『考える練習帳』(細谷功)
考えるためのきっかけとコツさえつかめば、物の見方が一新され、世界が変わって見える。逆に言えば、基本的なものの見方や価値観を変えない限りいくら時間をかけても、他人から言われても永久に考える力を養うことはできないということでもある。
ベストセラー『地頭力を鍛える』で有名な著者が、「自分の頭で考えること」、特に「対照させて比較する」ことをテーマとして、思考力を高めることを目的とした一冊。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯無知の知
■無知の知
・自分は何も知らない
・自覚がある
・謙虚(自分が相手に合わせてみよう)
→しれば知るほどわからなくなる
■無知の無知
・自分は何でも知っている
・自覚がない
・傲慢(相手が自分に合わせるべき)
→しれば知るほど賢くなったと誤解する
◯思考回路を起動させるキーワードは「自覚」
■思考回路起動のメカニズム
・無知の知(自分は何も知らない)
→自責(だから学ぶべきは自分)
→思考回路起動(だからどうするか考えよう)
■思考停止メカニズム
・無知の無知(自分は何でも知っている)
→他責(だから他人と環境が悪い)
→思考停止(だから自分が考えることはない)
◯認知バイアスに気づいているか
・偏っていることに気づいていない(無知の知)。言っていることとやっていることが違う。最大の問題は、自己矛盾には自分では極めて気づきにくいこと。
◯考えるとは3つの領域を意識すること
①知っていると知っていること →ルーチンワーク
②知らないと知っていること →通常の問題
③知らないことすら知らないこと→未知の問題
◯考えるとは「川上」と「川下」を理解すること
■上流(流量小、尖った大きな岩、急な流れ)
■川下(流量大、小粒の丸い砂、緩やかな流れ)
→川上に行くほど「考える」ことが重要になる。「知識」は川下で重要になる
・不確実性高 ↔︎ 不確実性低
・混沌 ↔︎ 秩序
・境界不明確 ↔︎ 境界明確
・非分業 ↔︎ 分業
・抽象度高 ↔︎ 抽象度低
・蓄積ない ↔︎ 蓄積あり
・質重視 ↔︎ 量重視
・統一指標なし ↔︎ 統一指標あり
・属人的 ↔︎ 非属人的
◯「川上」と「川下」では仕事の進め方が異なる
■20点型(川上)
・まずはラフに全体像を
・何度直しても良い
・資料はラフに
・「問い」のための答え
・「何がわからないのか?」
■80点型(川下)
・1つずつ着実に進む
・「ファイナルアンサー」
・資料はきれいに
・「答え」のための答え
・「何がわかっているのか?」
◯深海魚になるか、トビウオになるか
■深海魚(オペレーションがた人材)
・1つの世界を深く究める
・知識や経験を積み上げる
・方向性は変えない
・「憶える」ことが強み
・「重力」に逆らわない
■トビウオ(イノベーション型人間)
・様々な世界に飛翔する
・時に全てをリセットする
・方向性を変える
・「忘れる」ことが強み
・時に「重力」に逆らう
◯考えるとは「常識」という言葉を使わないこと
・「常識」という言葉が使われる場合の多くは、「なぜそうなのかを自分の言葉で説明できない」ときの「逃げ場」として使われている。
◯「正しいか間違いか」で判断しない
■正しいか間違いか
・知識の世界の前提
・「前提」が隠れている
・自らの価値観を重視
→正誤で判断するのは思考の放棄
■「単に違うだけ」
・思考の世界の前提
・全ては前提次第で異なる
・多様性重視
→「どういう場合に」正しいのか?を問う
◯意見とアドバイス
・意見:自分の頭で考えたい人が他人に求めるもの
・アドバイス:思考停止の人が求めるもの
◯考えるとは「専門家バイアス」から抜けること
■専門家
・失敗は許されない
・十分に情報が揃ってから動き始める
・過去の知識に詳しい
・細かく分ける
・「できない理由」を見つける
■素人
・失敗を恐れない
・すぐに動き始める
・何も知らない
・細かく分けない
・「できたらいいな」と思う
◯考えるとは「分けない」こと
■分ける
・明確に境界線を引く
・白と黒
・二者択一
→単純に二分する
■分けない
・どこにも線を引かない
・全てグレー
・二項対立
→考え方の視点を持つ
◯考えるとは「動的である」こと
■静的
・簡単には変えない
・ルール重視
→いわゆる「固い頭」
■動的
・常に考える
・実態重視
→いわゆる「やわらかい頭」
◯考えるとは「自発的なもの」
■受動
・他人の動きに反応する
・「ツッコミ」
・自由度小さい
・リスク小
→他人の作った世界で生きる
■能動
・自分から動く
・「ボケ」
・自由度大きい
・リスク大
→自分の世界を作れる
◯考えるとは「変化を起こす」こと
■変えないこと
・手本あり
・理由が不変
・リスクなし
→考える必要なし
■帰ること
・手本なし
・理由が必要
・リスクあり
→考えるのは必須
◯考えるとは「モヤモヤに耐えること」
■白黒の世界
・「正しい」か「間違い」か
・「100点満点」がある
・答えが出たらスッキリ
→知識の有無
■常にグレーの世界
・全ては状況次第
・満点はない
・永久に頭がモヤモヤ
→考えることで常に向上の余地あり
◯考えるとは「空気を読まない」こと
■空気を読む
・他人に合わせる
・違うことを恐れる
→思考停止
■空気を読まない
・他人に合わせない
・違うことを恐れない
→ではどうするか?
◯考えるとは「リスクをおかす」こと
■リスクをおかさない
・既知のことを対象にする
・合格点が高い
・失敗を最小化
・リターンも小さい
→知識重視の発想
■リスクをおかす
・未知のことを対象にする
・合格点が低い
・失敗は織り込み済み
・リターンは大きい(かも)
→思考重視の発想
◯考えるとは「差をつける」こと
■一律
・理由が不要
・考える必要なし
・万人に理解されやすい
・「結果の平等」の精神
→「考えなくていい」ことがポイント
■差をつける
・理由が必要
・考える必要がある
・必ず「不公平」が生じる
・「機会の平等」の精神
→「戦略的思考」が必要
◯考えるとは「尖らせる」こと
■底上げ
・平均レベルアップ(指標あり)
・全員に同じ施策を実施
・規律重視
・プッシュ型の教育
→川下の「組織中心」の発想
■尖らせる
・一芸に秀でる(指標なし)
・施策は個別にバラバラ
・自由重視
・「プル型」の教育
◯考えるとは「数字で判断しない」こと
■数字で判断する
・基準・指標が一律
・単純比較がしやすい
・万人にわかりやすい
→実は思考停止
■数字で判断しない
・基準・指標が多様
・単純比較がしにくい
・万人にわかりにくい
→考えないとできない
などなど、考えるとはどういうことか?ということを様々な視点で検討されています。と言いつつ、本書だけに引っ張られても、「それは考えることにはなっていないかもしれない」と思ったり。いつもフラットでいること、事象をそのままとらえること、それから考え始めること、人の意見を聞いてみること、一晩寝かしてみること・・自分なりの「考えるパターン」があるものだなと改めて実感しました。