MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

アイデアの作り方(ジェームス・W・ヤング)

『アイデアの作り方』(ジェームス・W・ヤング)(◯)

 本書は、米国最大の広告代理店・トムプソン社の常任理最高顧問などを務めた著者(1886〜1973年)がアイデアの作り方についてまとめた良書です。日本語訳は1988年に発売され、私が購入したのは初版第72刷とものすごい増刷数です。内容は、シカゴ大学のビジネス・スクールで行った広告の講義やその後の広告界で活躍している実務家の集まりで話した内容をまとめたものです。新書サイズでわずか62ページにまとめられた、アイデア創出法の核心。読み継がれてきた名著であることを感じることができる一冊でした。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯「アイデアをどうして手に入れるか?」

・アイデアの作成は一定の明確な過程である。アイデアの製造過程も一つの流れ作業であること、その作成にあたって私たちの心理は、習得したり制御したりできる操作技術によって働くものであること、そして、何であれ道具を効果的に使う場合と同じように、この技術を修練することがこれを有効に使いこなす秘訣。

・この公式を公表しても、アイデアマンの供給過多が起こることはない。

①説明すればごく簡単なので実際に信用する人はわずか。

②説明は簡単至極だが実際にこれを実行するとなるも最も困難な種類の知能労働が必要なので、この公式を手に入れたといっても、誰もがこれを使いこなすというわけにはいかない。

 

◯全人類の2つの主要タイプ(パレート『真理と社会』)

・投機的タイプの人間

 新しい組み合わせの可能性について常に夢中になっている。もうこの辺で十分だと打ち切ることができないので、どうすればまだこれを変革しうるかと思索するあらゆる分野の人々が含まれる。

・型にはまった、着実に物事をやる、保守的な人間

 投機的な人々によって操られる側の人間。

 

◯心を訓練する方法

・どんな技術を習得する場合にも、学ぶべき大切なことは、①原理、②方法。

・特殊な断片的知識というものは全く役に立たない。原理と方法こそがすべて。

・知っておくべき一番大切なことは、ある特定のアイデアをどこから探し出してくるかということではなくて、すべてのアイデアが作り出される方法に心を訓練する仕方であり、すべてのアイデの源泉にある原理を把握する方法。

 

◯アイデア作成の基礎となる一般的原理のついて、大切な2つのこと

①アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。

②既存の新しい要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きい。

・事実と事実の関連性を探ろうとする心の修正がアイデア作成には最も大切。この心の修正は練磨することが可能であるということは疑いのないところ。

 

◯アイデアが作られる5つの過程

①資料集めの段階

・至極単純明快な真理であるが、どんなに無視されているか驚くばかり。

・集めてこなければならない2種類の資料

1)特殊資料(製品とそれを売りたいと想定する人々についての資料)

 十分深く、あるいは遠くまで掘り下げていけばほとんどあらゆる場合、すべての製品とある種の消費者との間に、アイデアを生むかもしれない関係の特殊性が見つかるもの。

2)一般的資料

 真に優れた創造的広告マンはみんな、容易に興味を感じることができないテーマはこの太陽の下には一つも存在しない、あらゆる方面のどんな知識でも貪り食う人間である。

・「カード索引法」

 特殊な資料を集める場合、3×5インチの罫線の入った白いカードを用意し、集めてきた特殊な知識を項目ごとにこのカードに記入する。最終的にはきちんと整理分類された、あらゆる項目を網羅した、一つのファイル・ボックスを持つことになる。

 

②資料を咀嚼する段階

 この段階を抜けるときに起こる2つのこと

1)ちょっとした仮の、あるいは部分的なアイデアが訪れたとき、紙に記入しておくこと。どんな突飛にあるいは不完全なものに思えても一切気に留めないで書き留めておく。

2)どうかあまり早く嫌気を起こさないでほしい。

 

③孵化段階(意識外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのに任せる)

・問題を無意識の心に移し眠っている間にそれが勝手に働くのに任せておく。

・アイデア作成のこの第三段階に達したら、問題を完全に放棄して何でもいいから自分の想像力や感情を刺激するものに心を移すこと。音楽を聴いたり、劇場や映画に出かけたり、詩や探偵小説を読んだりすること。

・第一段階は食料集め、第二段階ではそれを十分咀嚼。今や商家が始まったわけである。そのままにしておくこと。ただし、胃液の分泌を刺激すること。

 

④アイデアの実際上の誕生

・アイデアが訪れるき方は、アイデアを探し求める心の緊張を解いて、休息とくつろぎのひと時を過ごしてからのこと。

・「常にそのことを考えること」(アイザック・ニュートン

 

⑤現実の有用性に合わせるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる。

・ほとんどすべてのアイデアがそうだが、そのアイデアを、それが実際に力を発揮しなければならない場である現実の過酷な条件とせちがらさといったものに適合させるためには忍耐強く種々たくさんな手をそれに加える必要がある。

・多くの良いアイデアが陽の目を見ずに失われていくのはここにおいてである。

・この段階までやってきて自分のアイデアを胸の底にしまいこんでしまうような誤ちは犯さないようにして頂きたい。理解ある人々の批判を仰ぐことである。

・良いアイデアというのは、いってみれば自分で成長する性質を持っている。良いアイデアはそれを見る人々を刺激するので、その人々がこのアイデアに手を貸してくれる。

 

 とてもシンプルな5段階。著者がこの仕組みを世の中に開放してもアイデアマンが世に溢れるわけではないといったのは、それだけ実行するのは簡単でないということなんだと思います。多読するのは、一般情報を集めていることでもあるので、アイデアのベース作りとして、読書を継続することも意味があるなと感じました。アイデアを寝かせることも大切で、最後の5段階目では心の壁のようなところを乗り越える必要もありますね。いい本に出会えました。 

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方

 

f:id:mbabooks:20181207074922j:plain