『WORK RULES!』(ラズロ・ボック)(〇)
Google人事担当上級副社長による人事制度を含む働く環境づくりに関する書籍です。
「職場をどうやって運営しているか」「Googleはどんな仕組みで動いているのか」「Googleの文化とは?」「どうやって仕事をやり遂げるのか」「イノベーションはどこから起こるのか」「社員は本当に自分の時間の20%をやりたいことに使っているのか」・・。尽きない疑問が語られている一冊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇マネジャーから社員へ以下のような権力と権威を委譲する
・誰を雇うか
・誰を解雇するのか
・ある人の業績をどう評価するのか
・ある人に関する昇給・ボーナス・株式付与をどれくらいにするか
・優れた経営手腕への褒賞を誰に与えるか
・誰を昇進させるか
・コードはどの時点でソフトウェア・コードベースに組み込める品質となるか
・製品の最終的設計及びそれを発表する時期
⇒マネジャーはこうした権力を手放し、いくつものグループを通じて結論が調整されるようにしなければならない。
〇週に一度の全社員ミーティングが始まった当時は、「全」社員が集まってもごくわずかしかいなかった。わが社は今や立派な都市ほどの規模になっているというのに、このミーティングは依然として続いている。
〇Googleの文化を定義する3要素
①ミッション:「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」。重要なのは、私たちがこのミッションを決して達成できないこと。整理すべき情報もそれを使えるようにする方法も、尽きることはないから。これが、絶えずイノベーションを起こし、新たな分野に進出するモチベーションとなる。
②透明性
最も重要なのは、会社の誰からの、どんなテーマについての質問にも30分をかけて回答すること。私たちはあらゆるものを共有しているし、グーグラーが情報を外部に漏らすことはないと信じている。
③発言権
わが社の人事慣行の多くは社員の発案によるもの。社員に発言権を与えることには、私たちの価値感を生活の中で具現化する以上の明確な利益がある。
〇逸材と言う神話の教訓
自社の環境で人を確実に成功に導くには、幅広い属性を探すこと。なかでも最も重要なのは、謙虚さと誠実さ。逸材と言う神話の教訓は、「賢い人を雇ってはならない」ではなく、「賢いというだけで雇ってはならない」である。
〇2本のテール
分布の両端に注目。業績が下から5%の社員を定期的に特定している。しかし、スーパースターが揃っているチームのマネジャーにそのうち一人を落伍者として評価しろと言うのは狂気の沙汰。それゆえこれは人間的なプロセスであり、アルゴリズムのプロセスではない。
〇採用
最終的な採用者に関するフィードバックを書くのに10~20時間を費やした。合格した受験者がそれぞれ受ける15~25回の面接にこの時間を掛けると、150~500時間の労働時間があらゆる採用プロセスに投じられる計算になる。優秀な人材を2人雇い損ねたとしても、うんざりするような人物を1人避けることができるなら、わが社にとってはそのほうがよい。
〇報酬
報酬の極端な分布には正当性が必要。報酬制度の基本的な仕組みを社員に説明できず、最高レベルを目指してパフォーマンスを向上させる具体的な方法を教えられなければ、嫉妬と恨みの文化が広がる。同じ業務で報酬に2倍、ときには10倍の差がつく仕組みを維持することは確かに大変。しかし、もっとも優秀で可能性のある人材が会社を去っていくことはもっと衝撃が大きい。最も優秀な社員が平均をはるかに上回る報酬と手にする企業と、誰もが同じ額の報酬を貰える企業と、どちらが本当に公平なのだろうか。
〇ナッジ
特定の選択を選べと命令するのではなく、選択する行為に影響を与える。「である」(is)から「であるべき」(ought)を導き出すことはできない。
〇WORK RULESの10ステップ
①仕事に意味を持たせる
②人を信用する
③自分より優秀な人だけを採用する
④発展的な対話とパフォーマンスのマネジメントを混同しない
⑤「2本のテール」に注目する
⑥カネを使うべき時は惜しみなく使う
⑦報酬は不公平に支払う
⑧ナッジ~きっかけづくり
⑨高まる期待をマネジメントする
⑩楽しもう!(そして、①にかえって繰り返し)
企業価値を高め続ける職場を作るためのアプローチは様々だと思いますが、「こんな会社で働いたらどう感じるんだろう」ととても興味をそそられる内容でした。500ページ超の大作ですが、読んでみる価値ありです。