『マスタリー』(ロバート・グリーン)(◯)
「仕事と人生を成功に導く不思議な力」というサブタイトル。マスタリーとは「奥義を極めること」。仕事と人生を成功に導く奥義とは?事例を中心に展開されており、そこから導き出される要点がまとめられるという構成。人生でやるべきこと、修業期、師(メンター )、社会的知性、創造的活動期について、まとめられています。どういう考え方、行動で望めば良いか、どんな落とし穴があり、どのようにすれば避けられるのか。日常に取り入れられる要素が多く、学びになる一冊でした。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯衝動に従う(人生でやるべきこと)
・自分の人生でやるべきことを知る3つのステップ
①自分の好み、自分にしかない特性ともう一度つながること。
②今歩んでいる進路、これから歩み出そうとしている進路について考える。
③自分の職業または進路選択を、一本のまっすぐな線ではなく、曲がりくねった旅路と考えること。
・人生でやるべきことを見つける方法
内なる声を聞かずしてそれを選ぶ人間は、自分の状況は耐え難いものだと気づくことになる(ゲーテ)。
・障害の対処法
障害とは、自分に害を及ぼす他人の意見、縄張り争いに巻き込まれること、間違った道を選ぶこと、過去に囚われること、道を見失うこと。
①原点に帰る(幼い頃の気持ちを思い出す)
②自分だけの場所を探す(選択と適応)
③誤った道を避ける(反抗する)
④過去を手放す(順応する)
⑤帰り道を見つける(生きるか死ぬか)
・長所や意欲ではなく、欠点を前にしたとき
自分の得意なちょっとしたことに目を向ける。それによって自信がつくし、別の方向へ進むための基礎ができあがる。このやり方で一歩ずつ進んでいけば、いずれ人生でやるべきことが見つかるだろう。
人生でやるべき仕事は、派手で善と有望な関心の先にあるとは限らない。欠点のようなふりをして顔を出し、一つ二つは必ずあるはずの取り柄に目を向けさせる。それを伸ばしながら、鍛錬の重要性を学び、努力の成果を手にする。
◯理想的な修業期
・修業期の目的は、金で用いでも肩書きでも免状でもなく、自分の精神及び人格を変えること。課題の多い方へ向かえば、逞しく成長でき、自分の仕事や進歩に対して客観的なフィードバックを得られるだろう。容易で快適な修行期にしてはならない。
・修行期の3つのステップと姿勢
①じっくりと観察する(受動的姿勢)
②技術習得(実習期)
③実験(積極的な姿勢)
・理想的な修業期にするための戦略
①金銭よりも学ぶことを重んじる
②視野を広げ続ける
③劣等感を呼び覚ます
④過程を信じる
⑤抵抗と苦痛の方へ動く
⑥失敗を活かす
⑦「仕組み」と「見かけ」とを結びつける
⑧試行錯誤しながら前進する
◯師(メンター)が持つ力
・師との関係を深めるための方法
①自分の欲求と志向に一致する師を選ぶ
②師の鏡の奥をのぞき込む
③師の理論や主義を焼き直す
④相乗効果を生み出す
・メンターなしに何かを始めるのは決して賢明ではない。自分に足りない知識を明確にする段階で、貴重な時間を浪費してしまうから。
◯あるがままに人を見る(社会的知性)
・一般的な人間性を知る(恐ろしい7つの本性)
①嫉妬
②迎合主義
③頑迷
④自分勝手
⑤怠惰
⑥気まぐれ
⑦消極的攻撃性
・社会的知性を獲得する方法
①仕事を介して発信する
②適切なペルソナを作り上げる
③他人の目で自分を変える
④馬鹿げたことに寛大になる
◯多元的精神を目覚めさせる(創造的活動期)
・恐れや不安を感じていると、自分にわかる範囲でやろうとし、グループに溶け込むことを重視し、これまでの手順にしがみついてしまう。自分に鞭打って、これと反対方向に進まなければならない。
・感情の落とし穴
①自己満足
②保守的傾向
③依存
④短期
⑤自尊心肥大
⑥硬直
・創造的活動期間のための戦略
①本物の声
②大きな収穫が得られそうなテーマ
③機械操作能力(職人技)
④自然の力
⑤境界のない領域
⑥高級志向
⑦進化の乗っ取り
⑧多元的思考
⑨錬金術的創造性と無意識
・意義のある芸術作品を作るには、または、発見や発明をするには、厳しい訓練と自制心と安定した感情を必要とする。
◯マスタリーに達するための戦略
①環境と繋がる(根本的な力)
②長所を引き出す(最大の集中)
③訓練して自分を変える(指先の感覚)
④細部を自分のものにする(生命の躍動)
⑤視野を広げる(全体的な見方)
⑥他者に従う(内側から見る)
⑦あらゆる形態の知識を統合する(万能人間)
項目をざっと眺めるだけでも、どういう着眼を持てば良いか、何を探究して深掘りすれば良いのかという全体像が見えてきます。本書がおもしろいのは、それぞれにかなり詳しく事例が述べられていること。やはり、400ページ超えの本は、詳しく書かれているので、学びも深まります。