MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ヤマト正伝(日経ビジネス編 日経BP社)

『ヤマト正伝』(日経ビジネス編 日経BP社)

 名経営者の小倉昌男さんが遺した小倉イズムを歴代経営者5人が語った一冊。小倉氏の思いを繋いだ歴代経営者がどのようにイノベーションを起こし、人を育て、危機を乗り越えてきたのか。守るべきものと、変えてゆくもの。それぞれの決断とは。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯社長63歳定年制

・63歳ともなれば、人間は若い頃のような積極性が衰える。判断を間違うことも増えるはず。社長の判断ミスで会社を存亡の危機に直面させてはならない。かつて小倉氏の先代の大和運輸時代に最初の勝負に出遅れたことが影響して、東京〜大阪間の路線開設後も長い苦戦を強いられた経験を活かして。

・退任後は、次の経営者の方針に一切口を出さない。

 

社外取締役の役割

①社長と同じ経営者の立場で意見を言うこと

 「そんなことをやちゃいかんよ」と言えるチェック機能

②後継者の選定で現社長の相談に乗ると言う助言機能

 

◯サービスと利益はトレードオフ

・新商品を開発する場合、経営者はサービスと利益の二律背反に直面して悩む。

・「両方を求めれば”二兎を追う者は一兎をも得ず”の言葉通りになる。これは両方を比較検討して、どちらかを選択するという問題ではなく、どちらを優先するかという判断の問題である」

・小倉さんは、常にサービスを優先していた。「ダントツのサービスを徹底すれば、利益は後からついてくる」と何度も言っていた。

 

◯直間比率

・間接費を増やしてはいけないということも、小倉さんの遺言として伝えておきたい。

・小倉さんは現役時代、直間比率(直接部門と間接部門の人員や人件費の比率)をとても気にしていた。「パーキンソンの法則」(組織は仕事の増減に関係なく、放っておけば自己増殖し、肥大化する傾向がある)を用いながら、「会議をやめたらどうか」「会議を早く終わらせるために立って済ませたらどうか」などと提案していた。

 

◯サービス第一

・目標を全社員で共有するには、短い言葉で何度も繰り返すこと

・「サービス第一」はとても分かりやすい。お客様の立場に立ち、喜んでもらうこと。「サービスが先、利益は後」をさらに凝縮させたのが「サービス第一」。これくらい短い言葉なら現場に浸透するし、間違えることもない。

・かつて小倉さんから「シンプルに言わないと我々のような業態はダメなんだ」と教えてもらった。小倉さんは、俳句や義太夫浄瑠璃にも造詣が深く、短くて分かりやすい言葉で表現する能力に長けていた。

 

◯全員経営

大企業病から脱するには、意思決定の権限を現場に下ろすべき。第一線の社員が自律的にサービスを実践できるよう、「全員経営」という言葉で社内の文化を変えようとした。

・現場を回って見えてきた問題を、小倉さんは「仕組みで解決しよう」とも提案した。現場お客様の立場で考えたサービスを思いついても、すでに構築された宅急便のオペレーションが障壁になることもある。現場のアイデアを実践できるよう、仕組みを見直して刷新すべきだと言っていた。

 

社格

・小倉さんは、「人に人格があるように、会社には”社格”というものがある。これを高めなくてはいけない」と繰り返していた。

社格を高めるにはまず、経営者が倫理観を高めなくてはならない。一時的に儲かればいいといった安易な考えに流されず、常にお客様を最優先に考えて意思決定を下すことが求められる。

 

イノベーションが続く理由

・宅急便の発明は、まさしくイノベーション。けれどイノベーションの後に、経営者に求められるのは、むしろコンダクターの役割。この2つは全く異なる役割だが、小倉さんは両方とも実践していた。

ヤマトグループには、イノベーションが生まれる経営サイクルが根付いていった。常に新しいものを生み出すマインドが染み付いているから、小倉さんが引退した後も成長を続けてこられた。

 

◯現場視点

・現場が良い仕事をできなければ、お客様に良いサービスを届けることができなくなる。お客様目線で良いサービスを突き詰め、現場にとって仕事のしやすい形に落とし込むこと。これを満たして初めて本当の良い商品ができるのだと言っていた。

・優先すべきはお客様と現場。これに少しでも会社の都合が入ると、良いサービスは生まれない。「お客様の立場で見てどうなのか」「現場に無理を強いていないか」「会社の都合を優先していないか」。商品開発時代、小倉さんから言われた言葉を今では言葉を今では私が自分に繰り返し問うている。

 

◯「人柄」を評価項目の中心に

・お客様の視点に代わって、一緒に働く仲間が「良いセールスドライバー」を評価する。仲間同士であれば、互いの働く姿もよく見ているし、理解もしている。

・「お客様から信頼されているか」「お客様のことを考えて仕事をしているか」「仲間を助けることを意識しているか」「誠実であるか」「裏表はないか」「助け合いの気持ちはあるか」「部下の面倒見はいいか」・・

 

◯変わるべきものと、変わるべからざるもの

・「変わるべきものと変わるべからざるもの」を小倉さんは明確に分けていた。

・変わるべきものは、サービス内容やプライシング、荷物の受け取り方など、これらは時代の変化に応じて変わらなくてはならない。

・第一線の人材を大切にし、社員がやりがいを持って働く環境を作ることは、変わるべからざるものとして守っていかなくてはならない。

 

 後継社長が語るからこそ、小倉昌男さんの影響力の強さ、ブレない経営姿勢が伝わってくる部分があります。小倉昌男さんの著書から学べることを補強するような感じで読むとおもしろいなと思いました。視点を変えて読むことは理解を深める読み方としてもお勧めです。

ヤマト正伝 小倉昌男が遺したもの

ヤマト正伝 小倉昌男が遺したもの

 

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