MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

リーダーの「挫折力」(冨山和彦)

『リーダーの「挫折力」』(冨山和彦)

 2011年に発刊された『挫折力』の改訂新版です。「100年に1度」が10年に1度起こるような時代。必然的に誰もが失敗や挫折に直面する機会が増える。日本では、独断専行や独裁者が忌み嫌われ、失敗しない人や調整能力が高い人が出世をするシステム。今後は、前者のようなリーダーなしには、国も企業も立ち行かなる。そうしたリーダーになるには、失敗や挫折を気にせず挑戦し続ける「挫折力」を磨くこと。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯優等生リーダーが日本を壊す

・倒産や起業における失敗を余儀なくされた会社のリーダーの多くは、皆人間的に「いい人」

・優等生は自分より強い立場にいる人の心を読むことに長けている。間違いたくない、嫌われたくない思いが年を追うごとに高まる。「相手の意図を読む」ことばかりしてきた人がリーダーシップを発揮する立場になるとどうなるか。「組織全体の空気を読む」。

 

◯挫折・修羅場がリーダーを育てる

・本当に大事で難しい問題には正解がない。最後は自身の価値観、好き嫌いで判断するしかない。自分の頭で考え、自分の心で感じ取ることが基本。本当の意味での自分で考える能力は、日本的教育システムでは育成できない。

・優等生リーダーの殻を破るには、挫折経験・失敗経験が必要。挫折とは、ある意味、能力以上のことに挑戦した結果。それが人としての伸びしろになる。一時的には辛い経験であっても、長い目で見れば悪い経験ではなく、むしろ難所を切り抜ける貴重な経験になる。

 

◯挫折体験のメリット

・打たれ強くなる

・過去をリセットできる

・敗因を分析することで、次の戦いに活かせる

・挫折してみると、自分という人間がよくわかる

 

◯強いトップに、挫折経験のある人が多い理由

・常にメインストリームを歩んできた人間は、常に権力を行使できる者に近い位置にいるため、権力を行使された経験がない。権力に虐げられ、煮湯を飲まされた経験がないから、権力の本質がわからない。そんな人物は「有事」にも脆く、自らの権力を有効には行使できない。人間の想像力、思考力というものは、結局は自ら身をもって体験したことに規定される。だから宗教家は修行という人間世界の苦悩を疑似体験することで悟りを開こうとする。

 

◯「禍福は糾(あざな)える縄の如し」が教える人生の知恵

・むやみやたらに失敗すれば良いというものではない。挫折を力に変えるにはどうしたらいいか?「ストレス耐性」を強くすること。

・「禍福は糾える縄の如し」とは、常にいいことと悪いことは表裏一体ということ。

 

◯「逃げて時を待つ」

・挑戦すれば当然に負け戦は増える。自分一人ではどうしようもない因子に圧倒的に支配されていると感じた時は、とりあえず三十六計逃げるに如かず。自分の風が吹いて風車が回り出すまで、じっくり力を蓄える方が結局うまくいく場合が多い。その姿が失脚に見えようが、気にすることはない。成功哲学の呪縛で「何歳までに何々を成し遂げなくてはならない」と自分を追い込む必要はない。

 

◯失敗を失敗で終わらせない方法

・過程から学ぶという意味では、結果が出た時よりも、結果が出なかった時の方が、より多くを学べる。失敗には比較的、はっきりとした敗因がある場合が多いのに対して、成功の多くはいくつかの要因が複合している場合が多く、これという原因を特定することが難しい。「負けに不思議の負けなし」。

・はっきりした敗因から、さらにその背景にある原因因子を遡っていくと、結局、自分の何が足りなかったのか、さらには自分自身の特徴、得意不得意に至るまで、実に多くのことを知ることができる。

・この姿勢が身につくと、「勝って良し、負けてなお良し」で究極的にはどちらでもいい考え方ができるようになる。

 

◯本当に信頼できる味方の見つけ方

・出会ってすぐ意気投合したような顔になり、「やりましょう」という人間は信じない方がいい。こういう人間は、お調子者にすぎないことが多い。こちらに勢いがなくなれば、勢いがありそうなところに乗り換える。挫折を知らず、エリート集団の中で育ってきた優等生ほど、こうした人に騙されやすい。

・信頼できる関係とは、何度も修羅場をくぐり抜けながらも壊れなかった関係である。それでも離れなかった人こそが、真に信頼できる仲間である。挫折したときこそ、人間関係の真実が垣間見れるときであり、真の信頼関係を構築できるチャンスだということ。

 

◯会社の寿命を縮めるのは「引き算ができないリーダー」

・行き詰まった会社のリーダーに求められるのは「引き算」の発想。「足し算」が必要な時もあるが、困難に陥ったときに必要なのは、むしろ「引き算」。引き算とは撤退戦。市場をライバルに譲渡し、社員の犠牲を伴う。得るものはなく、社員の士気の維持も困難。それでも組織のためを思えば、リーダーは「捨てる」選択をしなくてはならない。

・数多くの倒産した企業のリーダーと接してきてわかったことは、彼らのほとんどは、自社を取り巻く問題を的確に把握していた。そして、彼らの多くが実に「いい人」であること。わかっていても情に流され、「空気の支配」に抗えず、リーダーが「捨てる」ということができなかった。

 

 好き好んで、挫折や失敗をしにいくことはないと思いますが、チャレンジしていれば自ずと失敗や挫折に直面し、その経験を「禍福は糾(あざな)える縄の如し」の精神でプラスに変えていくこと。失敗や挫折を恐れてチャレンジを避けていては、現状維持が精一杯。周りが進めば、現状維持は、イコール後退していることにもなります。挫折や失敗の捉え方を「ネガティブ」→「将来の糧」に変換することが大切だと感じました。

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