『「空気」で人を動かす』(横山信弘)
重苦しい「空気」や緩んだ「空気」を何よりも最初に変える。すると、驚くような結果が出始める。チームのメンバーが実力以上の力を発揮できるカギ、それが「空気」。本書は、リーダーがチームを率いていくうえでぶつかる「悪い空気」を「理想の空気」に変える方法を示した一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯場の空気
本書で取り上げる「場の空気」とは、集団の価値観・判断基準のこと。「場の空気」は脳と深い関係がある。脳はその「場の空気」に大きな影響を受ける。特定の脳の神経細胞(ミラーニューロン)が原因で、人は近くにいる人の言動のみならず、思考までも無意識にモデリングする。
◯非言語データ
日本語は省略されやすい言語。日本人が空気に感化されやすいのは、日常のコミュニケーションの中で、非言語データを読み取る力を養っているからだとも言える。
◯4つの「空気」
①締まった空気(理想の空気)
・失敗したときに「言い訳しない」(自己責任を自覚)
・上司も部下も関係なく、間違っているときは互いに指摘しあえる
②緩んだ空気(なあなあの空気)
・失敗したときに「言い訳する」(失敗を許し合う)
・間違いを指摘したら反論したり、見て見ぬ振りをする
③縛られた空気(ガチガチの空気)
・失敗したときに「言い訳する」(責任回避に走る)
・上司から部下に間違ったことを指摘できるが、部下から上司には間違ったことを指摘できない
④ほどけた空気(最悪の空気)
・失敗したときに「言い訳しない」(思考停止状態)
・「目標など達成できるわけない」などと公然と後ろ向きな発言をする人が現れる
◯4つのステージと空気の関係
①チーム黎明期・・締まった空気
②チーム成長期・・緩んだ空気
③チーム過渡期・・原点回帰すれば「締まった空気」、放置すれば「緩んだ空気」
④チーム衰退期・・緩んだ空気のまま放置しておけば「ほどけた空気」
◯変えてはいけない価値観
①チーム特有の規律・価値観
②一般的な倫理観(モラル)
⇨空気の恐ろしいのは、正しく意識していないと、知らないうちに後戻りできないほどチームのポテンシャルを蝕んでいく点。
◯空気が変わっていく原因
①社会的手抜き
集団心理の一つ。人任せにしてしまう。以前はできていたのに、人が増えただけでなんとなく手を抜いてしまう。
②外来価値観(外から持ち込まれた新しい価値観)
チームや組織に今までなかった新しい価値観が持ち込まれる。
③意味の偽造(作話スモッグ)
過去の言動を一貫して正当化する「一慣性の法則」。まず体が反応して、あとで意味を探す。現に起きてしまった行動や状態を、自分に納得いく形でうまく理由づけて説明してしまう。
⇨1)早めの対処(引き締め)、2)早めに対処できなかった場合は、客観的データによる事実(ファクトの調査)
◯「空気革命」基本テクニック
人を変えるのではなく「空気」を変える。そのために大事なことは、「空気」が変わるまで「空気」に向かって、部下に伝えるべき情報をリーダーが発信し続けること。まずは「下地」を作ることからスタートする。
①「1対1」の環境では声をかける
②「1対多」の環境を作って発信する・・朝礼・会議・協調者との対話・メール
③「8ヵ月間」は続けるつもりで、同じことを発信する
④省略した「ぼかし表現」をしない
⑤「4W2H」を使う・・Whyを省く
◯可燃人にはチィーティング
火をつけると燃えることができる可燃人への対応。
①徹底して教える・・守破離
・守:決められた型、師匠の教えを守って繰り返すことにより基本を習得
・破:身につけた基本に自分なりの工夫を加え、基本を破り発展
・離:型や教えから離れて、独創的な型や教えを生み出す段階
②あるべき姿と現状を数字で語る
③チームにおける役割を教える
◯正しい承認をする
①あるべき姿と現状とのギャップ解消に貢献した人を認める
②不燃人(なかなか燃えない人)はスルーする
③多数派工作を進める
◯作話させる前にフレーミング(相手の意識にフレームを作る)する
・大きな視点から小さな視点へと移行するように話す
・「そもそも」の事柄から伝える
・空気に向かって話す
◯説教臭くならない話法「マイフレンド・ジョン」
・「私ではなく別の人が言っているんだけど・・」と誰かの口を借りる
◯頻出の言い訳を蓄積する
・言い訳は反射的に出る咳みたいなもの。言い訳データベースをで先回りをする。
私は本書の中では、特に、「作話スモッグ」(理由の後付け)は、組織の空気を作ってしまう原因として重要だなと思います。正当化したい気持ちが、作話という後付けの理由で勝手にストーリーを作ってしまう。反論や理論武装をしているうちに、だんだんと本質からずれていってしまう。これは突き詰めていくと「ごめんなさい」が言えない文化とも言えます。素直に謝る環境を作っていくことは、組織を束ねる立場にある人の責任とも言えます。