『リーダーの使命とは何か』(フランシス・ヘッセルバイン)(◯)
著者は、全米ガールスカウト連盟初の現場出身のCEOを経て、ドラッカー財団の初代プレジデント兼CEOを10年間務め、「米国最高のマネジャー」としてビジネスウィーク誌を飾った方。本書は、著者の経験に基づくリーダーの要諦についてまとめられています。随所にドラッカーの言葉の引用もあり、説得力の高い一冊でした。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯(「どうやるべきか」ではなく)「どうあるべきか」のリーダー
・組織の最も大切な財産が人間だと理解している。そして、言葉や行動で、あるいは人と人の関係によって、そのことを示そうとする。
・個人と組織の両方を重んじる。双方の一体感がある、魅力的な組織ビジョンを提示する。
・顧客の声に耳を傾けること、そして顧客にとっての価値が何かを知ろうとすることが、今後ますます重要になることを理解している。
・ありとあらゆるやり取りの中で、メンバーの価値と尊厳を態度で示す。
・官民を問わず、組織のメンバーの一人一人の人生がかけがえのないものであること、ミッションを推進する人材が育てられる職場は計り知れない価値を持つこと、組織の成功には健全なコミュニティが必要であることを承知している。
・リーダーに求められる資質自体は、いつの時代も北極星のように一定不変である。その資質は、その人の人間性、秘められた力、「どうあるべきか」の哲学のうちに表現される。
◯4つのカゴを持ち歩く
変化はチャンス。いつもこのカゴを持ち、新しいアイデア、将来を暗示する兆し、これまでとは違うパートナー、これまでとは違う活動などでいっぱいになるのを待っている。
②融合
融合的で団結力と活気に溢れる組織を作るには、誰よりも大きなカゴが必要。コミュニティを構成している全ての人を包み込む。一握りのお気に入りや、身なりや考え方が似た人たちだけを容認したりはしない。
③機会
「扉を開く者であれ」。自分だけでなく、みんなのために機会を。
④価値観
常に自分が試される。このカゴに何を入れ、何を取り出すかは十分な注意が必要。「私は何者か」「なぜそれをするのか」「何によってやる気を出し、導かれ、動かされ、奮い立たされるのか」。「どうやるべきか」ではなく「どうあるべきか」か。業績や成果を決めるのは、リーダーの人間性だということを思い出させるカゴ。
◯計画的廃棄
・リーダーは常にミッションに専念し続けなくてはならないが、そうあるためには、ミッションの役に立たなくなったものは随時、棄てなければならない。
・カゴの大きさはリーダーの姿勢によって変わってくる。「計画的廃棄」を実践していけばカゴの中身は常に適切で、有望で、真摯なものであり続けるはず。
・「船の行き先を決めるのは、風向きではない。帆の張り方である」。リーダーは、大きな難題や大きなチャンス、そして大きな曖昧さに取り囲まれながらも、何を、どのように持ち運び、誰とともに歩いて行くかを選ばなくてはならない。
・明日へと向かうこの道のりには、ちっぽけなビジョンや目標、ちっぽけな期待や影響、ちっぽけなカゴは必要ない。私たちがカゴに入れて持ち帰るのは、人々の人生を変えるようなもの。コミュニティを築き上げるようなもの、組織と社会を作り変えるようなもの、そして私たち自身が作り変えられるようなもの。大きなカゴを持ち歩くとは、リーダーとして生きることの比喩である。よりよく生きる秘訣といってもいい。
◯リーダーに女性も男性もない
職務にひたすら邁進すれば、私たちは性別にかかわらず、機械の均等を阻む古いルールや習慣、言葉といった壁を乗り越えられる。女性をことさらジェンダーというカテゴリーで括ることも、壁のひとつ。例えば、女性自身が自分を「女性副社長」といったくくりで見ている限り、真の経営責任者とは言いがたい。
◯礼儀正しさの効用
・「良いマナーは組織の潤滑油だ」(ドラッカー)
・マナーとは、「社会的行動のルール」に関わるものであり、礼儀正しさとは、「周囲の人たちへの敬意」にかかわるもの。
◯リーダーに立ちはだかる2つの壁
①自分で作り出す壁
②組織が作り出す壁
◯賞賛されるリーダー交代の方法
・永続的な効果を生むには、終わりこそ始まりであることを忘れてはいけない。任務の終わりにも、始と同じだけの念入りな計画が必要。
・有能なリーダーは、最初にやってきたときと同じくらいポジティブかつスマートに去っていけるよう計画を立てるもの。
・交代までの4ステップ
①ビジョンを定める
②人材を探す体制を作る
③権限を委譲する
④人事を実行する
◯才能より勤勉さを尊ぶ
・イノベーションは個人的にも組織的にも、どんな貢献ができるのかを明確に示すような勤勉なリーダーから生まれるもの。
・有能なリーダーであるために
①自分が人より能力を発揮できることに力を注がなくてはならない
②機能しなくなったものを棄てつつ、ミッションをさらに推し進める方針やプログラムや慣行は続行しなくてはならない。「計画的廃棄」はマネジメントにおける究極の原理原則。
③組織の壁を越え、組織に注ぐのに劣らぬエネルギーと献身をもって、壁の外にコミュニティを築いていく必要もある。
◯理想の組織に変わるための8つのポイント
①周囲に目を配る
②ミッションを再確認する
・「我々のミッションは何か」「我々の顧客は誰か」「我々の客は何に価値を置くのか」(以上、ドラッカー)
③階層を禁じる
④「天の声」に疑問を持つ
⑤言葉の力を駆使する
⑥リーダーシップを分散させる
⑦「後ろから押す」ではなく「真正面から導く」
⑧業績を評価する
◯「家」をきれいに保つ
過去の実績を調べ、組織の資産を評価し、機能しなくなったものを廃棄するのはリーダーの仕事。古い家からクモの巣を払う、それこそが「計画的廃棄」の眼目。
①ミッションを見直すこと
②リーダーの育成計画を立てる
③自分自身という「家」を綺麗にすること
◯今後必要とされるリーダー像を定める5つの質問
①「我々は今後、新たに何を求められるようになるか?」
②「顧客の側にどのような変化があるか?」
③「誰が我々の顧客になるのか?」
④「決定的な違いを生み出すためには何ができるか?それ以外にも将来の変化に備えてやらなくてはならないことは何か?」
⑤「我々の組織の未来ビジョンに最も合致する新たなリーダーの資質は何か?」
まさに、「どうやるべきか」より「どうあるべきか」、自分自身が試されている感覚。自問自答も多いし、思考を動かし始めるきっかけを求めたり、冷静に保つための手法を取り入れたりもする。感情も思考もコントロールしながら、視点も未来や過去、自分やメンバー、会社全体・業界、自由自在に行ったり来たりするような、そんな頭の中。リーダーという言葉を考えるときに、一旦、考えはぐわーっと広がるけれど、収束すれば、「行動し続けられる思いや感情」「目指す方向」「人との関わり方」。そして、それを支えるベースとなる「人間性や能力」。リーダー像の学びはワクワクしてなりません。
- 作者: フランシス・ヘッセルバイン,Frances Hesselbein,ジム・コリンズ(序文),Jim Collins,谷川漣
- 出版社/メーカー: 海と月社
- 発売日: 2012/09/26
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