『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(古賀史健)(◯)
良書でした。読み終えてみて、タイトルどおり、早いうちに知っておけば良かったと思う気持ちと、今知っておけて良かったという気持ちが重なる感じ。『嫌われる勇気』がベストセラーになった著者のもう一つのベストセラー。2011年に発売されて、現在第17版となっています。
「話せるのに書けない!」という多くの方の悩みに応える一冊。メラビアンの法則で言えば、言語は7%。対話に比べて93%がカットされるのだからそうれは当然。「話す」と「書く」は別物として考えること。数ある文章スキル本も踏まえた上で、著者の経験と本音を乗せた文章講義です。各章のまとめが秀逸なので、そこをピックアップしてみます。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯ガイダンス(その気持ちを「翻訳」しよう)
■どうすれば文章が書けるのか?
・書こうとするな”翻訳”せよ
・文章とは、頭の中の「ぐるぐる」を、伝わる言葉に”翻訳”したもの。
・うまく書けずにいる人は、”翻訳”の意識が足りない。
■書くことは、考えること
・理解したから書くのではない。解を得るために書く。
・わからないことがあったら、書こう。自分の言葉に”翻訳”しよう。
■”翻訳”の第一歩
①聞いた話を「自分の言葉」で誰かに話す
→再構築・再発見・再認識の”3つの再”が得られる
②「言葉にできないもの(地図や絵、写真)」を言葉にする
・ポイント:自分の意見を一切入れない、レトリックに頼らない。
■「書く技術」 は、一生使える”武器”になる
・これからますます「書く時代」「書かされる時代」になる。
・文章力という”武器”を手に入れることは、将来に対する最大級の投資
◯第1講 文章は「リズム」で決まる
■文章は「リズム」で決まる
・文体の正体は「リズム」である。
・文章のリズムは、「論理展開」によって決まる。
・「接続詞」を意識すれば、文章は論理破綻しにくくなる。
・支離滅裂な文章は、文と文の「つなげ方」がおかしい。
・美文より「正文」を目指す。
・主観を語るからこそ、客観を保たなければならない。
■文章の「視覚的リズム」
①句読点の打ち方
・1行の間に必ず句読点を一つは入れる。
②改行のタイミング
・最大5行あたりをメドに改行する。
③漢字とひらがなのバランス
・ひらがな(白)のなかに、漢字(黒)を置く。
■文章の「聴覚的リズム」
・音読は、文章のリズムを確認するために行う。
・文章を音読する際の、2つのポイント
①読点「、」の位置を確認する。
②言葉の重複を確認する。
■断定により、文章にリズムを持たせる
・「断定のリスク」を乗り越えるためには、断定する箇所の前後2〜3行を、しっかりとした論理で固める。
◯第2講 構成は「眼」で考える
■文章の面白さは「構成」で決まる
・文章のカメラワークを考える。
①導入(=序論)・・客観のカメラ
→客観的な状況説明。
②本編(=本論)・・主観のカメラ
→序論に対する自分の意見・仮説
③結末(=結論)・・客観のカメラ
→客観的視点からのまとめ。
■導入は映画の「予告編」
・導入がつまらないと、読者は文章を読んでくれない。
・予告編の基本3パターン
①インパクト優先型
②寸止め型
③Q&A型
■「論理的な文章」の3層構造
①主張・・その文章を通じて訴えたい主張
②理由・・主張を訴える理由
③事実・・理由を補強する客観的事実
・文章の中に”主張””理由””事実”の3つがあるか、そして、その3つはしっかりと連動しているかを、いつも意識する。
■構成は「眼」で考える
・頭の中の「ぐるぐる」を図解・可視化して、「流れ」と「つながり」を明確にする。
・文字量を「眼で数える」習慣をつくる。
◯第3講 読者の「椅子」に座る
■読者の「椅子」に座る
・あらゆる文章には、必ず読者が存在する。
・読者の立場に立つのではなく、読者の「椅子」に座る。
①「10年前の自分」の椅子に座る
②「特定の”あの人”」の椅子に座る
■文章は、優しく書くのがいちばんむずかしい
・「わかるヤツにわかればいい」のウソ
→「読者の理解がふかければふかいほど、わかりやすい表現でどんな高度な内容も語れるはず」(吉本隆明)
■”説得”せずに”納得”させる
・人は「他人事」に興味はない
→「自分事」にすることで、納得させる。
・”仮説”を提示し、一緒に”検証”することで、読者を「議論のテーブル」につかせる。
・「起”転”承結」で読者を巻き込む。
・自分の文章に自分でツッコミを入れる。
■文章は”コミュニケーション”
・「小さなウソ」はつかない。細部をどれだけ大事にできるかは、文章の最重要ポイント。
・「自分の頭でわかったこと」以外は書かない。
・「目からウロコ」は3割、残り7割は「すでにわかっていること」でよい。
◯第4講 原稿に「ハサミ」を入れる
■右手にペンを、左手にはハサミを
・推敲とは、ハサミを使った”編集”である。
■書きはじめの編集
・「なにを書くのか?」ではなく、「なにを書かないのか?」
・頭の中の「ぐるぐる」を可視化する。
→”ある傾向を持つキーワード”と”それ以外のキーワード”の両方を紙に書き出してみる。
・いつも「疑う力」を忘れずに、文章と向かい合う。
■書き終えてからの編集
・推敲とは「過去の自分との対話」である。
・最大の禁句は「もったいない」。
・長い文章を見つけたら、短い文章に切り分ける。
・論理性をチェックする方法
→この文章を、図に描き起こすことはできるか?
・細部がどれだけ描写できているかをチェックする方法。
→この文章を読んで”映像”が思い浮かぶか?
・「身近な他人」「いまの自分」「明日の自分」に読ませる。
■いい文章を書くのに”文才”はいらない
・才能を問うのは「言い訳」。この本を読み終えたら、とにかく書こう。書くことで、読む人の心を動かそう。
以上が各章のまとめに記載されている内容です。本文でこれらが詳しく解説されているので、興味が湧いたら書店で手にとってみてください。SNSを含め「書く」こと自体がますます増えていく時代なので、基本的なことや、ちょっと気をつけておくといいことを知っているだけで、随分文章力が変わってくると思います。毎日やっていることだけに、文章を書く質を高めていきたいものです。