『イノベーションのDNA』(クレイトン・クリステンセン/ジェフリー・ダイアー/ハル・グレガーセン)
『イノベーションのジレンマ』シリーズ。破壊的イノベータに共通する5つのスキルとそのフレームワークを組織やチームに適用する方法について述べられた本書。画期的な製品・サービスを開発した100名近い人物・75カ国500名を超えるイノベータ、5000人を超える企業幹部のデータに裏付けされた研究結果がまとめられており、興味深い内容になっています。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯イノベータを特別な存在にしているもの
①関連づける力
平たく言えば、斬新な発想で物事を考える人は、普通の人が無関係だと考える分野や問題、アイデアを結びつけている。
②質問力
質問の達人で物事の探求に情熱を燃やす。現状に異議を唱えるような質問をよくする。
③観察力
飽くことを知らない観察者。
④ネットワーク力
多様な背景や考え方を持つ人たちとの幅広いネットワークを通じて、アイデアを見つけたり試したりするのに、かなりの時間と労力を費やしている。
⑤実験力
常に新しい経験に挑み、新しいアイデアを試している。
⇨質問力、観察力、ネットワーク力、実験力の4つのスキルは、関連付け思考の呼び水になる。イノベータがこの4つのスキルを人より頻繁に駆使するのは、イノベーションに取り組む勇気を持っているからにほかならない。
◯関連づける力
・強制連想トレーニング
無関係な項目やアイデアをランダムに選び、それが自分の問題とどのような関係がああるか、じっくり考える。要は、物事をランダムに選んで自分の抱える問題と関連づけ、できるだけ自由な関連性を見つける。
・別の会社になりすます
フォーチュン500などのリストからランダムに企業を選ぶ。選んだ企業と自分の会社が提携や合併を通じて新しい価値を生み出す方法について、自由な発想でブレストを行う。
・例えを考える
あなたの会社の製品・サービスを何かに例えてみよう。
・おもしろ箱を作ろう
製品のリスト⇨もし〜だったらの例え⇨考えられる新しい機能/メリット
・スキャンパー
代用、結合、応用、拡大・縮小・変更、転用、除去、逆転・並べ替え
◯質問力
・今どうなのかを質問する。
5W1Hの質問をたたみかけ、表層を掘り下げる。
・「なぜこうなった?」の質問をする
因果関係を明らかにする質問をして、なぜ物事が今のような状態になっているのかを詳しく理解する。
・「なぜなのか?」「なぜ違うのか?」の質問をする
「5回のなぜ」方式は、因果関係を突き止め、革新的な解決策を考え出すことを求める。
・「もし〜だったら」の質問をする
制約を課さない質問/課す質問。
「この社員を採用していなかったら・・」「この機器を設置していなかったら・・」「このプロセスを導入していなかったら・・」「今の可処分所得が半分になったら、自社の製品やサービスをどのように変える必要があるだろう?」「空輸ができなくなったら、商売の方法をどう変えるべきだろう」
◯観察力
・さまざまな状況で人々が「用事」を片付けようとする様子を見守り、彼らが本当に片付けたがっている用事について、ヒントを得る。
・人、プロセス、企業、技術などを観察し、別の状況に適用できる解決策を探す。
・顧客を観察する
何を好み、何を嫌がっているのだろう?生活を楽にしているもの、苦しくしているものはなんだろう?どんな用事を片付けようとしているのだろう?機能的・社会的・感情的ニーズのうち自社の製品・サービスが満たしていないものはなんだろう?
・企業を観察する
多少手を加えれば自社や産業に移転できそうなアイデアはないだろうか?この戦略や戦術、活動は自分の仕事、会社、人生にどういう意味を持つだろうか?自社に取り込めそうな、新しい「誰が」「何を」「どのように」のアイデアはないだろうか?
・琴線に触れたものを観察する
毎日10分何かを集中的に観察する。気がついたことを詳しくメモに残す。
・五感をフルに活用して観察する
◯ネットワーク力
・ネットワークの幅を広げる
新しい着想を得たり、アイデアに磨きをかけたいときに、相談できる相手を10人書き出してみる。
・「食事時のネットワーキング」計画を始めよう
自分と経歴が全く異なる人と少なくとも週に一度は食事をする計画を立てよう。
・来年は少なくとも二度は会議に参加しよう
自分の専門分野と関係のある会議と、無関係なテーマの会議を一つずつ選んで出席する。
・創造の場をつくろう
新しいアイデアを気軽に論じ合え、創造的思考に刺激を与えてくれそうな人を何人か選ぶ。創造を掻き立てる場所を選ぶ。
・外部の人を招く
・合同合宿を行う
◯実験力
・物理的障壁を越える
初めての国、社内の別の事業分野、別の産業の知らない会社など、新しい環境を訪れる。
・知的障壁を越える
全く無関係な分野の新聞、会報、雑誌などを年間購読する。
・新しい技術を身につける
計画的に新しいスキルを身につけ、新しい知識を学ぶ。
・製品を分解する
家の中で使えなくなったものを探すか、ガラクタ置き場や蚤の市に行って簡単に分解できるものを買ってくる。
・試作品を作る
何か改良したいものを選ぶ。改良したらどうなるだろう?
・新しいアイデアを試験的に導入する
実証事件を頻繁に行って新しいアイデアを試し、いつもと違うアイデアを試し、いつもとやり方を変える。
・トレンドを探す
新しいトレンドの特定を専門とする情報源をあたって、新しいトレンドを積極的に探す。
5つのスキルとイノベーションに取り組む勇気。個人としては、ここがベースにあり、それに加えて、『イノベーションのジレンマ』や『イノベーションへの解』にあるような組織の意思決定の仕組みを考えていく。この両輪がうまく回ることが少なくともイノベーションの取り組みが実現していくためには必要。そのうえでの市場における競争。シリーズを読み進めていくと、やはり壮大なテーマであることがわかります。残る『イノベーションへの最終解』を読み終えたら、いつかシリーズ総まとめ資料を作って頭を整理してみたくなる、取り組みがいがある領域です。
イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル (Harvard Business School Press)
- 作者: クレイトン・クリステンセン,ジェフリー・ダイアー,ハル・グレガーセン,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2012/01/18
- メディア: 単行本
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