本書は、「考える力」のベースとなる「地頭力」をフェルミ推定を使って鍛えようという内容。地頭力の本質は、「結論から」「全体から」「単純に」考える3つの思考力。インターネットの発達や世の中の動きが早まるにつれ、物知りタイプの知力は、もはや競争優位を失っている。地頭力と対人感性力を武器に問題解決に立ち向かう力を養うための一冊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇地頭力とは何か
・3つの知的能力のひとつ:①知識・記憶力、②対人感性力、③地頭力
・地頭力の本質である3つの思考力
①仮説思考力:「結論から」
②フレームワーク思考力:「全体から」
③抽象化思考力:「単純に」
→それを支える3つの基礎力(論理思考力、直観力、知的好奇心)
〇フェルミ推定とは何か
・つかみどころのない物理量を短時間で概算すること
「東京都内に信号機は何基あるか」「世界中にサッカーボールはいくつかるか」など
■(例)日本に電柱は何本あるか?
①市街地の本数=日本の総面積(30万キロ平米)×市街地率(0.2)×1キロ平米当たり本数(400本)=2400万本
②郊外の総本数=日本の総面積(30万キロ平米)×郊外比率(0.8)×1キロ平米当たり本数25本=600万本
①+②=3000万本
・フェルミ推定の意義は、個別の問題そのものを解けることになることよりも、その基本精神やプロセスを問題解決に適用していくこと
・我々の中には、「検索エンジン中毒」「情報コレクター」「完璧主義」「猪突猛進」「セクショナリズム」「経験至上主義」というような思考回路が潜んでおり、これらがフェルミ推定を学ぶ対象
〇「結論から考える」仮説思考力
・仮説思考とは、①今ある情報だけでも最も高い結論(仮説)を想定し、②常にそれを最終目的地として強く意識して、③情報の精度を挙げながら検証を繰り返して、仮説を修正しつつ最終結論に至る思考パターンのこと
・「最終目的地から逆算して考える」「初めからではなく終わりから」「できることからではなくやるべきことから」「自分からではなく相手から」「手段からではなく目的から」「ベクトルを逆転させる」という発想
・仮説思考のポイントは、①どんなに少ない情報からでも仮説を構築する、②前提条件を設定して前に進む力、③時間を決めてとにかく結論を出す力
〇「全体から考える」フレームワーク思考
・フレームワークは大きく、①全体俯瞰力、②分解力に分けられる
・フレームワーク思考力の全体プロセスは、①全体俯瞰、②切り口の選択、③分類、④因数分解、⑤全体再俯瞰とボトルネックの発見
〇単純に考える抽象化思考力
・抽象化の概念の基本は、共通点を探すこと。
・抽象化思考の阻害要因は、「自分は特殊だ」という思い込み
・抽象化思考力に必要なポイントは、①モデル化、②そのための枝葉の切り捨て、③アナロジー(類推)の考え方
〇地頭力のベース
・知的好奇心には、①問題解決型(Why型)と②知識型(What型)がある。地頭力を鍛えるに当たって前者は有益だが、後者は有害ともなりえる
〇地頭力を鍛える
・エレベータ―テスト(1分で話す)、流れ星へ3回お願い事をする
いずれも、片時も忘れずにお願い事を単純に凝縮した状態で強く心に思い浮かべること。一つのことをそこまで強く継続して思い続ければ、叶わぬ願いなどないというのがこれらのメッセージ。
・「理由は3つある」を定番にする
3つは、おさまりがよく、3次元でもれなくダブりなくカバーでき、記憶にも留めやすい頃合いの数
・1枚絵で説明する
全体像で考える、最適の断面で切断することに加え、枝葉を切り捨て本質に迫る。「要するに何なのか」を徹底的に突き詰めて考える。
クリティカルシンキングの授業を受けて3年近く経ちます。MECEで分解することは定着してきましたが、仮説検証や、時にはフェルミ推定を使ってジャンプすることはまだまだ。物事を先に進めて行く力を鍛錬するうえで、「地頭力」×「対人感性力」という掛け算は、常に念頭に置いておきたい考え方です。