『直感を磨く 深く考える七つの技法』(田坂広志)(◯)
「(アイデアなどが)降りてくる」という表現。どうやったらそんなことができるのか。思考のプロフェッショナルは、論理と直感を対立的に考えるのではなく、その二つを融合させた最高の思考法によって、物事を深く考えていく。「直感を磨く」と「深く考える」という2つの観点からのアプローチから、21の技法を紹介する本書。知性においても人間性においてもいつも深い示唆を与えてくださる著者だからこその世界観が魅力的な一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯深く考えるための七つの思考法
①問題の循環構造を俯瞰しながら考える
・直線論理(原因と結果、根拠と結論、目的と方法)で考えるのではなく、循環理論で考える。
1)問題の循環構造を発見する
2)循環構造の全体に働きかける
3)循環構造のツボを見出し、そこに働きかける
②矛盾を解決しようとしないで考える
・弁証法的に正反合のプロセスでアウフヘーベン(止揚)を目指す。
③橋のデザインを考えるのではなく、河の渡り方を考える
④専門知識で考えるのではなく、専門知識を横断して考える
・一つの専門分野を深く掘り下げる知的能力(垂直知性)ではなく、様々な専門分野を横断的・水平的に結びつけて考える知的能力(水平知性)。
・深く大きな問いは、磁石となって必要な知識を引き寄せる。
⑤本で読んだ知識ではなく、体験から掴んだ知恵で考える
1)経験の追体験
2)体験知の振り返り
3)体験知の言語化
⑥自分の中に複数の人格を育て、人格を切り替えながら考える
・自己視点で考えるのではなく、他者視点で考える。これが難しいのは、心の中のエゴの強さと経験不足。
⑦心の奥の賢明なもう一人の自分と対話しながら考える
◯賢明なもう一人の自分と対話する七つの技法
①まず一度、自分の考えを文章にして書き出してみる
1)徹底的なブレーン・ストーミングを行い、頭の中のアイデアを一度文章として書き出す。
2)次に、そのアイデアがすべてであるとは、決して思わない。
・我々は、ある程度の修練を積んでいくと、何か一つのことを文章にしてみると、その文章を別な視点で読み、別の視点から語り出す自分が現れてくる。
②心の奥の賢明なもう一人の自分に「問い」を投げかける
③徹底的に考え抜いた後、一度その「問い」を忘れる
・天才的直感と呼ぶべき素晴らしいアイデアは、一度その問題から離れ、休息を取ったときや、睡眠を取ったとき、さらには、他の仕事に集中したときや、何かの遊びに没頭したとき、突如、閃くことが多い。
④意図的に賢明なもう一人の自分を追い詰める
⑤ときに賢明なもう一人の自分と禅問答をする
・論理的に矛盾した対極の言葉を結びつけて考える。例えば、「未来」と「記憶」を結びつけて「未来の記憶」という言葉思い浮かべる。
⑥一つの格言を一冊の本のように読む
・一つ一つの格言を理屈で解釈するのではなく、読んだ瞬間に心に響く格言を直感によって見つける。
・なぜその格言が心に響くのかを自身の人生の体験に照らして考えてみる。
⑦思索的なエッセイを視点の転換に注目して読む
・始まりの視点に注目する
・視点の転換にに注目する
・異なった視点の結合に注目する
◯賢明なもう一人の自分が現れる七つの身体的技法
①呼吸を整え、深い呼吸を行う
②音楽の不思議な力を活用する
③群衆の中の孤独に身を置く
④自然の浄化力の中に身を浸す
⑤思索のためだけに散策をする
⑥瞑想が自然に起こるのを待つ
⑦全てを託するという心境で祈る
最近、自分のセミナーのコンテンツを作っているときに「降りてくる」という感覚が頻繁にあります。寝ている時などに、スライドのイメージや伝えたいことがパッと閃く感じ。これって、不思議。日常の中で、インプットや思考を意識的に行って、あとは放っておく。「降りてくる」という感覚が信じられるようになると、意図的放置によって閃きを待つ。期限ギリギリまで待って、もし、降りてこなければ、思考の力に頼るしかないわけですが。思考と直感を区別することなく、どちらも使いこなせるようになるということは、自分の可能性を広げるという意味でも重要なことだと思います。