MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

未来を拓く君たちへ(田坂広志) 

『未来を拓く君たちへ』(田坂広志)(◯)

 田坂先生が「志」について語った一冊。熱い詩的な表現で引き込まれつつ、内省という意味でも役立つ内容でした。田坂先生の書籍は、以前から好きでよく読んでいますが、歳を重ねるほど、日常の意識が高まるほど、心に入ってくる感じで、10年前にはさらっと読み飛ばしていた内容が、よりその奥にある田坂先生が伝えたい考え方、体験を読み取り、自分ごととして当てはめて考えるように読み方も変化してきています。より、読むスピードがゆっくりになってきています。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯志

・「志」を抱いて生きることで、目の前に聳え立つ、人生という名の山を登っていくことができる。

・「志」とは、与えられた人生において、己のためだけでなく、多くの人々のために、そして、世の中のために、大切な何かを成し遂げようとの決意。

 

◯なぜ志を抱いて生きるのか?5つの理由

(1)悔いのない人生を生きるため

・人は必ず死ぬ、人生はただ一度しかない。

・悔いのない人生とは、「永劫回帰」の物語にイエスと言えるか?

「今、一つの人生を終えようとしている、おまえ。もし、おまえが、この人生と全く同じ人生をもう一度行きよと問われたならば、然り、と答えることができるか。いや、さらに、もし、おまえがこの人生とまったく同じ人生を、何度も、何度も、永遠に生きよと問われたならば、然り、と答えることができるか。その永劫に回帰する人生を、喜んで受け入れることができるか」

・苦労、困難、失敗、敗北、挫折、喪失・・・。

①そうしたものを「それがあったからこそ」という言葉で語れるか?

⇨そのためには「成長」がキーワード。「成功」ではない。「成功」は約束されていないが、「成長」は約束されている。苦労・困難・失敗・敗北・挫折・喪失・・・を成長の糧とする覚悟があれば。

②その出来事が語りかける言葉に耳を傾けられるか?その意味を理解すること

⇨志を心に抱くときに、人生が語りかける声に虚心に耳を傾け、その意味を深く理解することができる。

 

(2)満たされた人生を生きるため

・満たされた人生とは充実した人生。短い人生が不幸ということではない。時間の密度次第。明日の「死」を覚悟して生きること。一日一日を大切に生きていくこと。人はいつ死ぬかわからない。平均余命という言葉の錯覚に気づかなければならない。

・「生きる」から「生き切る」へ。志を抱くと、この一瞬を生き切ることができる。

・「志」とは未来を定かに見つめながらも、心はこの現在、この今一瞬にある。過去や未来に心を囚われない。

 

(3)「香りある人生」を生きるため

・「香りある人生」とは「使命感」を持って生きること

・大切な一つは「感謝」を持って生きること

・もう一つは「義務」。「義務」と聞くと受動的なニュアンスに物足りなさを感じるかもしれないが、「義務」という言葉が「受動的」で「消極的」な意味を超え、「能動的」で「積極的」な意味へと深まっていくとき、そこに生まれる言葉が「使命」。「義務」から「使命」へと、想いが深まっていくとき、「使命感」が生まれる。

 

(4)「大いなる人生」を生きるため

・「何を成し遂げたか」が人生の意味を定めるのではない。「何を見つめて生きたか」が人生の意味を定める。

・「どのような仕事をしているのか」が仕事の価値を定めるのではない。「仕事の彼方に何を見つめているか」が、我々の「仕事の価値」を定める。

ヴィクトール・フランクル(心理学者)

「自分の人生の「意味」は何か。あなたは、人生に、その「意味」を問うべきではない。そうではない。人生が、あなたに「意味」を問うている。あなたは、「人生」から、深く問いかけられている。あなたの人生の「意味」は何か。その問いを、問いかけられている」

 

(5)「成長し続ける人生」を生きるため

・人生には3つの真実がある

①人は、必ず死ぬ。

②人生は、ただ一度しかない。

③人は、いつ死ぬかわからない。

・自分の人生を大切にするとは、自分の人生で巡り合った人々を大切にすること。縁を大切にすること。そのためには、「正対」することが最も大切。

・なぜ我々は、大人になると「成長」することを忘れてしまうのか。それは、「小成に安んじる」(小さな成功と、小さな成長に満足してしまう)から。

・死とは、人生の終わりではない。死とは、成長の最後の段階である。

 Death:The Final Stage of the Growth

 

◯志

・志は、一つの世代では実現できず、世代を超えて永遠に受け継がれていくもの。

・最も強い生命感を宿らせるのは、使命感

・「使命」と書いて「命を使う」と読む。君の命。必ず終わりがやってくる命。ただ一度限り、君に与えられた命。いつ終わりがやってくるか分からない命。その君の命。その命を、君は、何に使うか。

 

 『知命立命』(安岡正篤)を読んだときにも感じましたし、『論語』にある「四十にして惑わず(不惑)、五十にして天命を知る(知命)」を読んでも感じたこと。私も間も無く50歳になりますが、節目が近づくにつれ、使命感について考える時間が増えます。そして、生き方についても、「義務」から「使命」へ。より自由に素直に。側から見れば、我儘に見えたり、自由奔放に見えたりするかもしれませんが、自分の心と直感的な感覚を大切に一日一日を丁寧に積み重ねていきたいと、改めて感じました。

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