『JALの現場力』(金子寛人)
JALは、あの稲盛和夫さんがJALの再建に携わられることになったときから、ずっと注目している企業です。リストラがあり、再建のための様々な施策が実行され、社員の方々にとっては、辛いことがたくさんあったと思います。しかし、JALを利用した際に、機内サービスなどの顧客への対し方が変化していることを実感したときに、いったい社員の方々の気持ちがなぜ、どのように変化したのだろう。そんな取り組みの舞台裏を垣間見ることができる様々な取り組み事例や社員の方々の声が紹介されている一冊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇部門別採算制度(アメーバ経営)
・「ビニール袋S2サイズ1円、シールテープ60円、スッポリマスク627円。破綻前の整備部門は、機体の品質や安全性を高めることには力を注いできたが、一方で費用を『見える化』して管理するといった取り組みは弱かった。」
・「従来は整備費用をいかに抑えるかといった見方が中心だった。今では費用だけでなく、アメーバ単位でどういった収入を上げられるかを見るようになった。今まであまり考えていなかった、収益を上げるという観点ができた」
・時間当たり採算を意識→最新鋭機の就航前倒し、他社機整備の受注拡大を実現→ビッグデータの活用を試行中→部品の点検・交換時期の最適化を目指す
・予約や発券1件ごとの売上高を言明示→個々のオペレータが応対数や増収策を意識→部下や他拠点の取組みを情報共有→社内のコミュニケーションが活性化
〇JALフィロソフィ
・京セラフィロソフィーの78項目を読み解き、JALに採りいれるべきか、適用するとすればどのような形になるかを検討
・JALフィロソフィ手帳を全員に配布し、全員、2時間×年3回のフィロソフィ教育
〇新入社員教育
・4日間にわたる新人教育プログラムの最初の項目は、経営破綻の振り返り。10人近いJALグループ社員のインタビュー映像を視聴。破綻当日をどのように迎えたか、再生に向けてどのように取り組んできたかを各現場の社員が語り部となって新入社員に伝える。そのうえで、「破綻当時、ニュースや新聞を見てどんなことを考えたか」「社員が破綻当時を語る動画をみてどう思ったか」というテーマで、当時を振り返って考えをまとめる時間を確保。
〇1日の残業時間を1時間48分削減
・毎週木・金はランダムに座席配分→他部署の人の業務を把握しやすく
・4人席を縦横交互に配置→全席が端でムラなく利用され対話も促進
・集中スペース(打ち合わせ・通話禁止)→周りに邪魔される業務に集中
・大型文庫は共用として置き場を指定→文具代が大幅に減り紛失も減る
・利用するロッカーを4カ月ごとに入れ替え→無駄な物品をため込ませない
・在籍者110人に対し執務スペースは92席に絞り、打ち合わせスペースを拡大→会議室不足解消。スペースが満杯になったら打ち合わせスペースで執務。
・全員にスマホを配付し、部署代表電話を廃止→取次業務で中断されない。
・会議資料などの書類の配付禁止→紙使用量が1/4に削減
・残業事前申請制・残業者全員打ち合わせスペースで執務するよう規定→ほぼ全員20時までに退社
・残業の多い調達本部の全員に月1回の在宅勤務を義務付け→全員に在宅勤務が浸透
〇スキルアップワークショップ
6テーマから3つを選して聞く。
①初めてのペーパーレス
②プライベートを充実させる
③制度を知ろう(在宅勤務など)
④会議運営・ファシリテーション
⑤自席外でのノートパソコンの活用⑥業務の「見える化」と業務改善の進め方
このほかに、熊本地震、定時率世界一を実現したデータ分析と現場力、気配り、IoTなどについて、その取り組みが紹介されています。改革にあたってのWhatやHowがかなり細かくまとめられていた印象でした。