MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

プラットフォーム戦略-21世紀の競争を支配する「場をつくる」技術[Kindle版] (平野 敦士カール, アンドレイ ハギウ)

プラットフォーム戦略-21世紀の競争を支配する「場をつくる」技術[Kindle版](平野 敦士カール, アンドレイ ハギウ)

 

 本書は、プラットフォーム戦略とはいったいどういうものなのか、なぜいま注目を集めているのか、どうすれば勝つためのプラットフォームができるのか、そしてプラットフォームの横暴やワナとは何か、今後電子書籍などの新しいプラットフォームにどう対処すべきか、さらには日本企業復活の処方箋について解説されています。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇「プラットフォーム戦略」

①多くの関係するグループを「場」(プラットフォーム)に乗せ、②マッチングや集客などさまざまな機能を提供し、③検索や広告などのコストを減らし、④クチコミなどの外部ネットワーク効果を創造する ことで、新しい事業のエコシステムを構築するという戦略。

 

〇プラットフォーム戦略の特徴

①2つ以上のグループを結びつける

②あるグループは他のグループを必要としている

③グループ単独では得られない価値を創出している

④グループ間での相互作用によって外部ネットワーク効果(いわゆるクチコミ)を誘発し、新しい価値を創造する仕組みを担っている

→プラットフォーム戦略とは、多くの関係するグループを「場」(プラットフォーム)に乗せることによって新しい事業のエコシステム(生態系)を創造する戦略。

 

〇プラットフォームの留意点

 プラットフォームに参加する以前に自社の戦略を決めておくことが非常に大切。例えば、レコードレーベル各社は、当初インターネットにおける著作権侵害の楽曲配信に対して危機感を持ち、優れた著作権管理ソフトをもったコンピュータメーカーであったアップルのプラットフォームに飛びついた。その結果、アップルはいまや全米で最大の楽曲販売大手になり、レコードレーベル各社は、もはやアップル抜きに自社の戦略を構築できなくなりつつある。つまりアップルのプラットフォームに依存せざるをえなくなり、もし仮に、アップルが一方的に手数料を2倍に上げると通達しても、おそらくやむなく従わざるをえない。「顧客」というもっとも大切な資産を握られてしまったから。

 

〇プラットフォームの5つの機能

①マッチング機能

②コスト削減機能

 各グループが個別に対応していては時間もコストもかかる機能を提供する機能

③検索コストの低減機能(ブランディング・集客機能)

 プラットフォームが一種の安心感、ブランドをユーザーに提供し、製品・サービスの質に一定のレベルを担保する機能

④コミュニティ形成による外部ネットワーク効果・機能

 ウィルスのようにクチコミが波及していくという意味でのバイラル効果によって、参加しているグループ内での信頼情報の醸成やグループ間での情報の相互流通が起こることで、プラットフォームへの「粘着度」が増していくことに寄与する機能。

⑤三角プリズム機能

 三角プリズム機能とは、光の反射する方向を変えるプリズムのように、通常では直接に相互作用が及ばない2つ以上のグループを結びつける機能。

 

〇プラットフォーム戦略が注目されている4つの理由

①技術進歩の速さ

 技術革新のスピードが従来に比較してあまりにも速くなってしまったために、1つの企業ですべてのサービスを提供するよりも、技術をもっている企業とのアライアンス(提携)を行うほうが効率的かつスピーディに対応できる。

②顧客ニーズの多様化

 人々のニーズは非常に多様化しているので、1社の力だけでそれらのニーズに応えることは簡単なことではなくなってきている。そうした多くのニーズに迅速に対応できる企業だけが生き残ることができる過酷な競争環境では、他社の力を上手に借りる、という考え方が非常に大切になった。

③ITの進化による外部ネットワーク効果の迅速かつ広範な拡大

 インターネットの普及、定額制、料金の低下、ブロードバンド化による双方向コミュニケーションの拡大、サーバーコストの低減、さらに情報家電化などにより、取引コストが劇的に低下したことによって、外部ネットワーク効果が働くようになった。

④デジタルコンバージェンスの進化

 デジタルコンバージェンスとは、音楽や映像コンテンツ、コンピュータ、家電、ソフトウェアなど多くの産業の垣根が取り壊されていき、再び新しい産業へと「収斂」(コンバージェンス)していくという意味。

 

〇勝てるプラットフォームの3つの特徴

①自らの存在価値を創出すること(検索コストと取引コストを下げる)

 クレジットカードの例でお話したように、あなたの会社のプラットフォームが存在することによって、それがなかった場合と比較して、新しい価値を参加する複数のグループに与えることが重要。

②対象となるグループ間の交流を刺激すること(情報と検索)

 あなたの会社のプラットフォームに参加しているグループ内、グループ間でいわゆるクチコミが広がっていくことが重要。

③統治すること(ルールと規範を作りクオリティをコントロールすること)

 そのプラットフォームがもつ特徴と、集まっているグループのクオリティが一定であることを維持、進化させていくことが大切。

 

〇プラットフォーム構築の9つのフレームワーク

事業ドメインを決定する

②ターゲットとなるグループを特定する

③プラットフォーム上のグループが活発に交流する仕組みを作る

キラーコンテンツ、バンドリングサービスを用意する

価格戦略、ビジネスモデルを構築する

⑥価格以外の魅力をグループに提供する

⑦プラットフォーム上のルールを制定し、管理する

独占禁止法などの政府の規制・指導、特許侵害などに注意を払う

⑨つねに「進化」するための戦略を作る

 

〇「プラットフォームの横暴」と呼ばれる典型的なパターン

①利用料の値上げリスク

②プラットフォーマーによる垂直統合リスク

③プラットフォーマーが顧客との関係を弱体化させるリスク

 

〇プラットフォーム利用の際の検討項目

①自社だけ、もしくは他社と組んで、独自のプラットフォームを構築できるか?

②既存のプラットフォームに参加する場合には、当該プラットフォームの将来の戦略はどのようなものか?

③その戦略は、自社の戦略と整合性があるか?将来自社にどのような影響があるか?

④参加した場合、自社の顧客拡大、売上増加、コスト削減または増加、自社の顧客基盤の拡大と保全はどのように予測できるか?

複数の既存プラットフォームを利用する場合には、④の予測はどうなるか?

⑥将来自社が被る危険性があるデメリットは、契約書で回避できるか?プラットフォームの機能の一部だけを利用することで回避できるか?

 

 プラットフォーム戦略の基本を理解するという点で非常に整理されており、この分野が初めての私も理解しやすい内容でした。これから企業戦略上、重要な観点になるでしょうから、まずは事例でイメージを掴み、最終的には戦略と絡めて考えられるレベルに近づきたいと思いました。

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