『実践経営哲学』(松下幸之助)<2回目>(◯)
言わずと知れた経営の神様、パナソニックの創業者。本書は昭和53年に発行されました。著者の60年間の事業体験を通じて培い、実践してきた経営についての基本の考え方、いわゆる経営理念、経営哲学がまとめられた一冊です。名経営者がどのような考え方で経営に臨んできたのかを学ぶことができる貴重な書籍です。これが500円ちょっとの価格で買えるというのは、発行所:PHP研究所さんのご努力もあると思いますが、著者の経営の考え方が多くの人に読まれ、広がっていくといいなという思いが伝わってきます。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯経営理念の大切さ
・この会社は何のために存在しているのか。この経営をどういう目的で、どのようなやり方で行なっていくのか。
・経営の健全な発展を生むためには、経営理念を持つことから始めなくてはならない。
・昭和7年のことであったけれども、一つの経営理念を明確に持った結果、それ以前位比べて非常に信念的に強固なものができた。従業員に対しても、得意先に対しても、言うべきことを言い、なすべきことをなすという力強い経営ができるようになった。従業員も私の発表を聞いて非常に感激し、いわば使命感に燃えて仕事に取り組むと言う姿が生まれてきた。一言で言えば、経営に魂が入ったと言ってもいいような状態になった。
・本当の経営理念の出発点というものは、社会の理法、自然の摂理というところにある。
◯人間観を持つ
・経営を適切に行なっていくためには、人間とはいかなるものか、どういう特質を持っているのかということを正しく把握しなくてはならない。言い換えれば、人間観というものを持たなくてはならない。正しい経営理念というのは、そういう人間観に立脚したものでなくてはならない。
◯共存共栄に徹する
・ひとりその企業だけが栄えるというのではなく、その活動によって、社会もまた栄えていくということでなくてはならない。
・共存共栄ということは、相手の立場、相手の利益を十分考えて経営をしていくということ。
・お互いに適正な競争は大いにやりつつも、過当競争はいわば罪悪として、これを排除しなくてはならない。特に資本力の大きな大企業、業界のリーダー的な企業ほどそのことを自戒しなくてはいけない。
◯世間は正しいと考える
・ここの人をとってみれば、いろいろな人がいて、その考えなり判断がすべて正しいとは言えない。また、いわゆる時の勢いで、一時的に世論が誤った方向へ流れるということもある。しかし、そのように個々には、あるいは一時的に過つことがあっても、全体として、長い目で見れば、世間、大衆というものは神の如く正しい判断を下すものだと私は考えている。
・経営のやり方に誤ったところがあれば、それは世間から非難されたり、排斥されたりすることになる。そのかわりに、正しい経営をしていれば、世間はそれを受け入れてくれる。
・リンカーンは「すべての人を一時的に騙すことはできるし、一部の人をいつまでも騙しておくこともできる。しかしすべての人をいつまでも騙し続けることはできない」と言っているという。彼は政治家としてこういうことを言ったのだろうが、経営についても全くその通りである。真実をありのままに知ってもらうということが、長い目で見て一番大切なこと。
企業を永続させるために必要な根本的なことが述べられています。企業規模が大きくなるほどより多くの人や社会との関わりが増えていく中で、創業当時とは違った高い視座から経営を考えるように変化されてきたのかなぁと想像しながら読みました。こういう視座・視点からの言葉は経営者だからこそ出てくるのだろうと思います。