MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

経営者になるためのノート(柳井正)<2回目>

『経営者になるためのノート』(柳井正)(◯)<2回目>

 久しぶりに読み返しましたが、初回よりも「これはいい本!!」という感覚が増しました。おそらく自分のキャリアがそれだけ進んだ(昇進した)からだと思います。本書は、ユニクロの柳生代表取締役会長兼社長が書かれた、経営者になる方へのメッセージです。何を大切にして経営を行うのか?当然ながら厳しさもありますが、それは経営者という従業員や顧客をはじめ多くの関係者の方への責任を持ったポジションに就こうという方に向けたメッセージですから、そこは当たり前の世界。経営者でなくても部下を持つマネジャー、後輩指導にあたる先輩など、多くの方に参考になる経営者論です。「ノート」とあるのは、余白が多く、ノートのように書き込める印刷となっています。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯変革する力

①目標を高く持つ

・ちょっと頑張れば到達できそうな目標のことを、高い目標とは言わない。イノベーションが組織にもたらされるために必要な高い目標とは、「常識で考えたらまともとは思えない」くらいの高さの目標をいう。

・「終わりから始めなさい!なぜならば、ゴールを設定すれば「成功するためにすべきこと」が明らかになるからだ」(『プロフェッショナルマネジャー・ノート』)

②常識を疑う。常識にとらわれない。

・会社の成長、会社の進化を妨げる最大の敵。それは「常識」。

・経営者は「危機感」に基づいて経営をやるべきであって、「不安」に基づいて経営をやってはいけない。

③基準を高く持ち、妥協と諦めをしないで追求する

・経営者として成功するために大切なことの一つが「質に対する意識」。質の基準というのは、「お客様にとって本当に良い」と思えるラインのこと。組織の中で行われる全ての仕事の基準をそのラインに設定し、絶対に妥協しないで追求してほしい。

・「世界で一番」の質の高さを目指し、それを自分たちの基準にする。

④リスクを恐れず実行し、失敗したらまた立ち向かう

・安定思考で成長している会社はない。リスクがないところに利益なし。

・失敗の責任を取るとは?

1)最後まで試行錯誤を尽くす

2)これは本当に失敗だというときは、その原因を徹底的に探求し、学びを得る

3)それを次に活かして、結果を出す

⑤厳しく要求し、核心をついた質問をする

・顧客の創造の方針をもって、常に社員に「お客様は、どう思っていると思う?」「それで、次に何をしたらいいと思う?」という質問を投げかけて考えさせる。

・物分かりのいい上司にならない

⑥自問自答する

・経営者にとって、最もまずいのは「自分はできている」という心を持つこと

・自問自答のコツは、「お客様の一番厳しい目で、自分たちを見る」

⑦上を目指して学び続ける

・「上には上がいると思うこと」「世の中には、今までに起きてないことはないと思うこと」

・経営者としての本当の学習は、知識や情報を「自分のことに置き換えて考えてみること」「実践してみること」

 

◯儲ける力

①お客様を喜ばせたいと腹の底から思う

・お客様の笑顔のために必要な3つのこと

1)お客様をびっくりさせようと思わなくてはいけない

2)お客様の声は重要だが、その一枚上手を行こうとする

3)提供者である自分たちが、本当にいいと思うもの。本当にいいお店だと思うものを作る。

②当たり前のことを徹底して積み重ねる

・経営というのは、当たり前のことを本当に当たり前に毎日実行する。そして、チェックをし、次の方法を考える。計画を変える。このことの繰り返し。

③スピード実行

・間違えることを恐れずに即断即決即実行。

・報告文化には注意。

・「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」(日本電産社長・永守重信

④現場・現物・現実

・難しい問題こそ、現場・現物・現実でことにあたらないと、本当に求める解決にならない

⑤集中する

・これだという大切なもの。そこに経営資源を集中する。

スティーブ・ジョブズのナイキCEOへのアドバイス

「ナイキには誰もが欲しがるような世界最高の商品がいくつかある。しかし、つまらないものもたくさんある。それを捨てて、最高の商品に集中することだ」

⑥矛盾と戦う

・矛盾として戦って、なんとか解決策を見出す。そこに、プロとしての付加価値が生まれる。

⑦準備する。しかし固執するのは計画ではなく、成果である

・計画を作るときに、最も大切なことは成功のイメージ化。

・計画は重要だが、固執してはいけない。固執するのは最終成果。

 

