『絶対にミスをしない人の脳の習慣』(樺沢紫苑)(◯)
本書は精神科医が「注意力・集中力」の低下に対して脳科学的に切り込んだ一冊。注意力・集中力の低下を防ぐ方法、それらを高めるための方法、注意力・集中力が低下した自分に気づく方法、注意力・集中力をグンと上げた状態で仕事をするための具体的方法など、「注意力・集中力の低下」に対する根本対策についてまとめられています。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯ミスの4大要因
①集中力の低下
・脳内物質の低下で、注意力散漫になる。
②ワーキングメモリの低下
・脳内で、記憶を一時的に保存するスペースが容量不足になる。
③脳疲労
・「うつ病」の一歩手前の状態。ストレス過多な生活を送っている人が陥りやすい。
④脳の老化
・加齢によるもの。脳が冴える生活習慣で何歳からでも「若々しい脳」は作れる。
◯脳の4つのプロセスを変えれば、ミスはなくなる
①入力
・下界からの情報を脳にインプットする。
②出力
・脳内にある情報をアウトプットする。
③思考
・情報をもとに考えをめぐらせる。
④整理
・感情や思考を整える。
◯「入力」:インプットを変えると集中力が最大化する
①ワーキングメモリ(脳の作業領域)を鍛える
・ワーキングメモリのキャパシティは、「3」前後。
・自分が持っているワーキングメモリが100%の力を発揮するためには、必要な睡眠時間(7時間以上)がきちんと取れていることが必須。
・運動は、ワーキングメモリに限らず、注意力・集中力・記憶力・学習機能など、多くの脳の働きを活性化し、認知症を予防する。
・ワーキングメモリと読書は相関関係にあり、読書をして読解力が鍛えられれば、ワーキングメモリの鍛錬にもなる。
・何かを意識的に暗記する。「記憶力」を使うということが、そのままワーキングメモリのトレーニングになる。
・料理は簡単そうで複雑な段取り作業だから、料理自体が脳のトレーニングになる。
・マインドフルネスは、ストレスホルモンを抑制する効果や、前頭葉を活性化させる効果、脳内物質・セロトニンを活性化させる効果なども報告されている。
・暗記、暗算、ボードゲームによってもワーキングメモリが鍛えられる。
②一点集中タスク術
・一度に複数のことを処理しようとすると、脳の処理速度が遅くなり、余計に作業に時間がかかるだけでなく、脳の情報処理の許容度を超えた瞬間、ミスが発生する。
・音楽は、学習・記憶・読解などにはマイナス、作業・運動にはプラス。
③記憶しないメモ術
・メモを書くことで集中力が高まるので、「聞き間違え」の可能性が減り、記憶力も高まる。
・過剰なメモは脳を必要以上に酷使するので、脳の疲労が進みミスが生じる。
・PCよりも手書きのメモの方が、脳が活性化し記憶増強効果も高い。
④舌切り雀勉強法
・「聞き漏らさないようすべてをメモしよう」と学びを欲張れば欲張るほど、学びはすくなる。
⑤3ポイント勉強法
・セミナーや講演は「3つだけ気づきを持って帰る」という姿勢で聞くと学びが最大化する。
⑥大人のための「脳活性化勉強法」
・資格勉強は、資格そのものは全く活用できなくても、試験勉強による脳トレ効果によって、脳が劇的に活性化する。
◯「出力」:脳力を引き出せば、仕事のスピードと質が上がる
①時間帯・曜日決め打ち時間術
・失敗が最も多いの時間帯は、14〜16時。
・失敗が最も多い曜日は、月曜日、次いで金曜日。最も少ないのは火曜日。
②ウルトラディアンリズム時間術
・人間の覚醒リズムは、覚醒度の高い状態が約90分続き、その後、覚醒度の低い状態が約20分続く。それが1日で何度も繰り返されるので、休憩を挟むことが大事。
③脳が目覚めるゴールデンタイム時間術
・朝のゴールデンタイムを活用するために、一番良くないのが、テレビ。脳に最大の情報が入り、脳の中が一気に「雑然とした状態」になる。一旦情報をシャットアウトして、集中する。
④ToDoリストのメリット
・集中力が途切れない
・「うっかり忘れてた」がゼロになる
・ワーキングメモリの容量が増える/仕事が効率化する
・確認を忘れない(ToDoを書くこと自体が確認作業)
⑤1つずつクリアする「プチプチ」仕事術
・仕事は緩衝材のプチプチのようなもの。一気に握り潰しても全部は潰れない。順番に一つひとつ潰していくしかない。
◯「思考」:トップギアの脳は、自己洞察力で決まる。
①ミスをしない3つの思考ステップ
1)自己洞察
元気か、疲れているのか?集中力は高いのか、低いのか?コンディションは仕事をするのにベストな状態か?
2)原因究明
・ミスはなぜ起きたのか?原因は何か?
3)対策
・回復するためにできることは何か?起こりそうなミスを防ぐために今何ができるか?
②3分間のポジティブ脳ノート術
・自己洞察力を高めるためには、3分間日記を書く(辛かったこと、楽しかったことを3つ箇所書きする)
・忘れ物をゼロにする紙確認思考
・「5」を超えたらチェックリスト化
③不安を消す「転ばぬ先の杖思考」
・「ミスしたらどうしよう」から「ミスしたらこうしよう」に置き換える。不安は、「扁桃体を興奮」させ、慢性的な扁桃体の興奮は脳を疲労させ、注意力や集中力を低下させる。
④雑念を排除するルーティン化
・ルーティンを行うと、心配事を考えるという2つの作業を同時に行うことができなくなる。一流選手が行うルーティンは、脳科学的に見ても集中力を高めて雑念を排除する効果がある。
◯「整理」:脳の棚卸しでパフォーマンスを上げる
①ぼーっと脳内整理
・電車などで「何もしない時間」を作って頭を整理する。
・ぼーっとしている時間(デフォルトモード・ネットワーク)が稼働する時間が少ないと、前頭前野が司っている、物事を深く考える機能が低下する。
②ストレスの整理
・長期的なストレスにさらされると、4つのミスの原因が連鎖的に引き起こされる。
・長期的にストレスを受け続けると、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールが増加する。
・コルチゾールが増えると、「記憶の仮置き場」として機能している海馬の働きが一気に弱くなり、「聞いたはずのことを忘れてしまう」というような、脳への情報入力ミスが起こりやすくなる。
③寝る前2時間のゴールデンタイム休息法
・やったほうがいいこと:リラックスした気分で過ごす。音楽アロマなど非視覚系娯楽、家族との団欒、ペットと過ごす、体をリラックスさせる軽い運動。
・やってはいけないこと:食事、飲酒、熱い風呂、視覚系娯楽(ゲームなど)、光るものを見る(スマホ、テレビなど)、明るい場所で過ごす、カフェインの摂取、喫煙
④脳のコンディションを上げる7時間睡眠法
・睡眠時間が6時間を切っていたら、ミスが多い原因は、「睡眠不足」と考えられる。睡眠不足は、注意力・集中力低下の最大の原因。
・1週間だけでいいので、睡眠時間を毎日1時間増やす実験をしてみましょう。
ヒューマンエラーは、日常生活においてもゼロにするのは難しいですね。仕事でも同じ。それをどれだけ減らして、究極的にはゼロにできるかということを多方面から考えることができる一冊でした。毎日の生活で実験できる内容なので、その中で効果があったものを取り入れていこうと思います。