MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ヒトはなぜ先延ばししてしまうのか(ピアーズ・スティール)

『ヒトはなぜ先延ばししてしまうのか』(ピアーズ・スティール)(◯)

 「先延ばし」について研究し続けていらっしゃる著者。先延ばししてしまうということは、多くの方にとって「あるある」ではないでしょうか。本書を読むと、「習慣化」や「タイムマネジメント」と関連するテーマだなと思います。

 なぜ先延ばしが起きてしまうのか、そして、どのようにすれば先延ばしを防ぐことができるのか。日常に取り入れるという観点からもとても興味深い一冊でした。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯先延ばしの方程式

・モチベーション=(期待×価値)÷(衝動性×遅れ)

・期待:ご褒美を得られる確実性

・価値:ご褒美の大きさ

・衝動性:遅れへの敏感さ

・遅れ:現在と未来のものを比べると、現在の価値を大きく、未来の価値を小さく感じてしまうこと。

 

◯「期待」に対する先延ばし対策

・簡単すぎる課題に対して、あまりモチベーションがわかない。一方、どうせ成功しないとわかっているのに、わざわざ努力をする必要などないと考えてしまう。マイナス思考の悲観主義と能天気な楽観主義の適度なバンランスを取ることが大切。

・興味ある事柄を選び、自分の現在の能力を少しでも高めるよう努力してみる。その分野で成果を上げて自信が深まれば、他の分野でも難しい課題に取り組めるようになる。

・うんざりするような課題をなるべく小分けにする。進歩の度合いを記録に残し、成功を積み重ねていく。

・多くの成功物語に触れてモチベーションを掻き立てる。

・理想と現実のギャップをくっきりと際立たせること。ギャップを埋めるために行動し始めると、先延ばし癖は消し飛ぶ。やるべきことが明確になるとやる気が湧いてくる。

・失敗を計算に入れ、ピンチからの復旧プランをあらかじめ用意しておく。

・先延ばし癖を自覚し、一度でも先延ばしをすれば、その後もずるずると自分に先延ばしを許すことになる。

 

◯「価値」に対する先延ばし対策

・単調な苦役は退屈。ゲーム感覚と目的意識を持つこと。

・退屈を和らげるには、課題をもっと手強くすれば良い。ただしあまり難しくしすぎると気持ちが挫けてしまう。

・「何を避けたいのか」(=回避目標)ではなく、「何を実現したいのか」(=接近目標)という形で長期の目標を決めること。つまり、「失敗したくない」ではなく、「成功したい」と考える。回避目標は、接近目標に言い換えること。

疲労は先延ばしを生む最大の原因。エネルギー戦略として、午前中や昼前後の最も能率がいい時間帯に、最も難しい課題に取り組む。空腹にならないようにする。週に何日かはエクササイズをする。規則正しく睡眠を取る。自分の限界を認識する。

・生産的先延ばし:最重要課題を先送りする代わりに、副次的課題を処理する。

・ご褒美効果:成功すれば楽しいことが待っていると思うので、課題に取り組むのが楽しくなり、課題が楽しくなる結果、ますます成功の確率が高まる。

 

◯「衝動性」「遅れ」に対する先延ばし対策

・意志の弱さが原因で生じる問題には、ことごとく衝動性が関係している。

・プレコミット戦略:誘惑が目の前に近づくと、その誘惑に対して感じる欲求が極限まで高まる結果、私たちは誘惑に屈し、将来に恩恵をもたらす懸命な行動が取れなくなる。強力な誘惑が待っていると事前にわかれば、誘惑を跳ね除けるための対策を講じられる。「空っぽの胃袋でスーパーマーケットに行くな」というようなもの。意志力の力を発揮したければ、その前に基本的な欲求を満たしておくこと。

・重要なのは、誘惑の対象をなるべく具体的に認識しないようにすること。曖昧でぼんやりした印象で認識できればいい。「直観は鋭く、視覚は弱い。戦略においては、遠くのものを近くにあるように見て、近くのものを遠くにあるようにみることが重要。

・整理整頓ができておらず、物が散らかっている職場は、誘惑の地雷原。

・目指すべきゴールを思い出させてくれるキューを用意する。

・何を成し遂げるべきかを具体的にし、ゴールを達成できたときに自分でわかるようにしておく。超短期のミニゴールは、最初の壁を破る上で非常に有効な場合がある。

 

 

 やはり時間に限りはあるわけで、先延ばししているものを先延ばしせずにすぐにやろうとした場合、今やっている何かを止めることが必要になります。「今やっている何か」の重要度、そして優先順位をどう考えるかということを考えさせられる一冊でした。

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