話し方入門(D・カーネギー)
『話し方入門』(D・カーネギー)(◯)
本書は、『人を動かす』『道は開ける』で有名な著者による、スピーチの公式テキストです。出版は、1926年ですが、今でも現役で使えるスキルが盛りだくさんです。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯勇気と自信を養う
・自信と勇気、人前で話しながら冷静に考えをまとめる力。これらは、少数の限られた人々に天が授けたて才能ではない。ゴルフの腕前のようなもので、本気でうまくなりたいと思えば、誰でも自分の潜在的な力量を伸ばすことができる。
・話し上手になるための努力をする中で、最大の実りをしかもなるべく短期間で得るための4つのポイント
①良い話し手になろうという一途な執念を持つことから始める
②話そうとする内容を知り尽くす
③あえて自信ありげに振る舞う
④一にも練習、二にも練習
◯自信は周到な準備から
・話し始めるまでの準備、および、明瞭確実に話せるもの、強く心を動かされたもの、言わずにはおられない何かを持っていること。
・周到に準備されたスピーチは、それだけでもう9割方相手に伝わっている。
・準備とは、あなたの思い、あなたの考え、あなたの信念、あなたの望みを、組み立てること。
・スピーチの準備とは、考えること、さらに深く考えること、思い出すこと、最も心を引かれるものを選び出すこと、それらに磨きをかけて一つのパターンにまとめ、あなたの独自のモザイク模様を作ること。
・一つの真実を胸の中で温め続けることができれば、色々な新しい考えが次々に芽を吹き出し、生い茂るまでになることを知る。テーマが決まっていて、目下その材料を集めているという時には、関連して心に浮かんだことは何もかも書き留めるようにする。考えたことはすべて書き留める。それも思い出せる範囲の短い言葉で。
◯記憶力を増進する
・「記憶の自然法則」といっても極めて簡単。①印象付け、②反復、③連想。記憶したいと思うものについて、集中し、じっくりと観察して、正確な印象を掴む。
・スピーチの要点を覚えるには、一つの要点が必然的に次へと導くような論理的な順序に並べること。
◯上手な話し方の秘訣
・「あなたには個性がある。それは話し手にとって最も大切なもの。個性をなくさないようにしましょう。個性を大切にし、それを伸ばしていきましょう。個性はあなたの話に力と真実味を与える」(自動車王フォード)
・自然な話し方の特徴
①重要な言葉を強調し、重要でない言葉は軽く言う
②調子を変える
③話す速度を変える
④重要なポイントの前後に間をおく
◯話し手の態度と人柄
・人柄こそ、聴衆を前に話す場合には何よりも大切な要素。
・自分の個性を最大限に活かしたいと思うなら、しっかり休養してから聴衆の前に現れましょう。
・エネルギーは聴衆を引きつける力。人々はエネルギッシュな話し手、つまり元気が満ち溢れている人の周りに群がる。
・多くの場合、話し出す前から、我々はすでに値踏みされている。だからこそ、暖かい反応を誘い出すような態度で聴衆には接しなければならない。
・同じジェスチャーを単調になる程繰り返さないこと、肘から先だけを短くぴくっと動かさないこと、あまり早くジェスチャーを終わらないこと。
◯スピーチの始め方
・成り行きに任せるのは危険。前もって周到に準備しておくべき。
・初心者は始めにユーモラスな話をしようとしてみたり、お詫びの言葉を述べたりしがちだが、どちらも普通は感心しない。
・聴衆の注意を即座にひきつけるには
①好奇心を起こさせる
②人間味あふれる話をする
③具体例を挙げる
④何か品物を使う
⑤何か質問をする
⑥何か印象的な言葉を引用する
⑦その話題が聴衆の重大な関心事に影響があることを示す
⑧ショッキングな事実についての話から始める
◯スピーチの終わり方
・多くの初心者はあまりにも唐突にスピーチを終わる。正確に言えば、結びの言葉がない。
・最後に言ったことが一番長く聞き手の記憶に残る可能性がある。
・ただ終わればよいのであって、終わります、などと断る必要はない。
・終わり方の例
①話の要点をまとめたり、繰り返したり、手短に概略を述べたりする。
②行動を起こしてくれるよう訴える。
③聴衆を心から褒める。
④笑わせる。
⑤話しの内容にふさわしい詩句を引用する。
⑥聖書から引用する。
⑦クライマックスへと話を盛り上げていく。
・常に、聴衆がもうそろそろ終わって欲しいなと考える前に終わろう。
◯わかりやすく話すには
・およそ話というものは、話し手が気づいている、いないにかかわらず、次の4つのうちのどれかを目的にしている。
①何かをわからせる。
②感銘を与えたり、納得させたりする。
③行動を起こさせる。
④楽しませる。
・「百聞は一見にしかず」。聞き手によく分からせたいと思うなら、話の要点を絵に描いて、考えが見えるようにしましょう。
・キリストは聞き手が知らないことを、知っている物事に例えることによって説教をわかりやすくした。
・素人を相手にするときは、専門用語を避ける。
・自分の話したいことが頭の中で真昼の太陽のように明確になっているかどうかを確かめる。
・大事なことは繰り返す。ただし、同じ言葉をそのまま繰り返してはいけない。言い回しに変化を加え、話の内容だけを繰り返して、聞き手にそれと気づかれないようにする。
・抽象的な話は、後から一般例を示してわかりやすくする。さらには具体例も挙げれば一層良い。
・短いスピーチの中で適切に扱うことができるのは、大きなテーマのせいぜい一つか二つの側面まで。
・最後に、自分が話したことの要点を短くまとめる。
◯聴衆に興味を起こさせる方法
・私たちは、平凡な事柄についての非凡な事実に興味を抱く。
・私たちの主な関心ごとは自分自身。
・人にその人自身のことや、その人に興味のあることについて話をさせて、熱心に耳を傾けてあげる人は、自分ではほとんど何も話していなくても、一般に話し上手とみなされる。
・美化された噂話、誰かについてのちょっといい話は大抵いつも成功し、人を惹きつける。要点を2、3に絞り、人間味あふれる実例を示すのが良い。
・具体的に、また、明確に話す。
・眼前にイメージが彷彿とするような言葉をスピーチの中に散りばめること。
・できれば2つの対照的なセンテンスを用いてそれぞれの考えを対比させる。
人類普遍の欲求と思う、話すことについて、とても具体的で分かりやすく要点がまとまっています。毎日することだからこそ、日々底上げできるように自分なりの留意点を意識しながら話すことで、気がつけば話がうまくできるようになる。そんな状態が作れないかと、本書を読んで考えました。