『新世界』(西野亮廣)(◯)
本書は、お金を生む方法が変わりつつある最近の状況、その中でいかに信用を積むことが大切かということについてまとめた一冊。体現して、行動と実績で示し続けている著者が見ている世界観がわかり、楽しみながらも気づきの多い内容でした。
前作の『革命のファンファーレ』もそうでしたが、強い信念と時代の流れや本質を見抜く目と実行力が重なって、説得力があるなぁと感じ、みんながみんなではないけれど、徐々に時代が移り変わっていくんだなぁという感覚がとても新鮮です。経験を積み重ねてきた人ほど、頭を柔軟にできるよう、変化に対応できる努力をしていきたいもんですね。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯「はじめに」より
・この国では”外”に出ようとすると必ず村八分に遭う。この国では、多くの人が自分の自由に自主規制を働かせていきているから、自由に生きようとすると、必ずバッシングの対象になる。その根底にあるのは、「俺も我慢しているんだから、お前も我慢しろ」だ。夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる。挑戦する以上、この道は避けて通れない。
・その場所から一歩踏み出すのに必要なのは、「強い気持ち」なんかじゃない。キミに必要なのは、踏み出しても殺されない『情報』という武器だ。右斜め前に落とし穴があることが分かっていれば、左斜め前に足を出せるだろう?今、世の中で何が起こっているかを知るんだ。時代が大きく動いている。
・ここ1〜2年は、とんでもない規模のゲームチェンジが起きている。とくに、『お金』は大きく姿を変えた。当然、扱い方も変わってくる。ほとんどの人がこの変化に気づいていなくて、変化に乗り遅れた順に脱落していっている。キミに守りたいものがあるのなら、この変化を正確に捉えるんだ。
◯貯信時代
・ボクらがまずやらなきゃいけないことは、「お金は汚い」というイメージを捨てること。このイメージを捨てない限り、僕らは、”挑戦できない身体”のままだ。そして恐ろしいことに、”挑戦できない身体”を長年続けてしまうと、それが当たり前になり、僕らは自分が”挑戦できない身体”であることを忘れてしまう。
・クラウドファンディングは「お金を集める装置」ではなく、「個人の信用をお金に換金する装置」だということ。換金するモトとなる「個人の信用」が無ければ、クラウドファンディングでお金を作ることはできない。現代、クラウドファンディング野音ランサロンといった「個人の信用を換金する装置」が次から次へとボコボコ登場している。信用さえあれば、お金が作れるようになってきた。『信用持ち』は現代の錬金術師とも言える。
・キミの親世代は「働け」と言うかもしれないけれど、信用経済においては、「働く」の定義が「お金を稼ぐ」から「信用を稼ぐ」に変わってくる。
・若い子は、これまで以上にオジサン達から「最近の若いヤツは」と言われるだろうね。特にそこに「お金」が絡んでくると「貯めた信用をインターネットサービスを使って換金する」という、これまでにないお金の生み出し方だから、「何か悪いことをしているに違いない」と思い込む人が出てくる。彼らは「お金は、汗水垂らして、その対価としてようやく貰えるもの」と信じきっている。もちろん、そうやって生まれる「お金」もあるし、別の形で生まれる「お金」もある。国民のほとんどがお金の生み出し方に別の選択肢が追加されたことに気づいていない。だけどこのことは踏まえておいたほうがいい。あらゆるルールが変化する時代に、確かのことは一つだけ。「この流れはもう止められない」ということだ。
・ただ一つ言えることは、「今の時代には『まずは信用を稼いで、その後で換金する』という選択肢がある」ということだ。
◯日常となる信用販売
・まもなく、個人の信用がモノをいう時代に突入する。当然、匿名のSNSは得策じゃない。匿名で呟いても実生活における信用ポイントは増えない。実名で活動し、信用ポイントをきちんと自分の名前に貯めて、自分を「ブランド化」しておくことが、この先のキミを守ってくれる。
・信用の稼ぎ方については、その人が置かれている状況によって細かく変わってくるんだけど、大筋は一緒。「嘘をつかない」ということ。「嘘をつかない」というのは、とても難しい。嘘は感情ではなくて、環境によって”つかされる”んだ。誰一人として嘘はつきたくないんだけど、嘘をつかざるを得ない環境になった時に嘘をついてしまうのがボクらだ。
◯炎上の4象限(収益×信用)
①収益化できてるけど、信用を失っているケース
(例)おでんツンツン男、多くのテレビタレント
②収益化できていないし、信用も失っているケース
(例)多くの一般人
③収益化できてるし、信用も得ているケース
④収益化できていないけど、信用を得ているケース
(例)ホームレス小谷、田村P
⇨たとえその瞬間に収益化できていなくても、信用さえ稼いでいれば、後でいくらでも収益化することが可能。
・「注目」を集めていきている人と、「信用」を集めていきている人とでは、お金の出所が違う。「注目」を集めることで成り立っている場合、お金の出所は広告主(広告費)。一方、「信用」を集めることで成り立っている場合、お金の出所はお客さん(ダイレクト課金)。
◯オンラインサロン
・そのプロジェクトに対して前向きなスタッフだけが集まってくれた方が助かるし、仕事を受ける側も、自分が参加するプロジェクトは自分で選びたい。この両者を繋いでくれる装置が「オンラインサロン」だ。誰でも発信できるようになった一億総クリエイター時代とオンラインサロンは非常に肌があっている。そして、オンラインサロンが盛り上がれば上がるほど、あり方を考えなきゃいけない組織がでてくる。「会社」だ。
・社員に利用されない会社は潰れる。これは間違いない。
◯オンラインサロンのオーナーに必要な条件
・オンラインサロンもクラウドファンディング同様、「信用を換金する装置」だということ。
・オーナーに必要なのは、印籠を作れる生産能力で、それを持ち合わせていないとちょっと厳しい。「みんなが集まれる場所を提供しまーす」だけでは、乗り切れない。批判を全て跳ね返すだけの圧倒的な作品をコンスタントに発表できる力が必要。
・男女のバランスを意識するといい。女性だけだと前には進まない。だけど、女性の意見はとっても大事。
・結局使うのはFacebook。プラットフォームの手数料は10%強〜20%強。
◯『店検索』から『人検索』へ
・「時間軸」で地図を描いた時、東京から一番遠い日本は東京にある。『東京都小笠原村』だ。東京からざっと24時間ぐらいかかる。ちなみに東京からニューヨークまでは13時間だから、東京駅から見たら、ニューヨークのはるか向こうに『東京都小笠原村』がある。『時間軸』で見た地球は丸くない。これと同じことが「人」にも言える。駅から徒歩1分のところにある「よくわからない人が働いている店」よりも、駅から徒歩5分のところにある「知り合いが働いている店」の方が精神的な距離は近いでしょ?よくわからない人の店は、あんまり行こうと思わない。遠いんだよ。「人軸」の地図は、人の数だけ存在する。
などなど、著者の身の回りにいる方を取り上げながら解説されているので、とってもわかりやすく、リアルで興味深い内容でした。尖った本は示唆にあふれていて、頭を柔軟にするにもってこいですね。