◯チームを作る力

①信頼関係をつくる

・リーダーというのは、チームを勝利に導く人。

・言行一致。「あなたは、あなた自身が言ったこと、約束したこと、あるいはあなた自身が言っていることの最大の実践者ですか」

②全身全霊。100% 全人格をかけて部下と向き合う

・「部下に勝ってどうするのか?上司が自己満足することに経営的な意味はない。部下の心を動かす、部下を変えていくのが上司の役割」

③目標を共有し、一人ひとりの責任を明確にする

・目標の共有は、本当にメンバーがわかるまで、何度も同じことをしつこく繰り返し伝えないと成り立たない。

・自覚形成にとって一番大切なことは、「この仕事は誰の責任なのか」を明確にすること

④任せて、評価する

・仕事の成果=能力×モチベーション

・自分の案がちょっといいくらいだったら、メンバーの案で仕事をさせるべき。

⑤期待し、長所を活かす

・期待することは、メンバーに成果を要求する人の義務であり、責任。

・メンバーに高い成果を要求するのであれば、その分だけメンバーに対する期待の気持ちをセットで届けないと、モチベーションを高めるというリーダーの仕事は完成しない。

⑥多様性を積極的に肯定する

・会社としての本質的で絶対的なところはゆるがせにしてはダメ。

⑦勝ちたいと誰よりも強く思い、自己変革を続ける

・本当に勝ちにこだわった理想的なチームを作るためには、メンバーを鼓舞する前にリーダー自身が先頭に立って挑戦をすることが重要。

 

◯理想を追求する力

①経営者にとっての使命感

・会社にとって一番大事なのは、使命感。

・会社は誰のため?本当に地に足をつけて、自分で商売をやっている経営者は「お客様のため」と答えるはず。

②あるべき使命感

・お金だけを追いかけるとお金に逃げられる。使命を追いかけるとお金がついてくる。

ファーストリテイリングの使命と、心に留めて欲しいこと

・基本的価値観は「お客様のために」。

・使命は「本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します」

④使命感がもたらしてくれるもの

・責任感に通じる

・職業的良心に通じる

・内発的動機を高める

・「めげない人」に育ててくれる

・チームメンバーに方向性を与えてくれる

・優秀な人材をもたらす

・会社が何者かを明確にしてくれる

・判断基準を与える

⑤使命感の実現を脅かすものと戦う

・次のような兆候とは戦う

1)自己都合、強者の論理の横行

2)横並び、モノマネ

3)機械的、作業的でマニュアル思考

4)官僚主義

5)評価が甘く、実力以外の要素で人事が行われる

⑥危機に際しての経営者の行動

・使命感の追求が経営者の本道。

・現実を直視すること。そして、「今は厳しい状況だが、いずれはこうしていく」と付け加える。

⑦理想企業を目指して、人生と対決するようにして生きる

・経営者となる人には全員、理想や未来への希望を強く持って欲しい。

 

 自分のこれまでの仕事を振り返り、著者のメッセージに従って、照らし合わせていくと、「あぁ、自分はかなり甘いなぁ」と思わざるを得なく、足りないところに目が行きがちですが、一方で「こうありたい」「こんな課題を感じている」というように、志があるところ課題あり、理想あるところ努力あり!の精神で、著者のメッセージを前向きのエネルギーに変えていくことができるなぁと感じています。1,324円と、なかなかお得な一冊です。

経営者になるためのノート ([テキスト])

経営者になるためのノート ([テキスト])

  • 作者:柳井 正
  • 発売日: 2015/08/24
  • メディア: 単行本
 

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