リデザイン・ワーク(リンダ・グラットン)
『リデザイン・ワーク』(リンダ・グラットン)(◯)
『LIFE SHIFT』で有名な著者の最新刊。グローバルな規模で働き方が変わる現代。本書は、人々がどのような働き方をし、チームや会社の在り方をどのように変えるかを考えるための一冊。「理解する→新たに構想する→モデルを作り検証する→行動して創造する」というサイクルを回しながら新しい働き方を実現できる環境をどのように作るのか。これからの生き方と会社の在り方について考えさせられる一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯コロナ禍の経験から引き出される前向きな材料
①人々のデジタルスキルが高まった
②官僚主義を葬り去ることに成功した
③「柔軟な働き方」がもたらす恩恵と困難が見えた
④「オフ」のスイッチの大切さがわかった
⑤人と人のつながりの重要性が再認識された
◯自社の重要な要素について理解する
①生産性を支える行動と能力
・生産性の4つの要素は、「活力・集中・連携・協力」。業務一つひとつについて、どの生産性の要素が最も重要かを判断する。
②知識の流れと人的ネットワークの仕組み
・働く場所と時間が変われば、人的ネットワークのあり方について影響が及ぶことは避けられない。そこで、社内の人的ネットワークについて知り、新しい働き方がそれをどのように変えるか理解することが重要。
③社員が仕事と会社に期待すること
・長く健康を保つ
・バランスの取れた家庭生活を送る
・機械よりも速いペースで学習できる
・マルチステージの人生に対応する
「3ステージの人生」(敎育→仕事→引退)から「マルチステージの人生」(教育を受けるのが人生の最初のステージだけという時代ではなくなった)へ
④現場で何が起きているのか
・人々が仕事で実際にどのような体験をしているのか?
・生活の側面でパーソナライズ化が進み、仕事をする時も、同様のパーソナライズを期待するようになる。
◯未来の仕事の在り方を新たに構想する
①働く場所と働く時間
・オフィスか自宅か?同時型か非同時型か?
・生産性の4つの要素「活力・集中・連携・協力」にどう影響するか?
②協力の場としてのオフィス
③活力のものになる自宅
・境界線が維持されていれば、ある役割で「オン」の状態にあるときは、別の役割では「オフ」になることが徹底されやすい。その結果、仕事への集中が妨げられにくくなる。
・境界線には、物理的(自宅と職場など)、認知的(子供に持たせるお弁当の心配と仕事の心配の間など)、人間関係(子供の学校のいじめについてと仕事の人間関係など)、時間的(子供の世話をする時間と仕事の時間)
④課題に超・集中する
⑤より良い連携のために
◯モデルを作り検証する
①新しいデザインは未来にも適用するか
・60代以上の人たちの機会を狭めていないか?
・50代以上の人たちのニーズや願望を軽んじてはいないか?
・働き手が新しい働き方に前向きになり、自信を持つためには、自分の職種で自動化がどのように進む可能性が高いかを知らなくてはならない。自動化の進展により必要となる新しいスキルを育む機会と能力があると思えることも重要。
③新しいデザインは公平で正義に適うものか
・一部の人にはうまく機能しているよう見える新しいデザインが、他の一部の人にはうまく機能しないことがある。
→家庭で育児や介護の主な担い手になっている人たち、若い働き手、現場仕事で在宅勤務を選択できない人たち
・公平性と正義に関わる3つのチェックポイント
1)「結果」は公平か?
2)「手続き」は公平か?
3)「意思疎通」は公平か?
◯モデルに基づいて行動し、新しい働き方を創造する
①優れたマネジャーが果たす役割
・マネジャーの時間は細切れ化している。
・マネジャーの4つの思考転換
1)チーム志向の思考様式「チームを成功させるのが私の役割だ」への転換
2)他の人たちと共有しようとする思考様式への転換
3)「私のチームは流動的だ。メンバーが他の部署のプロジェクトで働いたり、他の部署からメンバーを借りたりする」という認識への転換
4)「仕事はどこででもできる。重要なのは、あくまでも業績とプロジェクト、社内外の人材を活用して仕事を行う」という発想への転換
②コ・クリエーションの力
・トップダウン型、危機感を煽る方法、ボトムアップ型以外に「コ・クリエーション」という方法がある。これは、リーダー層が大きな視点と戦略を示し、それを会社の人たちのアイデアや知見やエネルギーと組み合わせる方法。
③リーダーの語り力
・会社が激しい変化の中にあり、人々が不安と恐怖を抱いているときこそ、リーダーの語りが特に重要になる。その際、ストーリーを描くことで人を動かすこと。
④リデザインの4つのステップ
・理解する→新たに構想する→モデルをつくり検証する→行動して創造する
・同じステップを経ても、最終的に得られる結果は、ここの会社によって異なる。自社のシグネチャーモデルを作り出すのは、リーダーの役割。
これからの働き方を経営目線で考える上でとても参考になる一冊でした。コロナ禍で働き方が大きく変化したことにより、良い面も課題も見えてきたタイミングだからこそ、事例も含めて充実した内容でした。
『LIFE SHIFT』からの流れですが、「マルチステージ」の人生と仕事という関係、AIやメタバースなどの技術の進化のなかで、どのように働き、企業はどのように働く環境を変化させ整えていくか、目下の課題であると思います。