『増田のブログ』(増田宗昭)(〇)
TSUTAYAを運営するCCC(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)の増田社長の著書です。本書は、増田社長がCCCグループ社員に向けて書かれた1500本近いブログから抜粋された記事がまとめられています。増田社長の経営にかける考え方、社員へのメッセージ、創業~今までの歴史やトピックスなど、経営者が社員に向けて発信されたメッセージが加工されず、そのまままとめられているところがいいところ。経営者が社員に発信するメッセージの一つの形として、とても参考になる内容です。ビジュアル的にも写真が満載で美しいです。
(印象に残ったところ‥本書各ブログより抜粋)
〇他社の評価と、自己評価
活躍している経営者には、ある共通点があることに気付いた。彼らの多くは、他者(お客さんも含め)がどう思うかではなく、自分が欲しいと思ったり、自分が正しいと思ったことを実践している。
ひたすら自分が感動することを探している。見つけると、いいでしょう、と周りの人に勧める。だから、周りから評価されることには関心が薄く、自分がやったと思えることに集中している。
これからの変革の時代は、過去の歴史の中で生まれたものや、常識が、新しい世界のイメージが見えている人が創造するものに、どんどんリプレイスされていくと思う。
もっと、自分の中のイメージをしっかり可視化したい。
〇中期計画の嘘
「執念なきものは、問題点を指摘し、執念あるものは、可能性を議論する」
〇会社の成長って
今の勢いを大事に、その勢いを使って、将来の人材を育てるべき。
〇2号店が失敗する理由
人間というのは、本当に誘惑に弱く、驕り高ぶる生き物だと、あらためて思う。仕事を成功させる能力より、謙虚さを失わないことの方が、実は、成功することにとって大切かもしれない。
成功すると、自信ができ、他人の話もだんだん聞こえなくなる。それでは、うまくいくはずがない。まるで宗教のように、毎日反省の日々。
〇最近、経営していて思うこと
経営者には2通りのタイプがいると、営業していて思う。
積極的に僕らの提案を理解しよと努力し、理解できなくても賭けてみよう、とリスクをとる経営者と、いくら懇切丁寧に数字を以って説明しても、リスクを恐れて決断しない経営者の2つのタイプ。
〇成長の副作用
あらゆる場面で「主体性」といってきたのは、自分で決めることの重要性。
「好きで、一緒で、楽しんで」という言葉の裏には、人のせいにしない、自ら考え自らチャレンジするという前提や美学がある。
〇組織が元気になる4つの要素
①明確な目標
②単純な組織
③衆知結集
④信賞必罰
〇単純な組織
情報の流れは、「誰か」がキーポイント。誰に伝え、誰に相談すべきかが明確だと情報の我慣れはスムーズ。人数が増えると、仕事の分担が進み、誰に何を伝え、誰に何を相談したらいいかが見えにくくなる。だから、少人数にするか、単純な組織にする必要がある。
〇企画の神髄
企画の本質は、顧客価値と、収益性と、社員の成長と、社会貢献の4つの要素を、マッチさせること。
〇先入観との戦い
「会社はこういうものだ」とか、「仕事はこういうものだ」、という思い込みが、世界一の企画会社の実現のための障害になっている。
イノベーションとは、思い込みとの戦いに他ならないし、新しい常識を生み出す作業なのだ。
〇企画をつくる
企画をまとめる時に意識していること。モノになる前の企画は、言葉にすると「コンセプト」。概念をカタチにするために、「コンセプト」を機能とイメージで表現するように、いつもしている。
機能と、イメージを特定することで、コンセプトはカタチに近づく。さらに人にそのコンセプトを伝え、実現するために、コンセプトを「5W1H」で表現する。
〇人は、風景は目で見ているようだが、実は目で見ていない。頭で見ている。
人は、味を舌で味わっているようで、実は、舌で味わっていない。見た目で味わっている。
人の話を耳で聞いているようで、実は、耳で聞いていない。頭で聞いている。
つまり、同じ風景を見ていても、人によって見える風景は違っている。同じ風景なのに。人間は、風景の中に、無意識に意味を探している。
〇いいとか、悪いとか。キレイとか、キレイじゃないとか
結局、基準というのは、個人や、チームや、会社が目指す方向によって、決められるものだと思う。これが、会社の価値というものだと思う。
〇忙しい、ということ
「親切にしなさい。あなたが会う人、全ては、厳しい戦いを戦っているのだから」
〇違和感の意味
新しい車のデザインは、違和感を覚えることが多い。
自転車にモーターをつけて走ることも違和感。
ネイルサロンが初めてできた時も、違和感があったはず。
つまり、違和感とは、自分の理解の領域を超えた、モノやコトに対して覚える感覚のこと。
裏返せば、新しいことには、常に違和感を覚える。
逆に違和感を覚えないような生活や仕事は、進歩がないということかもしれない。
成功した企業というのは、世の中から、最初は違和感を持たれるが、やがて受け入れられ、そして、違和感を払拭し世の中で定着させた。
企画するということは、違和感を受け入れることかもしれない。
一生懸命、理解しようとすればするほど、時間がかかり、いいものはできない。
社長が語りかける社員への意味や重要性を感じる内容でした。自ら足を運び手を動かして現場で考え続ける増田社長の姿勢に学ぶことは多く、貴重な一冊となりました。