『CSRで経営力を高める』(水尾順一)
企業の理念と社会的価値の参考図書です。2005年、CSR(Corporate Social Responsibility)が出始めたころに発売された本書は、CSRの基本的な考え方がまとめられた入門書のです。おもしろいのは、「コンプライアンスはケーススタディで理解する」という考え方のもと、第2章は20問以上の設問・解答解説に割かれていること。悩んでしまうケースが取り上げられており、いい訓練になります。
■ひとことまとめ
CSR、目線は社員、視線は社会。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇企業評価のものさしの変化
個別製品ブランドから事業ブランド、さらには企業全体のコーポレート・ブランドに変化してきた。コーポレート・ブランドは、企業自らの評価で形成されるものではない。消費者・取引先・地域社会・従業員・株主といったステークホルダーから評価がなされて、はじめて意味がある。
〇CSRが求められている背景
①企業不祥事の発生
②経済のグローバル化(格差、環境、労働環境、地域社会との軋轢など)
③多様な価値観を持ったNGOの台頭
④ITの発達(NGOと市民社会の連携、不祥事などの情報拡散)
⑤社会・市民の価値観の変化
⑥CSRを支援する市場メカニズムの動き(社会的責任投資SRIなど)
〇CSRの4つの責任
①法的責任(自らが関連する法令を理解し法律を守る)
②経済的責任(税金・給料・配当を支払う)
③倫理的責任(人権・労働環境、消費者対応、地球環境保護)
④社会貢献的責任(社会貢献的活動を積極的に進める)
〇CSRだけでは経営力は高まらないが、CSRなくして経営力を高めることもできない。ましてや持続可能な発展もまたあり得ない。
〇攻めと守り
・「ガードを固める守りのCSR」
企業の存続の大前提となる。
・「戦略思考の攻めのCSR」
ステークホルダーの満足を得ることで企業の評価を高め、最終的には、企業の持続可能は発展に結びつく。
〇CSRによる変革力
①新しい風土を生み出す
②企業の品性を高める
③社会的な評価を向上させる
④異質な知と出会いを促す
⑤優秀な人材のリクルートにつながる
〇未来志向のCSRを支える4つのポイント
①活動の先進性
②活動の独自性
③活動の継続性
④行政、企業、市民、NGOの連携
CSRが出始めたころの入門書という色合いが強い一冊でした。したがって、あまりCSR云々ということが協調されるのではなく、あくまで経営戦略を考える要素のひとつとしてCSRを位置付けられています。本書をきっかけにCSR/CSVについて理解を深めていきたいところです。