『なぜ松下は変われたのか』(片山修)
副題に「中村革命のすべて」とあるように、本書は、2000~2006年に松下電器産業の社長を務め、V字回復を成し遂げた中村邦夫元社長の中村革命を描いた一冊です。「企業の理念と社会的価値」Day5の主人公である中村さんにさらに迫るために、復習として読んでみました。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇「中村革命」
松下電器を「重くて遅い」組織から、「軽くて速い」組織へと変えた。強い信念のもとに進められた「経営革命」。
・「重くて遅い」松下からの脱却⇒破壊
①IT革命
②本社改革
③拠点統廃合
④雇用構造改革
⑤R&DD(研究・開発・設計体制)改革
⑥家電流通改革
⑦モノづくり改革
⑧風土改革
・「軽くて速い」松下の実現へ⇒創造
②キャッシュフロー経営
③経営品質革新
④ブランド価値向上
⑤フラット&ウェブ型組織
⑥グローバル戦略
⑦ブラックボックス技術
⑧V商品創造
〇中村さんの自らの性格分析
無口、気弱、内向性、引っ込み思案、取り越し苦労の5重苦。直情径行。
〇名古屋にいたころ小規模販売会社がいっぱいあって、効率が実に悪かった。販売コストがこんなにかかっていいのだろうか‥と疑問に思った。この体質を改めるためには、販売会社を統合する必要があるのではないか。幸之助の築いた販売体制が時流に適合しないのならば、改革の必要があるのではないかと考えた。
〇そりゃ、世の中には、情とか恩義とか・・大事なものはたくさんある。しかし、常に時代の変化に適応する、あるいは先取りをしていかなければならない。さもないと、組織は硬直してしまう。その頃、常に懐に辞表を入れながら改革に取り組んでいたが、まぁそのとき、新しい方向に向かってぶっ壊しをしたわけです。
魂の入らない改革、人の心をつかめない改革は、必ず失敗することに気付かされた。そのことを、腹の底から痛切に感じた。猛省するというのは、こういうことかな・・というほど猛省した。
〇改革者としての原形は48歳にして初めて米国赴任の経験を経て理論武装されていった。ガースナーがIBMを立て直していくプロセスは、すさまじいものがあった。多くの社員に辞めてもらうとともに、外から新たな人材を大量に投入し、ソリューションビジネスに転換していった。本当に鮮やかに改革を成功させた。再生の一つの理想像。翻って日本の企業はどうかと自問せざるを得なかった。そのカギの一つが労使関係。雇用に関して流動性や柔軟性がないことが経営革新の足枷になってるのではないか。
〇日本企業に共通する4つの致命的欠陥
①縦にも横にも結合され過ぎていて、顧客ニーズのへかに敏速に対応しきれない
②中央による管理と官僚主義的な傾向が強すぎて、海外の顧客と効果的な意思疎通ができていない
③企業の意思決定者に海外の顧客との直接的な接触がほとんどない
④顧客の抱えている問題を解決するよりも、自信ある技術を売るのを好む
〇砲丸投げの鉛ボールのように重くて遅い企業はダメ。目指すべきは、軽くて速いサッカーボールのような企業。
〇マーケティング本部長牛丸氏の談
中村さんも人に仕事を任せっぱなしにする人。そのかわり信賞必罰は非常にはっきりしている。成果を出せないと降格人事も辞さない厳しさがあった。
中村さん個人に迫るところは第一章くらいで、第二章以降は、実務担当の方々の取り組まれた内容や人柄中心に展開されています。決して、一人ではな成し遂げられなかった改革。同志がいないと改革は進まないという点でも現場のリアル感があります。あと数冊読んでみて、中村さんの心境に迫りたいと思います。