ゼロからつくるビジネスモデル(井上達彦)
『ゼロからつくるビジネスモデル』(井上達彦)
本書は、実践を前提とした「ビジネスモデルのつくり方ガイドブック」。何が起こるかわからないという状況で頼りになり、実践者の生きた知識を体系化した一冊です。多数の事例掲載とともに底から帰納法的に導き出されたエッセンスが体系的にまとめられており、各社各様のビジネスモデルと思いがちなところを、自分がビジネスモデルを作るときに参考にできる本はないかと探すときにたどり着く一冊になりそうです。約500ページのボリュームに少々びびりますが、1ページあたりの文字数はさほどではないですし、内容的にも読みやすいと思います。個人的には第Ⅳ部「ビジネスモデルの発展的学習」の箇所が頭が整理されて好きな箇所です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯フレームワークをうまく作る
・事業コンセプトというのは、①顧客は誰か、②提案する価値は何か、③その方法はどのようなものかという3つの要素に注目してビジネスモデルを整理したもの。
・スノーピークの事業コンセプト
①顧客は誰か
都市部に住み、知的好奇心が強く、所得水準も高い人
②提案する価値は何か
高品質&ハイエンドのアウトドア製品
自然志向のライフスタイル
③方法はどのようなものか
企画/デザイン/生産/連携を1人が担当する
燕三条の協力工場とのパートナーシップを築く
問屋を介さない直接取引を行い、社員が販売を行う
ユーザーコミュニティを構築してイベントを開催する
◯ビジネスモデルの「4つの箱」(スノーピークの例)
①顧客価値提案
高品質&ハイエンドのアウトドア製品
自然志向のライフスタイルの提案
②利益方程式
高付加価値の製品を適正な価格(利益率)で販売
問屋を介さない直接取引による流通コストの削減
人件費をかけつつもそれを上回るリターンを実現
③主要経営資源
キャンプと自社製品に精通した社員
燕三条の協力工場とのパートナーシップ
熱烈なファンとコミュニティ
高付加価値ブランド
④主要業務プロセス
ユーザー目線で企画し仮説検証する
企画/デザイン/生産/連携を1人が担当する
問屋を介さない直接取引を行い、社員が販売を行う
「スノーピークウェイ」などのイベントを開催する
◯ビジネスモデルキャンバス(スノーピークの例)
①パートナー
燕三条の協力会社
海外の縫製工場
②主な活動
企画/デザイン/生産/連携を1人が担当
キャンプイベントの開催
キャンブチでの社員研修
実体験に基づく販売
③主な資源
縫製工場のノウハウ
高付加価値ブランド
キャンプに精通した社員
熱烈なファンコミュニティ
④価値の提案
高付加価値のアウトドア製品
自然志向のライフスタイルの提案
⑤顧客との関係
親密かつ継続的(ランク別ポイントカードによる特典)
⑥チャネル
直営店と特約店(問屋を介さない直接取引)
⑦顧客セグメント
都市部に住み好奇心が強く所得水準も高い人
⑧コスト構造
問屋を介さない直接取引による流通コストの削減
正社員の雇用と教育
自社施設でのイベント開催
⑨収入の流れ
熱烈なファンの数×購買金額×継続時間
平均を上回る1坪あたりの売上×適正利益
◯好循環を作る
・低価格化から始まる好循環例
販売数量の増加→規模の経済性→商品原価低減→低価格化好循環→マーケットシェアの増加→販売数量の増加
◯事業創造はサイエンスかアートか
・オズボーンの発想法の9分類とチェックリスト
①転用:他に使い道はないか?
②応用:他にこれと似たものはないか?
③変更:意味、色、動き、音、匂い、様式、型などを変えられないか?
④拡大:何か加えられないか?
⑤縮小:何か減らせないか?
⑥代用:何か代用できないか?
⑦置換:要素を取り替えられないか?
⑧逆転:逆さにしたら?
⑨結合:組み合わせたら?
⇨岡本太郎さんは、⑧逆転タイプ
⇨村上龍さん、小倉昌男さん、鈴木敏文さんは、②応用、⑧逆転タイプ
⇨森川亮さんは、⑤縮小、⑧逆転タイプ
⇨三木谷浩史さんは、②応用、④拡大、⑧逆転タイプ
このテーマは、いろんなパターンの事例がある中で、その整理の仕方をどうするかによって分かりやすさや使いやすさが大きく変わってくると思いました。本書は読みやすく、よくこのボリュームで収まっているなぁと思います。