数々の著書は出されている三谷さんが発想力をテーマに執筆されるとどうなるのか。それは、「比べる」「ハカる」「空間で見る」というシンプルなものに絞り込まれます。しかもタイトルにあるように「全技法」。これですべてと、とてもシンプル。
発想は、「発散と収束」ではなく、「発見・選択・探究・組み合わせ」から生まれるという三谷さん流の発想技法がまとめられた読みやすい本です。
■ひとことまとめ
発想力は、「比べて」「ハカって」「空間(JAH)で観る」
(印象に残ったところ‥本書より)
〇比べる
■発想力のある人
・インタビュー項目を広げたがる(⇔項目は絶対変えない)
・表が埋まるとツマラナイ(⇔埋まらないと不安)
・データに矛盾や例外があるとワクワク(⇔矛盾を責め例外を消す)
・モノゴトを長期に広く見る(⇔短期に狭く見る)
・オタクや失注先から学ぶ(⇔今のメインユーザーから学ぶ)
■4つの比べる技
①全体を比べて矛盾を探す
大多数が同じ意見だが、一部異論や別意見「矛盾」がある場合、深堀りする。
②広く遠く比べて不変や変化を探す
10年・20年ではなく、100年・1000年単位で比べてみる
③例外と比べる
相関だけではジャンプできない。同じ右上がりの相関分布の中でも幅があることに着目する。
④周縁・その他と比べる
相関分布の上のほう(上縁)と比較。大きなジャンプではないが、すぐ使える技。
〇ハカる
■発想力のある人
・必ず定量化する(⇔勘を信じる)
・勘も長期で評価して統計処理(個人の勘のままに突き進む)
・現場を観察したがる(⇔アンケートを取りたがる)
・過去の行動を調べる(⇔将来の意向を聞く)
・バラしてからハカる(⇔塊のまま飲み込む)
■面白いものをみつける3つのハカる技
①ハカり難い「ヒト」の気持ち⇒「行動」でハカる
・資源配分:「その人は何に一番、時間やお金を費やしているだろうか」
・トレードオフ:「その人は何を選んで何を捨ててきただろうか」
②見通すことのできない「未来」⇒「目利きの勘」でハカる
・誰:誰の勘が正しいのか
・いつ:どれくらいの未来が読めるのか
③曖昧な「塊」は、細かく「バラして」組み合わせてハカる
・メカニズム:その現象の発生理由やメカニズムを具体的に説明できるか
・新技術:日々新たな測定技術が各界で開発されている。それを自社で使えないかと夢想する
〇空間で観る
■発想力のある人
・常に「誰にとって」を問う(⇔「どうやって」にこだわる)
・雪だるまの気持ちになれる(⇔雪だるま何てただの雪玉)
・言葉の意味にこだわる(⇔言葉を一面的にしか見ない)
・なぞなぞ大好き(⇔なぞなぞが苦痛)
・密かに練習を繰り返す(⇔すぐ次の方法に手を出す)
■空間を観るためのたった一つの問い
「軸は何か?」
⇒JAH(軸・値・幅)法
・2軸を決め、軸の幅を決めて、その中でどこに位置するか(値)
〇発見する眼
■発想力のある人
・自由な遊びが好き(⇔答えがある遊びが好き)
・曖昧な問題が好き(⇔明確な問題だけ取り組む)
・うろうろアリになってみたい(⇔うろうろアリが許せない)
・限界突破経験がある(⇔限界に挑んだことながない)
・深い趣味を持つ(⇔仕事専門のみ)
各項目の最初にある「発想力のある人」チェック。半分くらいしか当てはまらず、自分がカチッと当てはめていくことが好きなタイプであることをあらためて実感しました。割と緩い発想・着眼に見えて、ハカる、JAH法のように軸で観るというロジックで担保されており、シンプルでありつつ、実践で使えるなと思う「全技法」でした。