MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

企画力(田坂広志)

『企画力』(田坂広志)<2回目>(◯)

 久しぶりに読み返しましたが、やはり良書だと感じました。『企画力』というタイトル通り、何かを企画し、企画書にまとめて、相手に伝える。この一連の流れをスキルの側面ではなく、心構えや心理面からアプローチし、企画する上で本当に大切なものは何か?を探求した一冊です。資料作成のテクニックやプレゼンスキルでは到達できない領域に到達するために必要なものを感じ取り、実践で活かし、実践の質を高める複利効果のある内容は、田坂先生ならではの領域だと思います。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯企画力とは

・人間と組織を動かす力

・「企画を立案する力」のことではなく、「企画を実践する力」

→採用されなかった企画書は紙屑にすぎない。

・企画とは、実行されて初めて、企画と呼ぶ(知行合一の世界)

・世の中には、ビジョンや政策、戦略だけを語って「企画」と考える方々が少なくない。理論先行型コンサルタントや知識偏向型コンサルタントは、体験の乏しさや無意識の無責任さ(企画の実行と実現まで責任を取り切る覚悟に欠ける)から、「言葉」が軽くなってしまう。

 

◯どのようにして、人間や組織を動かすのか

・「企画」という営みにおいて最も大切なことは、「魅力的な物語」としての「企画書」を創ること。企画力は、物語のアートでもある。

・企画書とは、何々と見つけたり。

・アートとは、技術と心得の結合。

・最高の企画書とは、最高の推理小説である。

 

◯企画書

・企画には、「企み」という字がある。企みとは、世の中をより良きものに変えること。

・若手社員に企画書を書いてもらうと、多くは、企画書ではなく、計画書を書いてくる。企画と計画の区別がついていない。企みがないと企画書ではない。企みが面白くないと、企画書は面白くない。

・企画書においては、企みを語ること。企みを面白く、魅力的に語ること。しかも、単に夢を語るのではなく、夢を現実に変えていくための企みを語ること。

・人間が面白くないと、企みを面白く語れない。

 

◯何を行うかよりも、なぜ行うかを語る

・「企画書」はなぜ行うかという企みを語る。「計画書」は何を行うかの詳細を語る。

・企画書は、表紙のタイトルが勝負。タイトルで「企み」を語ること。タイトルを見た瞬間に、ページを捲りたくなるか。

・スピーチに例えるなら、「聴衆が期待を持ったなら、そのスピーチは既に半分は成功している」(スピーチの極意として語られる格言)

・最も大切なことは、言葉の選び方ではなく、「信念」と「情熱」必ず成功するという信念。なんとしても実現したいという情熱。

 

◯これから何が起こるのかという「ビジョン」を語る

・表紙を捲った最初のページで語るべきは、「ビジョン」。語るべき「ビジョン」は性的なものではなく、動的なイメージである「これから何が起こるのか」。

・「企み」を提案する理由の説得力を高めるため、「なぜそのような企みが必要なのか」「なぜそのような企みが有効なのか」を語ること。

 

◯企みを戦略に翻訳する

・企画書の第2ページでは、表紙のタイトルで短く語った「企み」をもう一度明確な言葉(構造化された目標)で語る。

・企みを目標に翻訳する。企みをより具体的に表現された「複数の目標」として語る。

 

◯ここまでのまとめ

・表紙のタイトル:企みを短く、力強い言葉で語る

・第1ページ:その企みの背景にあるビジョンを語る

・第2ページ:表紙で語った企みを目標に翻訳して語る

・第3ページから、この目標を戦略へ、戦略を先述へ、戦術を行動計画へと順を追って翻訳し、語っていく。

 

◯三の原則を用いて企画書を削る

・欲張り企画書を止めること。欲張り企画書は、「書き手中心」の企画書

①第一の原則:読み手は、一瞥して目に入る文字しか読まない。

②第二の原則:読み手の思考は、立体的ではなく、直観的である。

③第三の原則:三の原則を活用する。

 3つという項目が、読み手や聞き手にとって、わかりやすく、覚えやすく、印象に残るから。

 

◯企画書は一人歩きする

・企画書とは、顧客企業の担当者を説得するものではない。企画書とは、顧客企業の組織を説得するものである。

・企画書とは、一人歩きするものと思うこと。企画書とは、一人歩きしても、説得力を発揮するものとすること。

 

◯顧客企業の担当者は同志である

・企画書を、その担当者が社内を説得しやすいものに進化させていく。

・企画書とは、その担当者を説得するための資料であるが、社内を説得するための資料でもある。

・どうすれば、この企画書を、さらに説得力のあるものに変えていけるか、さらに使いやすいものに変えていけるか。その視点で、担当者と知恵を出し合うべき。

 

◯表の企画書だけでなく、裏の企画書を作る

・社外ではなく、社内を向いた企画書を作る。

・顧客企業の担当者が、提案したプロジェクト企画を社内で実行していくときにも必要なのが社内戦略。「担当者の社内での仕事を手伝いたい」「その仕事にできる限り協力したい」そうした姿勢こそ、同志との共感が深まり、同志との共同作業が始まる。

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