『生きるために大切なこと』(A・アドラー)
最近流行りのアドラー心理学の祖、アルフレッド・アドラーは1870年オーストリア生まれの精神科医。本書は、原典でアドラーを読むために翻訳されたものです。少し理解が難しいところもあるので、入門書ではありませんが、アドラーを勉強していくうちに、いずれは読みたい一冊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇目的論
自分の人生の目的に従ってすべての行動を選んでいる。目的を知れば、それぞれの行動の裏にある隠された意味が理解できるようになる。
〇間違いは修正できる
神経症の患者を治療するなら、医師が目指すのは、その時点で発生している問題を修正するのではなく、人格形成期までさかのぼり、そこでの決定的な間違いを発見することだ。根本的な問題が発見できれば、適切な治療で修正することができる。「持って生まれたもの」はそれほど大きな意味を持たない。大切なのは、その持って生まれたものを、子供時代にどのように扱うかということだ。
〇共同体感覚
勇気があり、自信があり、世界に自分の居場所がある人だけが、人生のいいこと悪いことの両方を生かすことができる。共同体感覚の次に取り組むべき課題は、個人が発達の中で直面する困難を発見すること。人間というものは面白いことにいつでも自分の態度を、感情を言い訳にして正当化しようとする。
〇幼少期に出来上がる人格の原型
原型は4歳か5歳にはすでに出来上がる。幼少期に間違った扱いを受けた子供は、その後の人生で大きな苦労をすることになる。子供を更生させたいなら、まず幼少期の体験を本人に理解させなければならない。人格の原型に誤りがあるために、人生全般で悪い影響を受けているということを、本人が自覚しなければならない。
〇劣等コンプレックス
人間と社会の関係を理解するカギは、人はいつでも自分が優秀さを発揮できる状況を求めているということ。そのため、大きな劣等感を抱える子供は、自分より強い子供を遠ざけ、自分が上に立てる弱い子たちとばかり遊びたがる。心理学者の仕事は、その人がおどおどした態度を捨てられるように訓練すること。正しい方法は、「勇気づけ」。自分は難しい状況に対処できる、人生の問題を解決できるという自信を持たせることが大切。これが自信を育てる唯一の方法であり、劣等感に対処する唯一の方法である。
〇優越コンプレックス
まず劣等コンプレックスがあり、それを埋め合わせるために優越コンプレックスが生まれる。人は誰でも劣等感を持っているがそれ自体は病気ではない。劣等感が病気になるのは、無力感があまりにも大きく、向上心を殺してしまうときだけ。優越コンプレックスは、劣等コンプレックスを抱えた人にとっては、つらい現実から逃げるための手段になる。「自分は劣っている」という現実を受け入れることができず、「自分は優れている」という幻想に逃げている。
〇ライフスタイル
「ライフスタイル」とは、それぞれの独自性のこと。個人心理学では、そもそも正確にタイプはないと考えている。すべての人が、それぞれ独自のライフスタイルを持っているから。劣等感を完全に取り除くことは不可能であり、そもそも取り除く必要もない。劣等感は人格を築く基盤の役割を果たしてくれるからだ。心理学者の役割は、患者の目的を変えること。
〇夢とその解釈
自分がどんな夢を見ているかを理解して、自分が感情的に酔わされていることを自覚していれば、夢を見ることをやめることができる。夢の正体を知ってしまえば、もう夢を見る意味はなくなる。著者は夢の意味を自覚するのと同時に、実際に夢を見なくなった。
ほかにも、幼少期の記憶からわかること、態度と体の動きからわかることなど、興味深い内容が続きます。やはりご本人の著書を読むと、何を伝えようとしていたのかということが、直接伝わってくるところがいいですね。