現代語 古事記(竹田恒泰)
『古事記』は、天武天皇の勅命によって編纂が始まった現存するわが国最古の歴史書。本書は、現代人が楽しみながら読めるように、『古事記』を現代語に翻訳してもので、原文を省略せず、できるだけ全文を現代語に翻訳することと、原文の趣を残することに留意しながら、初めて『古事記』を読む人が理解できるようにわかりやすく書かれています。以下では、本文よりも注釈などで気になったところをまとめてみます。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯『古事記』とは
・天皇の名により国家が編纂した公的な歴史書。
・『古事記』には、政府見解が書かれていると考えてほしい。そして、歴代政府がこれを否定したことはない。
・3巻のうち、上巻は神の代の物語、中巻は神と天皇の代の物語、下巻は天皇の代の物語。
・『古事記』の目的は、天皇の根拠を明らかにし、それを子子孫孫に伝えること。
・『古事記』を読むことは、天皇の由来を知ることであり、それはすなわち、日本とは何か、そして日本人とは何かを知ること。
・『日本書紀』は正史であり、対外的に用いられていたと思われる。それに対して『古事記』は国内向けに用いられていたと考えられている。
◯『古事記』を楽しんで読むための最大のコツ
・神様と人の名が出てきたらすぐに「忘れること」。なぜなら、『古事記』には夥しい数の神名と人名が現れるが、二度以上登場するのは1割未満しかないから。
◯禊とは
・古くから水には浄化作用があると信じられています。心身の罪や穢れを水で祓い清めることを「禊」と言います。欧米人がたまにしかお風呂に入らないのに対し、昔から日本人はほぼ毎日入浴します。これは禊の文化の名残だと言えます。
・また、神社の入り口近くには、手水舎という、手を洗う場所が必ずありますが、神社参拝の前に手を洗うのも禊です。本来であれば参拝前に全身の沐浴をするところですが、手と口をすすぐことで、全身の禊をしたことにしているのです。人を許すことを「水に流す」と言いますが、これも罪穢れを流す禊からきた言葉です。
・そして、日本の歴史上一番初めに禊が行われた記録が『古事記』の伊耶那岐神の禊。
◯『古事記』で多用する「八」
・八十神の「八十」というのは、実際の八十ではなく、数が多いことを意味しています。古代において奇数よりも偶数が重んじられることと、「八」が最大の偶数であることから、『古事記』では、「八」は縁起の良い数字として多用されています。
◯天皇不親政の原則のルーツ
・『古事記』が描く高天原の統治機構は合議制です。何か問題が起きると八百万の神が議論を重ねて結論を出し、その結論に従って天照大御神が詔を渙発なさいます。
・高天原における意思決定の方法は、天皇の統治にも踏襲されています。実際のところは、天皇の統治の方法は『古事記』の高天原の統治に投影されたと考えるべきでしょう。天皇が直接政治を行わないことを「天皇不親政の原則」と言います。確かに天皇の下に地方の豪族たちが束ねられたのが大和朝廷で、古代から合議制で国を運営していました。その後、時代が降っても天皇不親政の原則は継承され、飛鳥時代・奈良時代・平安時代はもとより、武家政権の時代と帝国憲法下、さらには日本国憲法下においてもこの原則は守られてきました。
・天照大御神は邇邇芸命が降臨するときに、鏡・勾玉・剣の三点を賜いました。このうち、鏡は別格で、天照大御神が「この鏡は、私の御魂として、我が身を拝むように祀りなさい」と仰せになったことから、天照大御神の御魂が宿る特別なものとされています。
・三種の神器は天皇の皇位の証であり、三種の神器の授受は皇位継承の重要な要素です。『古事記』のこの部分の記述については、後の神武天皇即位について三種の神器の継承が記載されていないことから、三種の神器の起源を語っているわけではないとも言われていますが、私はそうは思いません。天照大神が邇邇芸命に神器を下賜あそばしたのには、必ず意味があるはずです。これらの神器は、葦原中国の統治に必要不可欠なものに違いありません。後に邇邇芸命の孫が初代天皇に即位あそばされますので、邇邇芸命の三種の神器は必ず神武天皇に受け継がれるはずです。
・もし『古事記』が神武天皇即位の場面を記述していて三種の神器に関する記事が欠落しているならともかく、『古事記』には神武天皇御即位の場面そのものが書かれていません。ですから、神武店の御即位について三種の神器の継承が記されていないからと言って「『古事記』は三種の神器の起源を語っていない」ということにはなりません。
・神代に作られた三種の神器は、天皇が天皇であることの証であり、天孫によって高天原から葦原中国持ち込まれ、歴代天皇によって承継され、現在に至ると考えなくてはなりません。
正直最後まで目を通すのがやっと。理解とはほど遠い状態ではありますが、この本を完読するのに2回挫折し、購入から1年以上かかりました。現代につながる起源のような部分には興味が湧きますし、次は講義版か漫画版でもう少しイメージを持ちながら、読んでみようと思います。「はじめに」で「登場人物の名前を忘れること」という記載があり、これに助けられました。とても覚え切れません。まずは流れ、全体イメージからですね。