『非営利組織の経営』(P.F.ドラッカー)
1991年の作品。ボランティアは報酬を得ていないからこそ自らの貢献から満足を得なければならない。したがって、無給ではあってもスタッフとしてマネジメントしなければならないという問題意識に基づき、非営利組織をどのようにマネジメントするのかという着眼点から書かれた一冊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇役割を果たすとき
非営利組織は人を変えたとき役割を果たす。非営利組織が生み出すものは、治癒した患者、学ぶ生徒、自立した成人、すなわち「変革された人の人生」である。
〇ミッション
非営利組織はミッションのために存在する。非営利組織とは一人ひとりの人と社会を変える存在。したがって、考えるべきは、いかなるミッションが有効であっていかなるミッションが無効であるか。ミッションはシンプルかつ明確にしなければならない。重要なことは強みによる成果。為すべき者のうち、うまくいっているものをさらにうまく行わなければならない。
〇非営利組織には機会、卓越性、コミットメントの3本柱が不可欠。
機会は何か、ニーズは何か。それは我々向きの機会か。心底価値を信じているか。
〇イノベーションとリーダーシップ
非営利組織は、企業よりも意識して体系的な廃棄を行う必要がある。非営利組織は、一つのステークホルダーを満足させるだけで良いという贅沢は許されない。非営利組織のリーダーとなった者にはさほどの時間は与えられない。
〇マーケティング
非営利組織のマネジメントには、構想段階からマーケティングを組み込んでおくことが必要。強みに集中することが重要。
〇資金開拓
非営利組織は募金によって資金を手にしなければならない。大義に共鳴する人たちから資金を得なければならない。非営利阻止委の資金不足は、いわば宿命のようなもの。
〇非営利組織の成果
成果は企業よりも非営利組織においてこそ把握と測定が難しい。非営利組織は、直接成果を考えなければならない。そしてそれを測定する方法を考えなければならない。非営利組織は顧客のニーズに応えているといえるだけでは不十分である。顧客の欲求を生み出さなければならない。
〇長期目標への合意
非営利組織にとって最も難しい問題が、これらあらゆる種類の関係者から、長期の目標について合意を得ること。長期の目標以外にすべての関係者の関心を調和させる方法はない。短期の成果に焦点を合わせるならば、支離滅裂となるだけ。
〇してはならないこと
非営利組織は内部思考になりがち。あまりに大義にコミットし、正しいことを行っていると信じるがゆえに、組織自体を目的と錯覚する。「ミッションに貢献するか」を考えずに、「内規に合っているか」を考える。
〇しなければならないこと
重要なことは組織構造を改装ではなく、情報とコミュニケーションを中心に組み立てること。非営利組織では組織内の全員が情報に関わる責任を果たさなければならない。
〇非営利組織の理事会
非営利組織と企業との最大の違いは、非利組織のほうが、圧倒的に多くの関係者、つまり顧客を持っていること。非営利組織に特有の機関が、理事会あるいは評価委員会の類。理事会は資金集めに自ら中心的な役割を果たさなければならない。これは企業の取締役会に無い役割。「理事とは地位ではなく責任である」。
企業と同じところ、非営利組織特有のところ。何が違うかを意識しながら経営すること。成果、利害関係者の価値感、従業者の価値感、資金調達・・・。これらをバランスよくマネジメントできるかどうか。企業経営とは異なる難しさを感じます。