『世界を変えた10冊の本』(池上彰)
『最強の読み方』(池上彰、佐藤優)の中で、佐藤さんが分かりやすく良い本だと述べられていたことから、興味をそそられ買ってみました。この10冊がなぜ世界を変えているのか、池上さんの解説はさすがに分かりやすいです。
(印象に残ったところ‥本書より)
ナチスの強制収容所に送られ16歳で亡くなったアンネ・フランクの13~15歳までの日記。世界70以上の言語に翻訳され、『アンネの日記』を読むと、イスラエルという国が、いかに国連決議に反した行動をとっても、強い態度に出にくくなる。イスラエルが今も存続し、中東に確固たる地歩を築いているのは、『アンネの日記』という存在があるから。
②聖書
キリスト教の信者数は世界最大の22億5000万人であり、聖書は世界も最も読まれている本。聖書には旧約(旧訳ではない)と新約があり、旧約とは古い契約という意味で、旧約聖書はユダヤ教徒・キリスト教徒双方にとっての聖典だが、新約聖書はキリスト教徒独自の聖典。キリスト教を広めるためには、聖典が必要であり、イエスの死後だいぶ経ってから、イエスの言行録が「福音書」としてまとめられ、新約聖書が完成した。
③コーラン
神の言葉を預かる者という意味の預言者。神は最後にムハンマドを預言者に選び、彼に最後の神の言葉を伝えた。神の言葉を書物に残したのがコーラン。イスラム教徒が守るべき五行とは、①信仰告白、②礼拝、③喜捨、④断食、⑤メッカ巡礼。
④プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(マックス・ウェーバー)
宗教が経済活動に想いもかけない影響を及ぼしたという分析の本。「神の栄光を示す」ために、神から与えられた職業を天職として受け止め、時間を浪費することなく、怠惰な生活をせずに働き続ける。こうして財産が貯まっても、これを浪費してはならない。消費せずに資本を再投下する。これを続ければ莫大な資本が形成される。プロテスタントがアメリカに渡ると、やがて「職業の義務」だけが残り、宗教的なバックボーンが消滅してしまった。
マルクスは、資本主義がなぜ非人間的な経済体制になるのかを説いた。資本家は、労働者を雇って働かせることで新しい価値を生み出す。価値は蓄積されて資本となり、資本の奴隷になった資本家は、利益を上げるために無秩序な競争に突入して、恐慌を引き起こす。貧富の格差が拡大し、困窮した労働者は団結して、革命を起こし資本主義を転覆させる。
オサマ・ビンラディンの思想を形成したとされる『道標』。イスラムこそが、健全な発展と進歩に欠かせない価値観を保有している。その思想が失われてしまったために、世界は堕落している。今こそイスラムの理想に帰り、イスラムの原初を思い起こすことが必要。イスラム世界の腐敗した体制を打倒することは、「神の道」であり、正義の戦いである。
私たちが知らないうちに、人間たちにとっての自然が変容してしまうのではないか。そんな危機感を早くから抱き、世界に警鐘を鳴らした本書。これ以降、日本も含め世界は、とても便利に見えた農薬の使用を再考することになった。
キリスト教では、神がすべての生き物を創造したとされたが、『種の起源』の中で、ダーウィンは、地球上の生き物は、自然界で「進化」したと宣言。のちに、「社会ダーウィニズム」というを生み出した。これは、力のある生き物が生き残れるように最も効率的な企業が市場を独占するのは当然、適者生存の理論を経済社会に当てはめ、白人たちがアジアやアフリカで先住民を支配することを正統化する理論になってしまった。
⑨雇用、利子および貨幣の一般理論(ジョン・M・ケインズ)
景気が悪くなったら、政府が公共工事などで支出を増やして経済を活性化させる。金利を下げて、企業の投資を活発化させる。これらは景気対策としての常識となっているが、かつては「とんでもない話」と考えられていた。それを世の中の常識にしてしまった本が本書。それ以来、世界の経済学の常識を変え、世界各国の経済政策が大きな影響を受けた。
⑩資本主義と自由(ミルトン・フリードマン)
政府を信じず、民間企業の活力に絶大な信頼を置いた経済学者フリードマン。固定相場制を改め、需要と供給の関係によって交換レートが変動する変動相場制を提唱。あらゆる面で「小さな政府」を求め、個人の自由に最大の価値を見出した。政府は必要だが、経済活動においては、メインプレーヤーになってはいけない。脇役ないしは審判に徹するべき。
私は、いずれもまだ読んだことがありません。正直取り上げられている本の中には、難解なもの、ボリュームがあるものが大半であり、相当強い気持ちで取りかからないと難しいかなと思いますが、本書はそのエッセンスが理解でき、とてもお手軽に読めました。