『現代の経営(下)』(P.F.ドラッカー)<3回目>
「現代の~」とはいっても出版は1954年。ドラッカー曰く、「私のマネジメントに関するその後の著作のいくつかは、本書を発展させたものである」という、マネジメントの原点となる本書。半世紀以上前の著書だとは思えないほど、今の時代へ山ほどの示唆がある名著です。読むのは、今回で3回目になりますが、毎回、線の数が増えていく、そして、また時間を置いて読みたくなる、まさに殿堂入りの一冊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇第16章 組織の構造を選ぶ
組織構造の問題を論ずるにあたっては、2つの問題を問う必要がある。
・いかなる構造の組織が必要か
①活動分析、②意思決定分析、③関係分析
・いかにして組織をつくるか
〇第17章 組織の構造をつくる
・組織は企業官僚としてではなく、起業家として働く経営管理者の数を最大限多くするものでなければならない。
・組織の構造は、必要とされるマネジメントの階層の数を最小限にし、命令系統を最短にするものでなければならない。
〇第18章 小企業、大企業、成長企業
規模の大小は、マネジメントの組織構造に対しては大きな影響を与えるが、それ以上に規模の変化、すなわち成長は組織構造に対し大きな影響を及ぼす。
①小企業:トップマネジメントは、事業全体のマネジメントと、販売や生産など特定の機能のマネジメントの双方を行うことができる。
②中企業:トップマネジメントの仕事のうち、業務の遂行に関わる仕事には専任の人間を必要とする。
③大企業:トップマネジメントの仕事のいずれか一つは、CEOチームによって遂行することが必要になる。
④巨大企業:トップマネジメントに関わる仕事のうち、目標の設定に関わる仕事と、業務の遂行に関わる仕事の双方をチームによって行うことが必要になる。
〇第19章 IBM物語
・企業が成果をあげられるか否かは、働く人達に成果をあげさせる方法、すなわち仕事のさせ方如何にかかっている。
・「仕事の拡大化方針」は、反熟練労働者に大きな機会を与えた。
〇第20章 人を雇うということ
・「人的資源」の「人的」という言葉を中心に据えるか、「資源」という言葉を中心に据えるか。
・要求が大きければ大きいほど、大きなものを生み出すのが人の特性。人がものを生み出す力は、主としてその要求の水準によって決まる。
〇第21章 人事管理は破綻したか
人事管理論が不毛となっている主たる原因。
①人事管理論は、人は働きたがらないという考えを前提としている。
②人事管理論は、人と仕事のマネジメントを、マネジメントの仕事ではなく専門職の仕事にしている。
③人事管理論は、一般に人事の仕事を消火活動の仕事にしている。
〇第22章 最高の仕事のための人間組織
仕事の組織において、問題は仕事を要素動作に分解することではなく、それらの要素動作を一つの全体に統合することにある。
①仕事はそれぞれひとまとまりの段階として独立させること
②仕事のスピードとリズムは、仕事をしている者自身の働き方に従って決めること
③仕事はある程度の挑戦、すなわち技能や判断を要する要素を含むものにすること
〇第23章 最高の仕事への動機づけ
仕事で責任を持たせる方法。
①正しい配置のための真剣かつ継続的、体系的努力の必要性
②仕事について高い基準を要求すること
③目標に照らして自らの仕事を評価する情報を提供し企業が働く人を巻き込むこと
④働く人はマネジメント的視点を持つときのみ、すなわち企業全体の成功と存続に責任をもく経営管理者のように企業を見るときにのみ、最高の仕事を目指して自らの責任を果たすことができる。
〇第24章 経済的次元の問題
賃金をコストとして殉難性を必要とする企業側と、賃金を所得としてその安定を望む従業員側の対立。従業員の目に企業の目的が利益の追求と映るかぎり、自らの利益と企業の利益の間に対立を確信せざるを得ない。
〇第25章 現場管理者
・現場管理者の仕事は、完全に経営管理者の仕事でなければならない。
・現場管理者たる者は、自らの責任を果たすうえで必要な活動を自ら管理し、それらの活動に必要な部下を持たなければならない。
・現場管理者の権限の縮小という一般的な傾向を逆転させなければならない。
・現場管理者が率いる組織単位は、今日一般に見られるものよりも大きくしなければならない。
〇第26章 専門職
専門職たる者は、自らの仕事が何であるべきか、優れた仕事とは何であるべきかを自ら決める。何を行うべきか、いかなる基準を適用すべきかについて、誰も彼に変わって決めることはできない。
〇第27章 優れた経営管理者の要件
経営管理者の仕事の基本的な活動。
①目標を設定する
②組織する
③動機づけを行い、コミュニケーションを行う
④評価測定する
⑤部下を育成する
〇第28章 意思決定を行うこと
複数の解決策から最善の解決策を選定する基準
①リスク
②経済性
③タイミング
④人的な制約
〇第29章 明日の経営管理者
明日の経営管理者は7つの仕事に取り組むことを求められる。
①目標によってマネジメントする。
②長期の大きなリスクをとる。
③戦略的な意思決定を行う。
④共通の目標のもとに自らの成果を評価するメンバーからなるチームを構築する。
⑤情報を迅速かつ明確に伝え、他の人を動機づける。
⑥一つあるいはいくつかの機能に通じているだけでなく、事業全体を把握する。
⑦いくつかの製品あるいは一つの産業に通じているだけではなく、それらのものを社会延滞に関連付け、そこにおいて重要なことが何であるかを知り、自らの意思家ってと行動に反映させる。
とても半世紀以上も前の著書とは思えない、今でも十分あてはまり考えさせられる内容でした。「経営する」ということにおいて、普遍的な部分は何かということに気付きがあります。上下巻にわたる大作ですが、お薦めです。