MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

老いる勇気(岸見一郎)

老いる勇気』(岸見一郎)

 『嫌われる勇気』の著者としても有名な著者。アドラー心理学に関する著書を多数執筆されています。本書は、「老い」に着目し、身体機能の衰えは避けられない一方、多くの知見・経験を活かし、いかに幸せな人生を送るかということについて、著者の視点をまとめた一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯進化の方向

・人間はいくつになっても進化できる。ただし、注意しなければいけないのは、どこに向かって進化するかということ。アドラーのいう進化は、上ではなく「前」に向かっての動きを指しています。つまり、誰かと比べて「上か、下か」という物差しで測るのではなく、現状を変えるために一歩前に踏み出すということ。

 

◯「引き算」ではなく「足し算」で生きる

・確かな変化・前進の手応えはあるのに、それを喜ぶことができず、夢や目標を投げ出してしまう原因の一つが、「引き算」思考。理想の自分からの引き算で今の自分を見てしまう。

・この「引き算」思考は、モチベーションに大きく変化する。他者との比較だけでなく、理想の自分と比べないことも重要。

・例えわずかな進歩であっても、プラスの部分に注目する。理想からの減点法ではなく、自分が積み上げてきたことを加点法で評価する目を持つことが、アドラーのいう「健全な優越性の追求」には必要。

 

◯「でも」

・「でも」が口癖になっていませんか?「でも」の壁を越えなければ、前に進むことはできない。

 

◯病気は「生き直す」きっかけ

・病気をすると昨日までの幸福を、文字通り”痛感”する。大切なのは、その気づきや体験を、その後の人生にどう活かしていくか。病気は生き直す契機になる。

・余命は誰にもわからない。この事実は変えられない。変えられるのは、私たち自身の意識です。老いる勇気・・老いた「今」を幸せに生きる勇気とは、人生の見方をほんの少し変える勇気なのかもしれない。

 

◯執着(『人性論ノート』三木清より引用を含む)

・普通は執着するものがあると死ねない。死んでも死にきれない、と思うもの。しかし、三木は「執着する何ものもないといった虚無の心では人間はなかなか死ねないのではないか」と問いかけ、「深く執着するものがある者は、死後自分の帰ってゆくべきところを持っている」という。

・深く執着するものがあると、それは生きる力になる。同時に、それは死ぬ力にもなる、と三木は言っている。「帰ってゆくべきところ」とは、思いを残した人のこと。不老不死の妙薬はなくとも、心を尽くし、深く執着しながら今をしっかりと生きていれば、大切な人の心の中で人は生き続けることができると言っている。

 

◯おとなの3つの条件

①自分の価値を自分で認められる。

②自分が決めなければならないことを、自分で決められる。

③自己中心性からの脱却

 

◯ありのままの親を受け入れる

・他者の評価・承認を求めず、自分と親との課題をきちんと分けて考え、親は自分の理想や要求を満たすために生きているわけではないと知る。3つの要件を満たした”おとな”になることは、ありのままの親を受け入れることができるようになるということでもある。

・様々なことができなくなる親の姿を見ることは辛いこと。我が身の行く末を見ているようで、思わず目をそらしたくなることもあるかもしれない。しかし、失われたものや「できなくなった」ことではなく、今「できる」ことに注目し、できるのに「やろうとしない」としたら、それは、親の意志、選択だと受け止めたい。目の前の親を、こうあって欲しいという「理想の鏡」や、元気だった「かつての親」と比べない。それだけでも、接し方は大きく変わるはず。

 

◯「できる」ことに焦点を当てる

・人生にはいろいろなことがある。「今、ここ」に焦点を当てる生き方ができていれば、自分はこれまでもそうやって最善を尽くし、一所懸命に生きてきたと思えるし、そう思えば、きっと失敗も許せると思う。

・過去が変わることはありませんが、違う部分に、違う角度から焦点を当てて、過去を見ることができれば、自分を攻めて後悔の海で溺れることはないはず。

 

◯生産性という価値観を手放す

・定年後に新たな対人関係をうまく築けない理由の一つは、人の価値を「生産性」に見ることをやめられないから。何かをできるかできないかで、人の価値を判断してしまう。仕事の土俵上には、他者との競争がある。こうした土俵でしのぎを削っていると、知らず知らずのうちに自分の価値まで生産性で測るようになっていく。

・仕事の土俵を降りたならば、まずは意識して「生産性」という価値観を手放すこと。それができなければ、趣味や地域の活動など、何か新しいことを始めようとしても、「新参者だから、自分は役に立たない」「上手な人ばかりで、自分だけ下手なのは面白くない」と、始める前から自らのやる気を自分で手折ることになる。

 

◯勇気

 アドラーは、「自分に価値があると思う時にだけ、勇気を持てる」といっている。勇気には2つの意味がある。

①課題に取り組む勇気

②対人関係に入っていく勇気

 

アドラーが教える「人生の意味」

・「人生の意味は、貢献、他社への関心、協力である」

・「他者を愛することによってのみ、自己中心性から解放される」。他者を愛することによって、初めて「共同体感覚」にたどり着くことができる。

・共同体感覚とは、「私」を主語として物事や人生を考えないということ。重要なのは、「私」ではなく、「私たち」を主語にして考えられるかどうか。

 

◯異論があっても考え続ける

・圧力をかければかけるほど、相手は反発する。力に訴えても、問題は根本的に解決することはできない。対人関係において私たちにできることは、相手を尊重し、多様性を受け止めて、不断に対話を続けていくこと。

・人が「ちゃんと話を聞いてもらえた」と感じるのは、①話を途中で遮られないとわかった時、②この人は決して批判しないとわかった時。

 

 年を重ねると考え方も変わってきます。人によると思いますが、親が老いていく姿を見ながら「死」というものがぼんやりと意識化されていくことが大きいかなと思います。時間を大切にしなければならないと思ったり、漠然と不安を感じたり。今まで積み重ねてきた時間も長いので、コンフォートゾーンから抜けるのが億劫になるので、チャレンジを避けがちになる。いろいろあると思いますが、自分の人生をどう生き切るか。そう思うと、やはり、未来を描きながらも、「今ココ」を大切に生きることが重要だなと思います。

老いる勇気 これからの人生をどう生きるか

老いる勇気 これからの人生をどう生きるか

 

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