MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

あたりまえのアダムス(ロバート・アップデグラフ)

『あたりまえのアダムス』(ロバート・アップデグラフ)

 1916年発行の本書。登場人物「あたりまえのアダムス」は広告マンの物語。ニューよくタイムスの書評は「広告業界で成功を目指す若者は、『あたりまえのアダムス』を座右の手引とすべきだ。いや、どんな分野でも成功を目指す若者なら、この小さな本に詰め込まれた常識とビジネスの勘所に助けられるだろう」と評していています。物語本編61ページに加え、アイデアや計画が「あたりまえ」かどうかを見分ける方法と、「あたりまえ」のことを発見するための5つの方法が紹介されています。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇アダムスの考える自分

 あたりまえのことを選び出すには、分析が必要である。分析するには、考える必要がある。そして、どこかの高名な先生も言ったとおり、考えることは仕事の中で最も苦しいこと。だから、とことんまで考え抜く人が少ない。

 ほとんどの人は、賢い計画や離れ業に頼って近道をしようとする。そして、それをやるべき「あたりまえ」のことだと言います。しかし何かをあたりまえと言ったところで、実際韻あたりまえになるわけではありません。すべての事実を集め、分析し、それから本当にあたりまえのことを見いだしていないから、これ以上あたりまえのことはないだろうと思えるような原則を逃してしまう。ほとんど常に、これがビジネスマンとして成功するかどうかの分かれ目。成功していないビジネスマンは、いわば強度の乱視なのです。

 

〇あたりまえかどうかを識別する5つのテスト

①それは単純か?

 あたりまえのことは、ほとんど常にシンプル。「答えは見つけてしまえば単純」

②それは人間の本性に反していないか?

 人間の本性こそが、いかなる計画や解決法においても正否のカギを握る。

③短く簡潔に書くことができるか?

 一言二言で、あたかも子供に説明するように、書き出してみること。

④人の気持ちを動かすか?

 人々が「どうして今までそれを気づかなかったんだろう?」と言えばよい兆し。

⑤機は熟しているか?

 タイムリーさを考えることは、アイデアや計画それ自体と同じほど重要。

⇒問題は、、、

1)あたりまえのことはシンプルで当然なので、誰のイマジネーションも刺激しないこと。誰だって、倶楽部での昼食の話題を独占するような賢いアイデアや独創的な計画を好むが、あたりまえのことはそうはいかない。つまり、あたりまえすぎるのです!

2)人はあたりまえのことを見つけだそうとして考えすぎる傾向があること。理屈ばかりに頼ってしまう。

 

〇あたりまえのことを発見する5つの方法

①最も単純な方法は何か?

 これまでのやり方や他人の方法はどうでもよい。最も単純な方法は何かを考えること。「問題は解決してしまえば単純だ」。「物事をゼロから始める」、これが、当たり前であるための第一の、そして最もあたりまえの方法。

②逆転させたらどうなるか?

③人々の反応を調べられないか?

④誰も手を付けていない機会がないか?

⑤その状況に固有の特別なニーズは何か?

 

〇『精神的消化のための時間』(ロバート・ロウルズ)

 私たちは、ときには何日も、何週間も、あるいは何カ月も費やしてあるアイデアにたどり着くので、そのアイデアの長所も短所も知り尽くしている。だから、相手もそのアイデアをすぐに受け入れてくれると期待する。

 しかし、そんなことはまずない。彼らには頭と心でそれを受け入れるまでに、つまり精神的に「消化」するまでに、時間が必要。

 だから物事をシンプルかつはっきりと説明しなければならない。そして、相手に問題点を洗いざらいぶつけさせなくてはならない。批判的な意見を歓迎し、それに耳を傾けるのが賢明。

 あたりまえのアイデアや提案なら、疑問や批判に耐えることができる。もしそうでなければ、それは怪しいアイデア。ですから、自分自身でも新鮮かつ批判的な目でアイデアを見直すべきなのです。

 

 あたりまえ=常識=人の目を引かない=アピールできない=提案しない・語らない・・・というように、あたりまえすぎて口にもしないという日常。一方で、いろいろな計画を練って、プレゼンするとき、または素晴らしいプレゼンを聞いたとき、スッと通じるのは実にシンプルなとき。本書で、あらためて感じたのは、あたりまえは、常識というよりも、歴史や人の心を貫いている、普遍の原理原則なのだということです。

あたりまえのアダムス

あたりまえのアダムス

 

 f:id:mbabooks:20170527223158j:plain