『幸福論(NHK100分de名著ブックス)』(著:ラッセル、解説:小川仁志)(◯)
最近、コーチングで「幸せ」をテーマにすることが立て続いたので、読む本も「幸せシリーズ」にしてみようと思って手に取った本書。世界3大幸福論の1冊です(他に、アランの『幸福論』、カール・ヒルティの『幸福論』)。
著者は、英国の哲学者バートランド・ラッセル(1872〜1970)。
2部構成になっており、第1部では不幸の原因分析、思考をコントロールすることでその原因を取り除く解決策を提示しています。第2部では、自分の関心を外に向けつつ、同時にバランス感覚を忘れないようにすることで幸福になる術を提案しています。
これは、自分の感覚ともピタッときて読んでいて気持ちのいい内容でした。まとめ上手な「100分de名著シリーズ」の良さが出ていて、エッセンスが理解しやすい一冊でした。一度、岩波文庫の本書を読みましたが、忘れている部分も多く、今回は整理体系立てて理解できたので、また岩波文庫を引っ張り出したくなりました。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯不幸の最大の原因は「自己没頭」
1)罪びと
罪びととは、罪の意識にとりつかれた人。
2)ナルシスト
ナルシストとは、自分自身を賛美し、人からも賛美されたいと願う習慣を持つ人。
3)誇大妄想狂
誇大妄想狂とは、魅力的であるよりも権力を持つことを望み、愛されるよりも恐れられることを求める人。
◯不幸の具体的な要因と対応策
①バイロン風(ペシミズム=悲観主義)の不幸
⇨行動を起こす
・負のループから抜け出すためには、もうそれ以上考えるのではなく、むしろ行動を起こす必要性に目を向けるより他ない。
②競争
ある一点までは幸福をもたらすが、その一点を越すと不幸になる。成功は幸福の一つの要素に過ぎない。
⇨人生のバランスをとる
・バランスのとれた人生の理想の中に、健全で静かな楽しみの果たす役割を認めること。
③退屈と興奮
人間は現在の状況と想像上のもっと快適な状況とを対比することで、退屈を感じてしまう生き物。「退屈」の反対は「快楽」ではなく「興奮」。幸福になるためには、ある程度退屈に耐える力を養う必要がある。
⇨退屈を楽しむ、退屈を味わう
・大地のリズムの中に生きる喜びを感じる。
④疲れ
神経の疲れが重要。心配からくる疲れこそ、人を不幸にする元凶。
⇨悩みを宇宙規模で考える。無意識へ働きかける。
・考えるべきことと、そうでないことを選別する。
・考えるべきことを考え、一度決断を下したら、新しい事実が出てきた場合を除いて、その決断を修正してはいけない。優柔不断は心身を疲れさせる。
・悩みの原因がいかにつまらないかを悟れば、心配事を減らすことができる。
⑤妬み
妬みが人不幸にするのは、「自分の持っているものから喜びを引き出す代わりに、他人が持っているものから苦しみを引き出している」から。
⇨比較をやめる。不必要な謙遜をやめる。
・根本的な解決策として、めいいっぱい楽しむこと。
⑥罪の意識
「おとなの生活の不幸の根底にある心理的な原因」・罪の意識は子供の頃に形成され、大人になってからも人を縛る。この罪の意識が無意識まで入り込んでいる場合、一段と根の深いものになるとして、その原因を幼児期の道徳教育の中に見出している。
⇨理性によって精神を統一する(無意識レベルまで)。
・無意識に働きかけることで、意識的な考え方を支配している合理的な信念に注目させる必要がある。
⑦被害妄想
病気であり、大なり小なりほぼ全ての人がかかっている。周りが道場をしなくても、自分は被害者だという思いをどんどん強めていく。
⇨4つの公理を理解する。
1)あなたの動機は、必ずしも自身で思っているほど利他的でない。
2)あなた自身の美点を課題評価してはいけない。
3)あなたが自分自身に寄せているほどの大きな興味を他の人も寄せてくれるものと期待してはならない。
4)大抵の人は、あなたを迫害してやろうと特に思うほどあなたのことを考えている、などと想像してはいけない。
⑧世評に対するおびえ
自分が他人にどう思われているかを気にするということ。「ほとんどの人は、自分の生き方や世界観が自分と社会的関係を持っている人びと、とりわけともに生活をしている人びとから大筋において是認されるのでない限り、幸福になれない。
⇨環境を変える。世評を無視する。
・人の意見を尊重しすぎていると幸福にはなれない。
◯思考のコントロール
・思考のコントロールとは、「ある事柄を四六時中、不十分に考えるのではなくて、考えるべき時に十分に考える」習慣。
◯幸福になる具体的方法
1)バランスのとれた熱意(4つの枠組み収まるものでなければならない)
①健康、②人並みの能力、③必需品が買えるだけの収入、④妻子への義務
2)バランスのとれた愛情と家族
「愛情⇨自信⇨安心⇨熱意⇨幸福」
・最上タイプの愛情
a)相互に生命を与え合うもの
b)一つの幸福を共有する結合体だと感じる愛情
3)バランスのとれた仕事
・「技術の行使」
もうこれ以上は上手になれないというところまで、その技術を行使することを楽しむ。
・「建設性」
作るという作業には、完璧な完成がないため、目的をずっと追い続けることができる。
4)私心のない興味=趣味をもつ。
①気晴らし⇨疲れを取る
②釣り合いの感覚を保つ(仕事とのバランス)
③悲しみを癒す
5)努力とあきらめ
「絶望」ではなく、「不屈の希望」
◯幸せな人とは
1)客観的な生き方をし、自由な愛情と広い興味を持っている人
2)自分と社会とが客観的な関心や愛情によってつながっている人
⇨個人が幸福になるためには、社会も幸福(平和)でなければならない。
本書を読んで、自分がかなり幸せ思考であることが確認できました。どうりでストレスが少ないなぁと思っていましたが、「チャレンジしていないのではないか?」とマイナス思考に入りそうなことがありますが、そんな必要は全然ないと気づいただけで、また幸せを実感しました。
「幸せ」についてのコーチング、1on1トーク、読書会など、こういうのも面白い実践テーマかと思いました。
ラッセル『幸福論』 2017年11月 (100分 de 名著)
- 作者: 小川仁志
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/10/25
- メディア: ムック
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