『イノベーションと企業家精神』(ピーター・F・ドラッカー)(◯)
1985年、ドラッカー75歳の時の作品。イノベーションと企業家精神を生み出すための原理と方法が書かれた一冊であり、イノベーションと企業家精神の全貌を体系的に論じた最初の著作。全体は大きく、イノベーションの方法、企業家精神、企業家戦略の3つに分けて論じられています。線引きが膨大に入ってしまう良書です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯企業家精神
すでに行っていることを上手に行うことよりも、まったく新しいことを行うことに価値を見出すこと。
◯イノベーションの7つの機会
①予期せぬ成功と失敗を利用する。
・予期せぬ成功は、自らの事業と技術と市場の定義について、いかなる変更が必要かを自らに問うことを強いる。それらの問いに答えたとき初めて、予期せぬ成功が最もリスクが小さく、しかも最も成果が大きいイノベーションの機会となってくれる。
・予期せぬ失敗は、取り上げることを拒否されたり気づかれずにいることはない。しかしそれが機会の兆候と受け止められることはほとんどない。
②ギャップを探す
・ギャップは通常マネジメントに提示され検討を加えられる数字や報告の形では現れない。定量的ではなく、定性的である。
・ギャップはそれを当然のこととして受け止めてしまいがちな内部の者が見逃しやすいもの。
・業績ギャップ、認識ギャップ、価値観ギャップ、プロセスギャップがある。
③ニーズを見つける
・イノベーションの母としてのニーズは、限定されたニーズである。漠然とした一般的なニーズではない。具体的でなければならない。
・プロセス上のニーズ、労働力上のニーズ、知識上のニーズがある。
④産業構造の変化を知る
・産業や市場の構造は、非常に安定的に見えるため、内部の人間は、そのような状態こそ秩序であり、自然であり、永久に続くものと考える。しかし、現実には、産業や市場の構造は脆弱である。小さな力によって簡単にしかも瞬時に解体する。
・あらゆる者が「我が社の事業は何か」を問わなければならなくなる。
⑤人口構造の変化に着目する
・人口構造の変化:推測が容易。人口構造の変化が企業家にとって実りあるイノベーションの機会となるのは、ひとえに既存の企業や公的機関の多くが、それを無視してくれるから。
⑥認識の変化をとらえる
・認識の変化:コップに「半分入っている」と「半分空である」とは、量的には同じだが、意味は全く違う。取るべき行動も違う。
⑦新しい知識を活用する
・知識によるイノベーションの特徴
1)リードタイムが長い
2)いくつかの異なる知識の結合によって行われる
3)知識そのものに加えて、社会、経済、認識の変化のすべての要因を分析する必要がある。
4)戦略を持つ必要性がある
5)特に科学や技術の知識によるイノベーションに成功するには、マネジメントを学び、実践する必要がある。
◯イノベーションの原理
・イノベーションの方法として、提示し論ずるに値するのは、目的意識、体系、分析によるイノベーションだけ。
・イノベーションの条件
①イノベーションを行うには、機会を分析することから始めなければならない。
②イノベーションとは、理論的な分析であるとともに、知覚的な認識である。
③イノベーションに成功するには、焦点を絞り、単純なものにしなければならない。
④イノベーションに成功するには、小さくスタートしなければならない。
⑤イノベーションに成功するには、最初からトップの座を狙わなければならない。
・イノベーションの3つの「べからず」
①凝りすぎてはならない
②多角化してはならない
③イノベーションを未来のために行ってはならない。現在のために行わなければならない。
・イノベーションを成功させる3つの条件
①イノベーションは集中でなければならない。
②イノベーションは強みを基盤としなければならない。
③イノベーションはつまるところ、経済や社会を変えなければならない。
・4つの条件
①イノベーションを受け入れ、変化を脅威とみなす組織を作り上げなければならない。
②イノベーションの成果を体系的に測定しなければならない。
③組織、人事、報酬についての特別の措置を講じなければならない。
④いくつかのタブーを理解しなければならない。
枠組みがわかりやすく提示されているのが特徴で、何を学び、何を実行すべきかが明確になり、さらに探求したくなります。
イノベーションというと、ベンチャー企業、起業家が行うものという先入観のようなものがありましたが、かなり戦略的に積み上げて実行していくものなのだということを感じました。
個人レベルに落とし込むと、「チャレンジしてますか〜」(戦略的に)