『なぜ、我々はマネジメントの道を進むのか』(田坂広志)(◯)
リーダーとは、「組織を率いる人間」のことではない。「人間成長という山の頂に向かって歩み続ける人物」のこと。「なぜ、我々は、マネジャーという「重荷」を、自ら背負うのか」。本書は、部下や社員の人生を預かるマネジャーが心に留めておく考え方と身につけるべき人間観について、まとめられています。現マネジャーやこれからマネジャーになる方が一度は読んで、心構えをつくるのに役立つ一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯部下や社員の人生を預かる
①部下や社員の「生活」に責任を持つ
②成長に責任を持つ
◯重荷を背負うマネジャーが得るもの
・決断が自分の立場にどう影響するかを考えると、視野が狭くなる。
・しかし、その決断が、部下の人生に影響を与えると思えば、思考が深くなる。
・自分が、部下の人生を背負って決断を下す立場であると思えば、誰よりも深く考える。そして、深く考えることによって、直感力や洞察力も生まれてくる。
◯マネジャーの「心のマネジメント」
・「リズム感」と「バランス感」
・マネジャーとは、「心の力」を磨くことができる、素晴らしい役割。
・相手の心を細やかに感じ取る力、相手の心に細やかに働きかける力。そうした、「心の力」を磨くことのできる、素晴らしい役割である。
◯人間としての成長
・「心の世界」が見えるようになる
・「人間」と書いて「人の間」と読む
1)人と人とが心を互いに理解し合えるようになること
2)人と人とが心を通わせることができるようになること
3)人と人とが心を一つにすることができるようになること
・「人の心がわかる」
1)相手の気持ちがわかる
2)場の空気が読める
3)自分が見えている
◯「未熟」であること
・人の心がわからない
1)相手の気持ちがわからない
2)場の空気が読めない
3)自分が見えていない
◯人間学を書物で学ぶことの過ち
・「知識」を学んで「知恵」を掴んだと思い込む。頭で理解しているだけで、体で掴んでいないから、人間力が伝わってこない。言葉が軽い。それは、「現実との格闘をせずに、素晴らしい境涯に至りたい」という心の弱さがある。
・人間と格闘する。それが唯一の人間学を学ぶ方法。格闘とは、人間の心と正対すること。
・クライアントの心に正対し、心の奥深くで「その人にとっての真実」を聞き届けること。真実には、「客観的な真実」と「主観的な真実」がある。「客観的な真実」とは誰もが認める事実のこと。「主観的な真実」とは、その人にとって世界がどのように見えているかということ。
・我々が犯す過ちは、「客観的な真実」で「主観的な真実」を裁くこと。
◯マネジメントの世界の名言
・「上司、部下を知るに三年かかる。部下、上司を知るに三日で足りる。」
◯反面教師
・「あの人の姿を反面教師として、学ぼう。あの姿が、自分の中にもある。そのことを、あの人は教えてくれたのだ。」。それが「反面教師」という言葉の本当の意味。
・「他の人物の姿は、すべて自分の中にもある」
・「他の人物の素晴らしい姿もまた、自分の中にある」
◯荒砥石
・我々は、人間として、いつ成長したか。我々は、いかなる経験を通じて成長したか。その答えの「逆説」に気づく。それは、決して「相性の良い人」との出会いによってだけではなかった。「相性の悪い人」との出会いもまた、「素晴らしい出会い」出会った。
◯苦労や困難
・仕事や人生における苦労や困難というものの「大切な意味」。
1)苦労や困難があるからこそ、成長できる。
2)苦労や困難があるからこそ、喜びがある。
3)苦労や困難があるからこそ、結びつける。
・その意味を理解しないマネジャーは、知らぬところで奪ってしまう。部下の「成長の機会」を。部下の「働きがい」を。部下同士の「心の結びつき」を。
・人生において、「成功」は約束されていない。しかし、人生において、「成長」は約束されている。
◯成長への意欲
・「引き受け」。全てを自分自身の問題として「引き受ける」こと。そのとき、我々は、一人の人間として、大きく成長できる。
・部下の成長を支えたいと思うならば、まず、マネジャーが成長すること。成長すること。成長し続けること。成長したいと願い続けること。そのことが最も大切なこと。
・部下の成長を支え続けるための条件は、「立派な人物」であることではない。問われているのはただ一つ。「成長への意欲」。
◯リーダー
・日本という国において、この言葉の意味は欧米とは違う。「組織を率いる人間」のことではない。それは、「山を登り続ける人間」のこと。「人間成長という山の頂に向かって登り続ける人物」のこと。
・誰かを指導しようと思うわけでもない。組織を統率しようと思うわけでもない。ただ、一人の人間として、「人間成長」という山の頂に向かって登り続ける。それが本当の「リーダー」の定義。
◯邂逅(人間と巡り合う。深い縁を感じる)
・ただ表面的に明るく楽しく円滑な人間関係を作れば良いわけではない。マネジャーとは、部下の人生を預かる立場。部下の成長に責任を持つ立場。仕事の結果に責任を持つ立場。
・ときに部下に対して、厳しいことを言わなければならない。部下からの苦情や不満に耳を傾けなければならない。何よりも常に部下の心を深く理解しようと努めなければならない。
・そのとき、マネジャーの眼に映る「職場の風景」が変わる。そのとき「邂逅」がうまれる。出会いは、巡り会いになる。
マネジャー職として考えさせられる内容です。目を背けてはいけないところが的確であること、頭でわかるのではなく、現場の体験の積み重ねであること。マネジャーの本気度が問われる一冊でした。
なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか: 人間の出会いが生み出す「最高のアート」
- 作者: 田坂広志
- 出版社/メーカー: PHP研究所
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