『逆境を生き抜くリーダーシップ』(ケン・アイバーソン)(◯)
良書です。本書は1998年に発行された『真実が人を動かす』を新たに翻訳したもので、瀕死のニューコアを全米3位の鉄鋼メーカーに変貌させた伝説の経営者による一冊です。帯の、ユニクロの柳井会長兼社長の言葉、「この本を買ってください。事業経営の真実を私が保証します」にあるように、事業経営の実態を経営者本人が記した具体的な内容になっています。ボリュームも約200ページと読みやすいと思います。
(印象に残ったところ・・・本書より)
◯序文(ウォレン・ベニス)
・「今日のリーダーは、会社に関係するあらゆる人の考える考えを感じ取り、その一人ひとりが会社の目標の達成に貢献できるということを理解しなければならない」
・「良い指導者(リーダー)は、良い追随者(フォロワー)でもあらねばならない。リーダーとフォロワーにはいくつかの共通する特徴がある。
①耳を傾けること
②力をあわせること
③仲間とともに競争力を高める課題を達成すること
◯投機家はいらない
・長期的な展望に沿った経営は、我々にすれば常識だ。我々もときには「今すぐ収益を最大にするために手を尽くせ!」とわめく連中を相手にしなくてはならない。
・結局のところ、どちらかを選ばなくてはならないのだから。「投資家」を取るか「投機家」を取るか。両者の違いは時間だ。企業の成功と成長は、3年から5年をかけて株価に反映されるそうして投資家に報いるわけだ。
・私は経営陣によくこう釘を刺す。「我々はひもにつながれてた犬じゃない。株価の操作とか四半期ごとの配当を最大にするといった芸はやらない。我々は鷹だ。空高く舞い上がる。同じように高く舞い上がりたい投資家が、我々に投資する。投機家はお呼びじゃない」
◯社員とつながる4つの原則
①経営陣は、従業員が生産性に応じた報酬を得られるように会社を経営する義務がある。
②従業員は、職務をきちんと果たしていれば、明日も仕事があると安心できなくてはならない。
③従業員は、公平に扱われる権利があり、また、当然そのように扱われると確信できなければならない。
④従業員には、不公平な扱いを受けていると思った場合に、申し立てる手段がなければならない。
◯意思決定は現場に任せる
・事業所長たちに対し、彼らの管理下にある資産の25%以上の利益を上げるように求めてきた。
・この他に事業所長に求めるのは2つだけ。
①会社の規範に従うこと
②事業所長たち自身がまとめた2〜3の総合的な方針に準拠すること。
◯従業員とつながる方法(対話)
・意思決定の自立性を望む管理職は、自由についてまわる責任を完全には理解していないことが多い。彼らはまず、事業の浮き沈みは自身の力量にかかっていることを認める必要がある。
・社員とコミュニケーションを取る能力がいかに大切かを忘れてはいけない。
◯従業員とつながる方法(意識調査)
・匿名で行い、社員が自分のものの見方についてじっくり考えるきっかけになること。調査結果を真剣に受け止めれば、調査をする側にとっても、しっかりと注意を払うきっかけになる。
・調査結果をある種の手っ取り早い経営チェックリストにしてはならない。定期的に調査を実施し、結果を吟味して従業員と共有し、じっくり話し合ううち、それは自ずと経営上の意思決定に反映されるだろう。
◯従業員とつながる方法(ミーティング)
・管理職が喋りすぎない
・社員の語る言葉を管理職が真剣に受け止める
・従業員との形式ばらない会話、意識調査の実施、社員ミーティングの開催は、いずれも一緒に働く人たちとつながるためのごく一般的な方法にすぎない。それを価値あるものにしているのは、方法そのものではなく、その方法を生んだ意図である。
・「自立型の経営を望むなら、従業員のとの絆を維持した方がよく、従業員との絆を維持したいなら、誠実かつ持続的に取り組む態度を整えた方がいい」
◯分厚い報告書はいらない
・情報過多は業務に対する過剰な管理につながる。情報が多すぎるのは情報が少なすぎるのと同じで、実際の状況がわからなくなるから。状況がわからなければ、ついつい首を突っ込みたくなる。現場の人間に「自分の直観を信じろ」と本心から告げるのは難しい。
・誰かがやってきて情報過多を取り除いてくれるのを待っていてはいけない。あなたが自分で食い止めるのだ。そこでカギとなるのは、あなたにとって本当に有用な情報の断片を意識することだ。
・主観的な情報と客観的な情報を区別するよう心がけることも大切。情報方の大部分は余計な説明(主観的な情報)という形をとる。数字に語らせるのが私の好みだ。数字以外に知るべきことがあるかどうかは自分で決める。
・原因と結果を示す情報を探すのもいい。自分が管理する業務の状況と事業の成果に、はっきりしたつながりが見えるようにすべきだ。
◯苦情は直接私に
・電話中に私が心がけるのは、社員の話に耳を傾けることであって、問題を解決することではない。事実を把握し、彼らの言い分を話してもらい、どう感じているか、それはなぜなのかをじっくりと聞く。管理職の人間やほとんどの人は完璧な答えをしなくてはならないと考えがちだが、電話の主が本当に求めているのは、ズバリ、聞いてもらうことだ。
・私はいつも電話をかけてきた者に、その問題を上司である監督や部長、事業所長と話し合ったと尋ねる。まだだった場合は、まずそちらの道筋を試すように勧める。一部始終を公正に聞いてもらえるはずだからだ。我が社の管理職は最善を尽くして解決策を見つけようとする。それが彼らの性分だ。それに、自分が従業員の問題に耳を貸さなければ、私が耳を傾けることになるのを知っている。
◯企業の成功は文化で決まる
・文化が本当に根付くには一貫性が求められる。それは形成したい文化を本気で信じることから始まる。我々は「自分がそうしてほしいと思うやり方で相手に接するべきだ」と信じている。それが我が社の礎石だ。単純すぎると思われるだろうが、これでうまくいっている。
・ただし、こうした文化を維持するのが簡単だと考えてはいけない。”われわれ”と”彼ら”を対立的に捉えるという人間の最悪の習性と戦うには、日々の注意が必要だ。
・我が社では基本的に、上層の管理職は自身の管理する職場で日々を過ごすことになっている。それによって職場の気風が決まる。
◯なぜ「職場環境」を重視するのか
・私の経験から言って、改善したい、達成したい、貢献したいという欲求は、万人に共通している。もとから無感動な社員はほとんどいない。ただ、環境によって無感動になるよう条件づけられることはある。
・協調しておきたいのは、ここでいう「環境」とは人々が働く物理的な世界はもちろん、文化的な世界も指すことだ。周囲の考え方、意識、前提なども物理的条件と同じくらい、いや、しばしばそれ以上に重要になる。
・ところがあきれたことに、物理的にしろ文化的にしろ、環境の役割についてじっくり考える経営者は実に少ない。
・経営者は明けても暮れても職場環境を手直しし、条件が整った場合に従業員に何ができるか、何をするようになるかを知るべきだ。
ここで紹介したところで大体半分くらいです。そのくらい現場で実践した結果から語るべきことが多く詰まっています。一読の価値があると思います。
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