MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ダボス会議に見る世界のトップリーダーの話術(田坂広志)

 『ダボス会議に見る世界のトップリーダーの話術』(田坂広志)

 本書は、ダボス会議における世界のトップリーダー15人の話術を紹介した本です。

 そもそもダボス会議とは?

 ダボス会議は、世界経済フォーラムが毎年1月にスイスのダボスで開催する年次総会で、政界、財界、官界、学界、市民団体、文化人、宗教家など、世界のトップリーダー約2500人が集まる一大イベントです。公式会議が約250、プライベートミーティングが1000以上。小さなセッションでも100名以上の聴衆が集まり、聴衆は誰もが自国に帰ればトップリーダーばかり。

 互いに品評するこの場で、世界のトップリーダーはいかなる話術を用いているのか。それは、話術の8割は言葉を越えたメッセージ。姿勢・表情・眼差し・身振り・仕草・声の質・リズム・間・余韻など‥。

 そして、話してはどのような自分物なのか。信念、覚悟、決断力、説得力、思想、ビジョン、志、使命感、人柄、人間性など‥。

  

(印象に残ったところ‥本書より)

〇多重人格のマネジメント(ビルゲイツ

 スピーチにおいては、人格の使い分けの技術が極めて重要。話術を極めると最後はどの人格で話をするか、「多重人格のマネジメント」になっていく

 

〇細やかな感受性(ブレア・イギリス元首相)

 聴衆に何を語るか以前に、聴衆から何を聴くか。聴衆に対して何を語るかを腐心している段階は、まだ本当のプロフェッショナルではない。聴衆の無言の声にどう耳を傾けるかを考え始めたとき、本当のプロフェッショナルの世界を歩み始める。スピーチとは、実は、会場の聴衆との無言の対話に他ならない。話術を磨くことは、究極的には人間を磨くこと。

 

〇位取り(メドベージェフ・ロシア大統領)

 位取りとは、どのような立場で語っているか。何を語るかの前に、どのような目線で語っているか。これが、言葉を越えたメッセージとして聴衆に伝わってしまう。

 

〇歴史を語り、思想を語る(温家宝・中国首相)

 言葉には、それぞれ重さがあり、その言葉を堂々と語り、聴衆の心に投げ込むためには、相応の体力が求められる。その体力とは、端的に言えば、人間の重量感のこと

 

〇情熱的なメッセージを語る人物を演じる(ゴア・アメリカ元副大統領)

 情熱的に思いを込めてメッセージを語る自分、その自分を冷静に見つめ演じている自分、その二人の自分をさらに遠くから見ている自分がいると最高の状態。冷静に自分を見ているもう一人の自分がいるかどうか。素人の話者の感動的な話と玄人の話者の感動的な話はその一点において違う。毎回初心という心構えも素人と玄人の違い。

 

 プレゼンテーションと言えば、世界的な講演会のTEDが有名ですが、このダボス会議は聴衆も世界の一流ばかりで本当にすごい会議です。その本気の場における話術は、TED・ダボス会議ともにすごいものがありますね。なお、本書では、うまくいかなかったスピーチも学びの題材として取り上げています。

 レベルは違いすぎますが、プレゼンテーションする場の一つひとつで、伝える内容もさることながら、もう少し話術を意識しながら臨みたいと思いました。

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