『マッキンゼー プライシング』(編著:山梨広一・菅原章)
2005年発行の本書は、10章立てになっていて、そのうち2〜9章がマッキンゼーのチームによる論文集となっています。したがって、自分が気になるテーマから拾い読みが可能であり、効率的に読めます。「マッキンゼー×論文」という固いイメージはありますが、オーソドックスな考え方がまとめられています。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯優れた価格マネジメントを行う組織能力を身につける3つのポイント
①マインドセットの転換
競合の動きや顧客の声に着実に反応していくだけが優れた価格戦略でなはないと認識することが、不可欠な第一歩。
②総合的な判断を下す前に事実に基づき分析的かつ論理的な検討を尽くす
・最新の重要事実の把握
・直感・定石・経験値に頼りすぎず、重要な点は実際に分析する
・多面的判断
③経営的、組織的判断
◯スタティック・バリュー・マネジメント
・カスタマーバリュー=認知便益ー認知価格
顧客認知価格(縦軸)と顧客認知便益(横軸)で考えると、価値均衡線(VEL)が45度に引かれる。
◯ダイナミック・バリュー・マネジメント
・VEL上でのポジショニング変更時の検討ポイント
①リスクと市場機会を把握し、比較検討する
②変更する商品属性を賢く選択する
③ある商品属性を変えたら価格水準はどの程度が適切かを検討する
④競争相手の望ましくない反応を抑制できるようなポジショニングを選ぶ
⑤VEL上で新しいポジショニングを決める
・VELから離脱するのは、明らかにリスクの高い戦略である。顧客は本当は何を望んでいるのか、競合はどう対応してくるのか、競合の行動で需要動向はどう変化するのか。これらの点をきちんとチェックしておかないと、期待した利益は画餅と化す。
◯1%効果
・S&P1500構成企業の平均的な財務諸表を例にとると、価格を1%引き上げて売上数量が同じであれば、営業利益は8%増える。原料費や人件費などのコストを1%切り詰めた場合と比べ、利益に与える値上げの効果は1.5倍近く大きい。また、売上数量を1%増やしたときと比べれば、効果は3倍以上になる。
◯最低なプライス・バンドを考える
・あるカテゴリーの消費量が大幅に拡大可能と見込まれ、かつ自社商品のブランド力も高い場合には、プライス・バンドを広くとるべき
・カテゴリー全体としては拡大可能だが、自社製品に強力なブランド力が備わっていない場合は、プライス・バンドを狭くとり、通常価格を中程度に設定して、ほどほどの販促を行うのが正解。ブランド力のない商品に高めの価格を設定するのは賢明ではない。
・商品自体のブランド力はあるが、カテゴリーの拡大可能性は低い場合は、プライス・バンドを狭くし、販促も手控えること。この種の商品を値下げしても、長い目で見れば得られるメリットは小さい。
・最適なプライスバンドがわかったら、実際に市場で実行する前に、次の4点を検討する。
①通常価格の設定(どの程度の水準にするか)
②プライス・バンドの下限の設定(通常価格からどの程度なら値引きしてもいいか)
③効果的な販促手法の選択
④販促の頻度の設定
◯新製品のプライシング
・上乗せ方式だと価格帯の下限に目が行きがちだが、むしろ企業は上限を決めるところから始めるべき。
・上限を決めるには、顧客にとっての製品の価値を正しく理解しなければならない。
・コストプラス方式は、単純すぎるとして軽視されるきらいがあるが、価格幅の下限を決める際には基本となるやり方。「単位原価+マージン」。
・発売価格から値引きその他の販売奨励金を差し引いた価格は、メーカーがその製品の真の価格を考える価格として、市場の最初の基準となる。
◯プライシングの4つの要素
①競合の価格
②顧客のスイッチ率
③カスタマー・バリュー
④サービス提供コスト
◯実行に向けたボトルネック
①実行への意思決定の躊躇
②実行徹底の甘さ
③他の施策との不整合
稲盛和夫さんが「値決めは経営」とおっしゃるくらい、企業の意思決定の大きな要素。そして、難しい要素。価格を変更しづらい製品・商品の場合は特にそうですね。一方、コンサル業やセミナー業のように、価格があるようでなくて、価格帯が柔軟に変えられるような場合は、価格を柔軟に変えつつ市場の反応を見て、走りながら考えることも可能ですね。いずれにしても、価格決定にはポリシーが求められますね。利益を決める大きな要素なので、しっかり考えたいものです。
マッキンゼー プライシング (The McKinsey anthology)
- 作者: 山梨広一,菅原章,村井章子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2005/02/03
- メディア: 単行本
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