『リーダーシップ入門』(金井壽宏)(◯)<3回目>
読むたびに理解が深まり、良書だと思えるようになってきたのは、自分の経験値が積み上がってきたから?そんな風に思える内容の濃い一冊です。実務家と学者の両方の観点からリーダーシップにまつわる多くの内容が盛り込まれており、新書サイズですが、読み応えがあります。リーダーシップ関連では、本棚から外せない一冊になっています。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯リーダーシップの持論
・自分の持論が自覚されないと、自分の考えと現実とのすり合わせが十分になされない。そのため、持論がもたらすアクション、そのアクションがもたらす結果との関係も見えてこない。だから、アクションと学習は同時進行的であるべき。
・「リーダーシップのコツは何か?」と聞かれたら、答えようとすることが大切。
・リーダーシップの持論を言語化して、自覚する。言語化したらその通り実践を深める。
◯リーダーシップを実際に身につけたかったら
①自分がリーダーシップを直接に経験すること。
②すごいリーダーだと思える人と一緒に仕事をして、その人の言動を観察する。
③それらの経験と観察からの教訓を言語化し、自分なりの持論を構築すること。
④学者の理論や優れた実践家の持論は鑑賞するように読むのではなく、自分の持論を創出し続け肉付けするために活用すること。
◯リーダーの共通点とは
・「喜んでついてくるフォロワーがいるか」(クーゼス=ボスナーの基準)。
・「そのフォロワーは、受動的でなく、能動的・自覚的に、喜んでついて行くことを選んでいるか」(ハイフェッツの基準)。
・この第一の基準から、①リーダー側の倫理観、②フォロワーの能動性、③リーダーシップの姿の多様性と興味ある3つの論点がリーダーシップを捉える視点として浮かび上がる。
◯生まれ方(選ばれ方)から見た3種類のリーダー
①自然発生的なリーダー
②選挙で選ばれたリーダー
③任命されたリーダー
◯2つの理論
①素朴理論
・必ずしも傑出したリーダーシップを取れていなくても持っている。
・「自分なりのリーダーシップ経験を語り合って、リーダーシップについて自分なりに人に教えようと思ったら教えられることを語ってください」
②持論
・実際に優れたリーダーシップの実績を示してきた達人が語るリーダーシップ。
◯ペプシコのR.エンリコのリーダーシップ持論
①異なる観点から思考せよ(think in different terms)
②(リーダーとして明瞭な)視点を持て(develop a point of view)
③その視点(やアイデア)を現場に持って行ってそこで試せ(take it on the road)
④全体を(ビジョンに)まとめ上げろ(put it all together)
⑤実際にものにする(make it happen)
◯J.ウェルチのリーダーシップ持論
①自らが活力に満ち溢れていること(Energy)
②目標に向かう周りの人々を元気づけること(Energize)
③タフな問題に対しても決断ができること(Edge)
④言ったことをとことんまで実行していくこと(Execute)
◯小倉昌男のリーダーシップ持論
①論理的思考
②時代の風を読む
③戦略的思考
④攻めの経営
⑤行政に頼らぬ自立の精神
⑥政治に頼るな、自助努力あるのみ
⑦マスコミとの良い関係
⑧明るい性格
⑨身銭を切ること
⑩高い倫理観
◯第五レベルのリーダー(『ビジョナリーカンパニー2』(J.コリンズ))
①第一レベル:よくできる担当者
才能、知識、スキル、勤勉さによって生産的な貢献をする。
②第二レベル:チームの力になるメンバー
集団の目標達成のために自分のりょくを発揮し、集団の中で他の人たちとうまく協力する。
③第三レベル:有能なマネジャー
人と資源を組織化し、決められた目標を効果的かつ効率的に追求する。
④第四レベル:効果的なリーダー
明確で説得力のあるビジョンへの支援とビジョンの実現に向けた努力(コミットメント)を生み出し、これまでより高い業績の基準を達成するよう組織に刺激を与える。
⑤第五レベル:第五レベルの経営幹部
個人としての謙虚と職業人としての意思の強さと言う矛盾した(パラドキシカルな)性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる。
◯リーダーシップ理論の観点
PM理論を中心とする Hi-Hiパラダイムによれば、次の2つの非常に単純な結論が、非常にロバスト(頑強)に得られた。
①リーダーシップ行動は、課題(仕事)に直結した行動と、人間としての部下への思いやりや集団としてもまとまりの維持に直結した行動によって記述される。
②課題軸、人間軸の二つの軸でともに高いスコアを示すリーダーシップ行動のスタイルが、最も普遍的に有効なスタイル。
◯TPOV(Teachable Point of View)
・「我々がリーダーシップについて語ることになったら、その時に語ること」これが、TPOV。
・持論づくりは、たわいもないコツの言語化から始めよう。人は人とともに生きているので、人に動いてもらう方法について、素人なりの素朴理論を持っているもの。
・「先輩リーダーシップのコツはなんですか?」と聞かれたら、一言や二言は言える原理・原則があるだろう。教えようと思ったら教えられることがあるはず。TPOVはそこから生まれる。
ついてきてくれるフォローワーがいれば、誰でもリーダーシップを発揮している。リーダーシップは、一流経営者だけのものではなく、管理職のものでもなく、誰もがリーダーシップを発揮できるということ。実践と理論と現実と理想。人にまつわることは、多種多様な課題があります。「リーダーシップ」はビッグワードでもあるので、「具体的には?」を突き詰めて行きたいですね。その上で納得感を増すために理論を学びに行くというのが私のスタイルです。