらえきれない。むしろそこからこぼれ落ちてくるところが大事。矛盾を抱える人間の集団を扱うには、正しいことがストレートに役立ちはしないと思ったほうがよい。
〇人事部がすべてを決めているという誤解が生じるのは、逆にいえば、経営方針が従業員にまで行き渡っていないからだと言えるかもしれない。
〇人事制度の企画・立案を担当する人は概念的な思考を好む傾向がある。制度の有効性を理論的に考えていく必要があるから。特に大企業の場合は、人事制度の改正の効果を社員に直接確認できないので、数値や理屈で正当性を根拠づけようとしがちである。
〇面接の学生に自由にかつ自然体で話してもらうためには、採用側も自由でなければならない。「協調性にポイントを置く」などの固定した判断基準を持たない態度で臨む方がスムーズに話が展開する。同時に採用担当者は、自分の心の中に生じる事象・感覚をできる限り的確に把握することが求められる。ここが相性にかかわる部分であって、採用選考のポイントでもある。
〇ある人事部長は、各職場から一番多く、かつ強く要望された人物から何人かの候補をピックアップして、その中から人事部で働く社員を決定するという。個人のつながりや情実によって人事部に転入させるのを防ぐため。
〇担当する人事の規模と人事部の機能との関係に関する課題
①採用・考課・異動・労働組合担当などに分化した大組織の人事部と総務的な仕事まで受け持つ中小企業の人事部とを同一に論じてもいいか
②人事部が相手とするのは、個々の社員なのか、職場を束ねる所属長なのか
③経営層と人事部との関係も規模によってことなるのではないか
④社員についての情報収集や社員への発信のやり方も担当する人員数によって変化するのではないか
〇担当する社員の顔を知り、ある程度の行動予測ができるのは、250~300人。
人に関することを仕事にする人事部。人は一人ひとり異なるけれども企業として一つのルールのもとに運営していく。そこに生じる様々な矛盾やギャップに対して、きめ細かく対処していくのが人事の役割。労を惜しまずに、きちんと手を掛けること。そう、我々人事は、前線で働く社員を支える縁の下の力持ちでなければならないのです。