MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

「売る」から「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講座(水野学)

『「売る」から「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講座』(水野学)(◯)

 くまモンのデザインで知られる著者ですが、東京ミッドタウンのショップ(中川政七商店など)や大手企業のデザインなど、各方面でご活躍されています。本書は、そんな著者が、慶應義塾大学の特別招聘講師として講義された「ブランディングデザイン講座」の内容をまとめたものです。受講者である大学生にわかりやすく説明されていますので、デザインに詳しくない方でも勘所がスッと理解できる読みやすい一冊でした。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

ブランディングデザインの役割

・デザインの力を使ってブランドの力を引き出し、商品を「売る」のではなく「売れる」ように仕向けること。

 

◯「売れる」を作る3つの方法

①「発明する」

 まったくゼロから新しいものを作る必要はない。何かと何かを足したものでもいいし、掛け合わせたものでもいい。つまり、すでにあるものの組み合わせで新しいものを作ればいい。

②「ブームをつくる」

 世の中で話題になるように仕向けてブームを起こす。広告キャンペーン。

③「ブランドをつくる」

 ブランドとは、そのものが持つ個性や特徴、持ち味を表現しているもの。これらをひっくるめて、「ブランドとは”らしさ”である」と考えている。もう少し噛み砕くと、「ブランドとは、見え方のコントロールである」。要するに、世の中から見えるあらゆるものを、その企業にとって理想的な状態になるようにコントロールする。それが「ブランドをつくる」ということ。

 

◯デザインの使い方を間違えるとき

・だいたい、「機能デザイン」と「装飾デザイン」の2つを混同していることが多い。チラシにも、伝えたいことを伝わりやすくする「機能デザイン」と、魅力的に見せる「装飾デザイン」の両方がある。その2つはきちんと分けて考えないと、とても美しいのだけれど伝えたいことが伝わらないものになったり、伝えたいことはわかるのだけれど魅力がないものになったりして、チラシとして”機能”するものになりづいらい。

①「伝えるべきことは何か」

②「それがよく伝わるデザインはなんだろう」

③「それができてから、魅力的に見える装飾の部分を考えていく」

 

◯「コントロールできる人」が求められている

・今という時代にモノが「売れる」ようにするには、「見え方のコントロール」が必要。デザインを含めてクリエイティブのよしあしを判断できる人、今のビジネスの世界では、そういう人材がすごく求められている。

 

◯センスを磨く

・「センス」と「段取り」は学校で教えてくれない。

①「王道・定番を知る」

⇨基準が見えてくる。ポジション付けができる。「ザ・◯◯」というとき、「王道」とか「定番」を意味する。

②「流行を見つける」

③「共通点を見つける」

⇨「人がたくさん入っている店舗の共通点」

1)床の色は暗め

2)通路がやや狭め

3)商品がごちゃごちゃと置いてある

4)天井が低め、もしくは入口の上側が高すぎない

・気をつけるのは、できるだけ客観的でいること

・センスが知識の集積をもとにしている以上、説明できないデザインはない。きちんと課題を解決できるクリエイティブなら、どんなものでも説明できるはず。

 

◯「コンセプト」

・コンセプトという言葉は、制作理由とか、いろんなん使われ方をするけれど、「ものをつくるための地図」だと考えている。

・この”地図”はできるだけシンプルなほうがいい。どれだけシンプルで的確な”地図”を共有できるかが、仕事を進めていくうえでの肝になる。

 

◯「世の中をあっと驚かせてはいけない」

・差別化やアイデアは、勘違いされがち。

 

◯ブランド力がある企業の共通点

①「トップのクリエイティブ感覚が優れている」

②「経営者の”右脳”としてクリエイティブディレクターを招き、経営判断を行っている」

③「経営者の直下に”クリエイティブ特区”があること」

 

◯「らしさ」は「なか」にある

・「らしさ」は自分の中にある。流行のなにかや、借りてきた美しさを使って、お化粧してつくるものじゃない。

・企業や商品にとっても同じ。企業や商品の「らしさ」は、その企業や商品自身の中にある。

ブランディングに取り組むときも「らしさ」つまりは企業ならではの個性や魅力、持ち味を見つけるためにその企業、業界、市場の状況などについて徹底的に調べることから始める。

 

◯「完成度」に時間をかける

・「らしさ」を考える時のポイントはいくつかあるが、その一つは、あまり考えすぎないこと。いろいろ調べたうえで、「らしさ」を探る時は時間を決めてやる、ということ。例えば30分で30個でも、100個でもなんでもいいのですが、必ず時間と目安を決めてイメージを探る。

・一番大事なのは、みんなが聞いてわかるものを見つけること。もっといえば、人の意識の割と浅いところにあって、なんとなくは知っているけど、まだフォーカスされていないようなものを見つけること。

・一番時間を変えるべきは、アウトプットの完成度を上げるプロセス。

 

◯企画書

・手紙に似ているところがある。手紙はだいたい「お元気ですか?」と相手を気遣うところから始めて、最後まで相手のことを思い浮かべながら書く。企画書もそこは同じ。読む相手、伝えたい相手のことを考えながら書く。これは企画書の極意だと思っている。

 

◯本書総括・・大事な3つの言葉

①「センスとは、集積した知識をもとに最適かする能力のことである」

②「世の中をあっと驚かせてはいけない」

③「ブランドは細部に宿る」

 

 「へー、結構意外」。でもしっかり読んでいくと「やっぱりそうかー」。「世の中を会っと言わせてはいけない」。もっと地に足がついた、地道な探求の積み重ねのような感覚かなと思いました。こういう一流の方に本質的なことを言われると腑に落ちるところがあります。本書では、実際の企画のプレゼン資料も公開されていて、リアルが感じ取れます。

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