MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

本物のリーダーとは何か(ウォレン・ベニス、バート・ナナス)

『本物のリーダーとは何か』(ウォレン・ベニス、バート・ナナス)

 「マネジメントはものごとを正しく行い、リーダーは正しいことをする」。エンパワーメント、ビジョン、信頼、組織の価値観や行動指針・・・本書は、リーダーシップの第一人者である著者がリーダーの役割やリーダーに求められる資質についてまとめた一冊です。原書は、1985年刊行の『Leaders』の邦訳版『リーダーシップの王道』(1987年)。この最新版(2007年)を翻訳したものです。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯本書で強調されている点

①リーダシップは人格の問題。人格は絶えず進化していく。リーダーになるプロセスは、調和のとれた人間になるプロセスとほとんど変わらない。
②組織が競争力を維持するためには、組織の中に知的資本を生み出す仕組みを作らなければならない。
③固い決意がなければ、目標を達成することも、ビジョン(信念・情熱)を実現することもできない。
④信頼を生み出し、それを維持する能力こそ、リーダーシップの要。
⑤真のリーダーには、楽観性によって他者を自分のビジョンに引き込む不思議な力がある。
⑥リーダーには、良い結果をもたらす具体的で積極的な手段、実行の手順を人々にはっきり示す義務がある。

 

◯管理はやめよう(ユナイテッドテクノロジーズがウォール・ストリート・ジャーナル誌に載せたメッセージ)

 管理されたい人などいない。人は、率いてほしいのだ。世界的マネジャーなど、

聞いたことがない。世界的リーダーならある。

 教育のリーダー。政治のリーダー。宗教のリーダー。ボーイスカウトのリーダー。

地域社会のリーダー。労働者のリーダー。企業のリーダー。

 彼らは、率いる。管理するのではない。勝つのはムチではなく、常にニンジンだ。馬に聞いてみるといい。馬を連れて、水辺まで行くことはできるが、馬にむりやり、

水を飲ませることはできない。誰かを管理したいなら、自分を管理することだ。それがうまくできたら、もう人を管理したいなどと思うことはないだろう。そして、率いることを始めるだろう。

 

◯あらゆる方法で「意味」を伝える

・「夢見たことなら、実現できる」(ウォルト・ディズニー

・信じるだけでは、夢は実現しない。コミュニケーションがなければ何も実現しない。成功するためには、周囲の人々に魅力的な青写真、相手の熱意や参加意欲を掻き立てるようなイメージを伝える能力が必要だ。

・優れたリーダーとは、ものごとの意味を管理し、それを効果的に伝えられる人物だ。

・アイデアが受け入れられるかどうかは、リーダーシップにかかっている。なぜならリーダーシップは、アイデアに耳を傾けてくれる人を生み出すからだ。

 

◯「ポジショニング」で信頼を勝ち取る

・この世に粘り強さに代わるものはない。粘り強さと決意、それだけがすべてに打ち勝つ。

・ビジョンが目指すべき理想だとすれば、ポジショニングは自分の場所を確立すること。そのためにリーダーは、明瞭さだけでなく、一貫性や頼りがいも体現していなければならない。自分の場所を確立することで、リーダーは信頼を勝ち取る。

 

◯ワレンダ要因

・「ワレンダ要因」とは、前向きな目標を持つこと。後ろを振り返り、起きてしまったことも言い訳を探すのではなく、目の前の任務に全力を注ぐこと。

・自己観では、「自分はどれくらい有能か。自分には必要な資質が備わっているか」が基本的な問題になるのに対して、ワレンダ要因では、「出来事も結果をどうイメージするか」がポイントになる。

・ワレンダ要因は、自分の能力よりも、むしろ出来事の結果に対する判断と関係している。ワレンダ要因は外部の条件に左右される。

 

◯パワーを与え合う

・リーダーは、「意図を実現し、それを維持するための力を人々に与える人」。

・有能なリーダーは、パワーの逆、すなわちエンパワーメントというシンプルな行為によって、人々の努力がもたらす実りをさらに豊かなものにする。パワーはリーダーから部下へ、そして再び部下からリーダーへと移動する。リーダーと部下は互いの力を借りながら、指揮者と演奏者のゆおに美しいハーモニーを奏でる。この双方向の動きが独自のリズム、独自の活力と勢いを生み出す。

 

 

◯リーダーとマネジャーの違い

・リーダーは人々の関心をビジョンに引きつけることで、組織の感情的・精神的資源(価値観、コミットメント、やる気など)を組織運営に活用する。

・マネジャーは、組織の物質的資源(資本、技能、原料、テクノロジーなど)を使って組織を運営する。

・ビジョンを考えたのがリーダー自身だったことはほとんどない。リーダーは優れた聞き手でなければならない。成功するリーダーは「質問のうまい人」であり、常に周囲に注意を払ってくれる人だ。

 

◯意欲をかきたてる条件

・リーダーの力量は、自分の考えをどれだけうまく伝えられるかで決まる。リーダーの基本哲学はこうだ。「我々は、この組織の可能性を知っている。ビジョンが実現されたらどうなるかも理解している。我々が今すべきことは、ビジョンを実現するための行動を起こすことだ」

・つまるところ、リーダーとはビジョンを明確に伝え、それに正当化を与える人だ。ビジョンを魅力的な言葉で表現し、人々の想像力と感情に火をつける人、(ビジョンを通して)目的を達成するための意思決定権を人々に与える人でもある。

 

 本書ではビジョンを具現化していくことこそ、リーダーの役割としています。ビジョンを考え出すというよりビジョンへ導くことに焦点を当て、管理より動機づけ、話すことより、聞くこと。説得するより、質問すること。これらのプロセスがマネジャーとは全然違うことが理解できます。

本物のリーダーとは何か

本物のリーダーとは何か

  • 作者: ウォレン・ベニス ,Warren Bennis,バート・ナナス,Bart Nanus,伊東奈美子
  • 出版社/メーカー: 海と月社
  • 発売日: 2011/05/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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